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● 大規模被害の発生

 イレッサは、「手術不能又は再発非小細胞肺癌」を適応として、2002年7月、日本で世界初の承認を取得した肺がん用抗がん剤である。しかし、承認直後から致死的な間質性肺炎の副作用が多発し、わずか3か月後の同年10月15日に緊急安全性情報が発せられた。その時点で報告死亡者数は13人に上り、大きな衝撃を与えたが、その後も報告死亡者数は増え続け、承認から2年半で557人に達した。

● 長期にわたる取り組み

 イレッサは、当会議発足後に最も重篤かつ大規模な副作用被害を発生させた医薬品である。また一方で、厚労省は、承認後に海外で延命効果を否定する臨床試験結果が相次ぎ、さらに日本の承認条件として行われた国内第形衫彎音邯海任皹簗晋果の証明に失敗したにもかかわらず、小手先の対応に終始し、イレッサの承認を維持した。その間にも、報告死亡者数は増え続けた。

 そのため、当会議の取り組みも長期間かつ多岐にわたり、イレッサに関して公表した要望書、意見書、質問書等は、約9年間にわたり11通に及ぶ。また、問題発覚の初期には、「イレッサ110番」(被害者向け電話相談)を実施し、遺族からの聞き取りを行って、報告書をまとめているが、こうした取り組みは初めての試みだった。

● イレッサが示した現代的課題

 薬害イレッサの原因の根本は、危険性情報の見落とし・見逃しと、有効性の過大評価にある。その点では、従前の薬害事件と全く同じである。しかし、申請からわずか5か月あまりというイレッサの拙速な承認は、「ドラッグ・ラグの解消」「患者の早期アクセスの確保」という名目によって正当化されていた。
 このように、薬害事件の構造的問題点が、現代的な形で表出したのが薬害イレッサであり、その問題点のひとつが、利益相反である。

 イレッサでは、「副作用の少ない画期的新薬」といった報道が承認前からなされていたことが、承認後の爆発的な使用と被害の大規模化を招いた。学会の有力医師がイレッサを賞賛する発言をしている医学雑誌の対談記事が、実はメーカーによる提供記事であるなど、キーオピニオンリーダーと言われる専門医がそのような報道に寄与していた。そしてそうした医師たちが、副作用被害の発生後には、イレッサの使用継続を肯定する学会ガイドラインの作成委員となっていた。かつての薬害事件では「癒着」とされたメーカーと専門医の関係が、「産学連携」の名の下に肯定され、有力専門医の影響力を利用する販売戦略ははるかにシステム化されていた。このイレッサの例が、当会議が利益相反問題を活動の重要な柱とするきっかけであった。

● イレッサの教訓

 イレッサの教訓は、医薬品リスク管理計画(RMP)の導入、市販後全例調査の適用拡大など、多くの制度改正をもたらした。しかしその実効性はまだ明らかではないし、条件付き早期承認制度など、イレッサの失敗への反省が見られないばかりか、むしろ改悪する動きも進んでいる。私たちは、まだまだ、イレッサの教訓に学ばなければならない。

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