調査・検討対象

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イレッサ(ゲフィチニブ)

1 イレッサとは

一般名 ゲフィチニブ(商品名 イレッサ)
企業名 アストラゼネカ株式会社
薬効分類 肺がん用剤
効能・効果 手術不能又は再発非小細胞肺癌(保険適応症)
用法・用量 1日 250mg 1回

2 取り上げた経緯

ゲフィチニブ(以下イレッサ)は、新しいタイプの抗がん剤で迅速承認薬のモデルとして、2002年7月5日、申請後5カ月余りという異例のスピードで承認された。発売からわずか3日目の7月18日に1人死亡、8月にも間質性肺炎による死亡1例が厚労省に報告され、10月15日までに26例の間質性肺炎、うち13人が死亡し、緊急安全性情報が出されたが、10日後には、死亡が39人と判明した。独立行政法人法案の国会審議に際して参考人として招致された当会議メンバーの浜六郎氏がこの問題の重大性を取り上げ、国会議員による質問が行われ、一層の被害の拡大が判明、事態を重くみて活動に着手した。

3 何が問題か

  1. (1) 危険性(正常細胞も障害するイレッサの基本的性質)
    イレッサは上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを阻害し癌の増殖を抑える分子標的薬として発売されたが、EGFRは、ほとんどあらゆる細胞に存在し、正常組織の保持や損傷組織の修復に不可欠であるため、イレッサは損傷臓器の修復を阻害する。このために、第II相臨床試験(非比較試験)では10〜20数%の反応率を得る一方で、臨床試験において、間質性肺炎を中心とする多臓器の障害により約6%におよぶ死亡に至る有害事象が報告されながら、有害反応は0.3%と過小評価され、このデータで承認された。副作用問題発生後メーカーが実施したプロスペクティブ調査(2004年10月報告)では、急性肺障害等発現率5.8%、死亡率2.5%に及び、2010年3月末現在、国に報告された急性肺障害・間質性肺炎の副作用死亡例は810例に達している。
  2. (2) 情報の非開示
    承認後公表された申請資料概要では、動物実験におけるイレッサの肺毒性を示唆するデータが示されていたが、詳細なデータが開示されていなかった。また、臨床試験中の多数の害反応のイレッサとの関連が否定されたが、その詳細なデータも未公開である等、イレッサの有用性を検証するためのデータが開示されていなかった。
  3. (3) 有効性の欠如(延命効果がない)
    これまでイレッサの延命効果をみた臨床試験が海外で4つ実施されたが、いずれも抗がん剤の有効性の指標とされる延命効果は認められなかった。日本での承認直後に明らかとなった2つの試験では、逆に寿命短縮の傾向さえ認めている(INTACT-1およびINTACT-2)。続いて、2004年12月のイレッサ単独とプラセボを比較したISEL試験でも延命効果が否定されたことを受け、アストラゼネカ社は2005年1月にEUでの承認申請を取り下げた。さらに、2005年5月に発表された臨床試験(SWOG0023)では、目標登録数の約半分の人数が登録されたに過ぎなかったが、試験を続けても良い結果が出る見込みがないと判断され中止となった。この結果をふまえて、米国FDAは、新規症例に対するイレッサの投与を禁止する措置をとった。
    そして、2007年2月には、イレッサの承認条件として実施された国内第形蟷邯海侶覯未報告され、日本人を対象とした国内臨床試験においてもイレッサの延命効果が証明されなかったことが明らかとなった。承認条件として実施された臨床試験で有効性が証明できなかった以上、日本においても速やかに新規患者への投与が禁止されるべきであるが、厚労省は使用継続を認めた。
    その後、対象を腺癌で喫煙歴なしまたは軽度喫煙の患者に限定したIPASS試験、及びEGFR遺伝子変異陽性患者を対象としたNEJ002試験において、標準化学療法に対しイレッサが有意に優る効果を上げたとされるが、その主要評価項目は無増悪生存期間であり、延命効果の本来の評価指標である全生存期間では有意差は示されていない。また、IPASS試験のサブグループ解析では、EGFR遺伝子変異陰性群におけるイレッサの腫瘍縮小率は1.1%にとどまり、変異陰性患者に対しては無効であることが示された。
    これらの臨床試験結果を受けて、EUは、2009年7月にイレッサを承認したが、その適応は「成人のEGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺癌」とされ、EGFR遺伝子変異陰性の患者に対する適応を否定した。
    また、米国においては、アストラゼネカ社は、2011年9月30日をもってイレッサの新薬承認申請を取り下げ、今後米国においてイレッサの販売承認を求める計画はないとして、正式承認取得を断念したことを表明した。
  4. (4) 利益相反
    海外臨床試験で相次いで延命効果が否定されたことを受け、厚労省は、2005年1月から専門家による「ゲフィチニブ検討会」を開催したが、検討会は、同年3月、日本肺癌学会作成の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」を参考に使用されることを条件にイレッサの使用継続を認める意見をまとめた。しかし、検討会の委員やガイドラインの作成委員には、イレッサの治験に参加したり、アストラゼネカ社提供の広告記事でイレッサの使用を推奨するなど、アストラゼネカ社との経済的な関係があることを疑わせる肺がん専門医が多数含まれており、その公正さが疑われる。
    実際に、これら専門医のうち、薬害イレッサ訴訟の被告側証人となった医師5名については、いずれもアストラゼネカ社と経済的関係を有していたことが、反対尋問等を通じて明らかとなった。

4 基本的な行動方針

  1. (1) 情報公開の実現(別に報告)
  2. (2) 公開情報をもとにして危険/益etcの分析、それに基づく、より広範囲な問題提起
  3. (3) 被害実態のより正確な把握とこれをふまえた問題提起

5 具体的行動

2002-12-06 イレッサ110番を実施
2002-12-24 厚労省/ア社に対し「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認審査内容に関する公開質問書」提出
2003-04-04 厚労省/ア社に対し「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認取り消し、販売中止、データの全面公開を求める要望書」を提出するとともに、厚生労働省に対し「行政文書開示請求」提出
2003-08-01 「イレッサ承認申請資料の情報公開請求訴訟」を提起
2003-09〜 遺族に対する面接調査実施
2003-11-23 タイアップ6周年総会&記念シンポジウム「夢の新薬で何が起きたのか?〜抗がん剤イレッサを考える」 を開催。「イレッサ使用後に死亡した患者の実態」報告書を公表
2004-12-24 厚労省及びア社に対し「緊急要望書-イレッサに延命効果はないとする市販後臨床試験結果、FDA声明を受けて-」を医薬品治療研究会(TIP)、医薬ビジランスセンター(JIP)連名で提出。
2005-02-22 「ゲフィチニブ(イレッサ)検討会に関する要望書」厚労省医薬食品局安全対策課に提出
2005-06-16 「ゲフィチニブ検討会に関する意見書」を厚生労働大臣、大臣官房医薬担当審議官、医薬食品局安全対策課長、ゲフィチニブ検討会委員に提出
2005-08-09 「『ゲフィチニブ使用に関するガイドライン』についての公開質問書」を日本肺癌学会へ提出。ガイドライン作成委員のア社との経済的関係の有無も質す。
2005-11-10 日本肺癌学会より、公開質問書に対する回答書。疑問点等には全く答えていない。
2006-03-30 「『ゲフィチニブ使用に関するガイドライン』についての再公開質問書」を日本肺癌学会へ提出。
2006-03-31 厚生労働省、日本学術会議、日本医師会、日本医学会に対し、要望書「『ゲフィチニブ使用に関するガイドライン』への公開質問書に対する日本肺癌学会の対応について」を提出。
2006-11-28 「アストラゼネカ社と日本肺癌学会及びゲフィチニブ使用に関するガイドライン作成委員会メンバーとの経済的関係等に関する要望書」を日本肺癌学会及び厚生労働大臣に対し提出。
2007-05-23 「抗がん剤イレッサの承認取消を求める要望書-承認条件として実施された第Ⅲ相試験の結果を受けて-」を厚生労働省及びアストラゼネカ社に提出。
2011-11-10 イレッサの再審査に際し、最低限、EGFR遺伝子変異陰性患者に対する使用を禁止すること等を求める「抗癌剤イレッサの再審査に対する意見書」を厚生労働大臣に提出。

6 今後の課題

2011年10月31日、薬事・食品衛生審議会は、イレッサの適応を「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん」に変更することを了承した。この適応変更が実現すれば大きな前進である。しかし一方で、変異陽性患者においても、全生存期間をエンドポイントとしたイレッサの延命効果は未だ確認されていないのであり、今後もその動向を注視していく必要がある。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2011-03-30
「注目情報」更新−アストラゼネカ社が米国でイレッサの承認申請を取下げ、市場から完全撤退
2010-11-10
抗癌剤イレッサの再審査に対する意見書提出
2007-05-24
抗がん剤イレッサの承認取消を求める要望書提出
2006-11-28
アストラゼネカ社と日本肺癌学会及びゲフィチニブ使用に関するガイドライン作成委員会メンバーとの経済的関係等に関する要望書提出
2006-03-31
厚生労働省、日本学術会議等へ要望書提出(イレッサ関連)
2006-03-30
日本肺癌学会への再公開質問書提出(イレッサ関連)
2005-12-19
「『ゲフィチニブ使用に関するガイドライン』についての公開質問書」に対し、日本肺癌学会から回答
2005-08-09
「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」についての公開質問書提出
2005-06-16
ゲフィチニブ検討会に関する意見書提出
2005-04-01
抗がん剤に関するガイドライン改訂への意見提出
2005-02-22
ゲフィチニブ(イレッサ)検討会に関する要望書提出
2005-02-10
タイアップ総会&イレッサ学習会のお知らせ
2004-12-24
イレッサ緊急要望書を厚生労働省とアストラゼネカ社へ提出
2004-12-23
イレッサの臨床試験で延命効果証明されず
2003-11-23
タイアップ6周年総会&記念シンポジウム
2003-08-01
「イレッサ承認申請資料の情報公開請求訴訟」提起
2003-04-04
「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認取り消し、販売中止、データの全面公開を求める要望書」「行政文書開示請求」提出
2002-12-24
「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認審査内容に関する公開質問書」提出