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米国CDCはインフルエンザ死亡者数を意図的に高くしている?

2006-01-25

(キーワード: インフルエンザ死亡者数、米国、ワクチン有用性PR) 

 日本でインフルエンザワクチン接種の必要性が主張される際に、米国CDC(疾病管理予防センター)の推奨がよく根拠とされる。しかし、CDCを無条件に信頼していいのだろうかと疑問を投げかける記事が、英国医師会が発行するBMJ誌に掲載されたので紹介する(BMJ331, 1412,2005.12.10)。標題は「米国のインフルエンザ死亡者数は科学に基づかず宣伝的要素が強い?」、著者はハーバード大学のピーター・ドッシで、以下はその要旨である。

  CDC(疾病管理予防センター)のウエブサイトでは、米国で年間36000人が
インフルエンザで死亡すると発表されている。そして、「インフルエン
ザ/肺炎」による死亡は米国人の死因の7番目であるとしている。このイ
ンフルエンザと肺炎を一緒にくくっていることに、科学的な不正確さが
示されており、「インフルエンザ死亡者数36000人」という大きな数の原
因となっている。

ちなみに、米国国立保健統計センター(NCHS)の統計では、「インフルエン
ザと肺炎」は2001年に62034人の命を奪っているが、その内の61777人は肺
炎、257人がインフルエンザとされており、インフルエンザウイルスが検
出されているのは18人に過ぎない。NCHSのデータでは、1979年から2002年
の間の年平均のインフルエンザ死亡者数は1348人(幅257-3006人)であると
している。

審議中の「インフルエンザ防護法2005」(註)が通れば、米国のインフル
エンザワクチン政策が刷新される。CDC(疾病管理予防センター)は、法律
にしたがって日常の市場メカニズムのもとで売れ残ったインフルエンザワ
クチンを買い上げなければならない。また、推奨されるインフルエンザワ
クチンが公衆衛生上安全で有益なものであると強調する「国民啓発キャン
ペーン」を行うことを求められる。

しかしこの法律は、これまでにCDCがワクチンメーカーの利害にそって、
インフルエンザワクチンの接種率をあげるキャンペーンに加担してきた事
実をあいまいにしている。2004年に「ナショナル・インフルエンザワクチン
・サミット」がCDCと米国医師会の共催で開催されたが、そこでは国民のイ
ンフルエンザワクチンの接種率をあげるために、医療専門家と保健公共機
関がインフルエンザがもたらす悲惨な結果に公的に言及し、国民への警告
を強めることが決められている。

  もしインフルエンザが、死亡原因として主要なものでなければ、対策をイ
ンフルエンザワクチン接種にのみ集中するのは妥当なものでない。さらに
インフルエンザと肺炎を根拠なく関連させることで、近年のデータは統計
的なゆがみをもたらしている。科学に基づく健全な討論と公衆衛生政策が
必要である。

  註 インフルエンザ防護法2005(Flu Protection Act of 2005,
S375 & H.R.628, ※1)
    米国におけるインフルエンザワクチンの接種率を上げるために、
インフルエンザワクチンに対する意識を高め、ワクチンメーカ
ーによる十分な供給を保証し、インフルエンザ・パンデミック(
大流行)に対する備えを強めることを意図する法律。2005年2月
に議会提出

  (T)

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