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新薬発売にみる企業と権威・専門家の癒着関係

2006-03-14

(キーワード: 新薬発売、企業と権威・専門家の癒着、フランス)

 フランスで発行されている「プレスクリール・インターナショナル」誌2006年2月号に論評「医学界の権威・専門家(オピニオンリーダーたち): 製薬企業にとって高くはつくが、しかしかけた費用に対する効果が良好な存在」が掲載されている。以下はその概略である。

 医薬企業に戦略的なアドバイスをする米国のコンサルタント会社が、新薬の発売戦略における医学界の権威・専門家(オピニオンリーダー)の関与について調査を行い、142ページで7000ドル(約84万円)もする報告書にまとめている。この調査には、アストラゼネカ、アベンティス、グラクソスミスクライン、ワイスの製薬大手が含まれている。

 著者たちの推測によれば、製薬大手は医学界の権威・専門家に、新薬発売に際して1医薬品あたり平均して約3800万ドル(約45億円)を支出している。これは、平均的な新薬の発売に投資した営業関係予算の3分の1近くを占める金額である。これら指導者への接触は、販売の際に製品のどこをアピールするかの有用な情報を得るのが目的であり、比較臨床試験以前から開始される。

 コンサルタント会社によれば、報酬の多くはしばしば金銭的なものである。
 3つ星レストランへの招待などでは足りない。名声のある研究に伴う科学的な出版への企業の援助が感謝され、そのなかで発売が近づいている新薬について触れられる。報酬額は、これらの指導者が与える影響に比例したものである。国内的にあるいは国際的に名高い専門家や、とりわけ患者団体との結びつきの強い専門家は、多額の報酬が期待できる。

 製薬企業の販売戦略で彼らが果たす決定的な役割については、すべての製薬企業のマニュアルに明確な要点記載がある。医学部や薬学部の学生は、カリキュラムの早い時期にこのような状況について知らされるべきである。
 同様に、患者、医療従事者、ジャーナリストは、医学界の権威・専門家の動機に疑問をもち、どうして彼らが企業に奉仕するかを理解しようとするべきだ。

 フランスでは2002年に、これら権威・専門家が学会やメディアに製品に関連した意見を表明する際には、企業とのつながりを開示しなければならないとした法律が議会を通過したが、残念ながら今に至るも施行されていない。

 最近、米国のニューイングランド医学雑誌編集長を長く務めたマーシャ・エンジェル医師著の{ビッグ・ファーマ −製薬会社の真実}(篠原出版新社)が注目を集めているが、同書も同様の指摘をしている。 (T)

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