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米国医学生が製薬企業販売拡大のための標的とされ、危機的状況にある

2005-11-16

(キーワード: 製薬企業の医学生への影響、米国での調査、JAMA誌論文)

 製薬企業が研修医に及ぼす影響については調査が多いが、医学生に対する影響については調査が少ない。2003年に米国で行われた3年次の医学生8大学1143人についての興味深い調査結果が、2005年に行った医科大学学生部長に対するこれらに関する大学としての方針またはカリキュラム(履修課程)を持っているかについての調査結果(回答110大学)とともに、米国医師会雑誌(JAMA294,1034,2005)に掲載されているので紹介する。
 
 設立主体、地域などに偏りがないよう選んだ8医科大学の3年次学生1143人を対象に、64項目にわたる無記名アンケートを実施した。回答率は72.3%であった。回答では、臨床実習課程での製薬企業からの贈り物ないし企業がスポンサーとなっている会合への参加は、平均すると週に1回であった。また93.2%の学生が、企業が支払う食事に先輩の医師から少なくとも1回は参加を誘われていた。68.8%の学生は、企業からの贈り物や食事は自分の医薬品処方行為に影響しないと考えており、また57.7%が仲間の学生のそうした行為にも影響しないと考えている。自分や仲間の学生がともに影響を受けると考える学生は28.5%と少ない。80.3%の学生は、経済的に困難な状況にいるので、自分は企業からの贈り物や食事を受け取る資格があると考えている。59.6%の学生が、企業がスポンサーとなっている大回診(患者の前で専門医が発表報告する)は勉強にはなるが、その企業の医薬品についての偏りが含まれていそうだと考えている。85.6%の学生が、自分の大学が製薬企業と医師との関係についての方針を持っているかどうか知らなかった。82.9%の学生は製薬会社の営業部員との関係をどのように持つか教育されていず、77.8%の学生が大学は製薬企業と医師との関係のあり方についてもっと教育すべきと考えている。

 医科大学学生部長に対する無記名アンケートでは、90.0%が自分の大学が製薬企業との関係について全学的な方針を持っているかいないか知っていると答え、10.0%は確かでないと答えた。知っていると答えたうち、全学的な方針を実際に持っているのは10.1%のみで、89.9%は持っていなかった。

 これらの状況から著者たちは、米国の医学生が製薬企業の営業活動によるリスクにさらされているが、彼らはそのリスクに十分気づいていないと結論している。著者たちは、多くの大学が医学生と製薬企業との関係についてのガイドラインを持たず、持っていても学生に知られていない状況や、学生の先輩の研修医たちが彼らに世渡りの方法を教育している実情から、これらに対する介入を強め、医師の決定が患者にとって最大の利益をもたらすのを助ける立場でのみなされることを目指して、解決方法についての研究を強めるよう提言している。
                              (T)

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