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サリドマイド

1 サリドマイドとは

サリドマイドは、1957年に西ドイツで鎮静・催眠薬として開発され、約5年間にわたりヨーロッパを中心に世界45カ国以上で製造・販売された薬である。日本国内では、睡眠薬(イソミン)、胃腸薬(プロバンM)等として開発され、医療用医薬品・一般用医薬品として販売された。販売当初は、「妊婦が飲んでも安全無害」と宣伝され、副作用のまったくない夢の薬として注目を集めた。しかし、のちに妊娠初期の妊婦がサリドマイドを服用すると、胎児は毛細血管などの組織の成長を妨げられ、手指など身体に奇形が生じる副作用があることが判明し、1962年に薬の販売停止と回収が行われた。
世界各国では10,000人のサリドマイド児が生まれ、5,000人弱が生き残ったといわれている。また、日本国内においては1,000人以上の被害児が生まれ、1974年の裁判和解後に309人がサリドマイド被害児として認定を受けた。

2 取り上げた経緯

サリドマイドは、事件後に海外であらたな薬効が研究され、ブラジルなどの国でハンセン病の治療薬として再び使用されるようになった。その後も研究は続けられ、皮膚疾患やエイズ、がんなどに対して有効性が示唆される研究報告が出されるようになり、欧米を含む多くの国でサリドマイドは臨床使用が行われるようになった。
そして、2000年頃から日本でもサリドマイドが個人輸入というかたちで海外から輸入され、骨髄腫等の悪性腫瘍の治療に使用されている事実が明らかとなった。特に、2002年に入ってからはテレビや雑誌などでサリドマイドが「がんに効く」と報じられ、悪魔の薬から一変して福音の薬へというセンセーションが話題を呼び注目を集め、輸入量が急増した。
しかし、かつて悲惨な薬害をもたらした薬が、有効性及び安全性に関する国の審査を受けないまま、広く国内で使用されるというのはきわめて異例である。きちんとした管理を伴わない使用が広がれば、再びサリドマイド児を生む危険がある(実際、ブラジルなどで新たなサリドマイド児が生まれている)ため、取り上げる必要があると判断した。

3 何が問題か

米国FDAは、1998年にサリドマイドをハンセン病の治療薬として承認したが、その際、再び悲惨な副作用被害が起きないよう、サリドマイドの販売、使用・管理についてSTEPS(サリドマイド教育と安全処方のためのシステム)という厳しい制限を課した。がん治療薬として使用(適応外使用)される場合でも、STEPSが適用されることにより、副作用被害の再発防止が図られることになる。
これに対し、日本では、未承認薬であるがために、使用や管理に関するルールは全く存在せず、いわば野放しとなっており、長らく副作用被害防止対策はこれを使用・処方する個々の患者・医師に委ねられているという状態にあった。

4 基本的な行動方針

サリドマイドの使用等の禁止は求めないが、国がサリドマイド被害の再発防止のための積極的な措置をとるよう求めていく。

5 具体的行動とその結果

  1. (1) 2002年10月17日、厚生労働大臣及び厚生労働省医薬局長に対し、輸入を登録許可制とし、使用は施設内研究審査委員会の審査に基づいて臨床試験ないし臨床研究計画書に従って行うこと等を求める「サリドマイドに関する緊急要望書」を提出した。
  2. 2) メンバーが以下のシンポジウムにシンポジストとして参加した。早期承認を求める患者団体、慎重な使用を求める被害者団体、厚生労働省、医師といった多様な立場の者が参加する異例のシンポジウムとなった。
    • 2003年1月15日開催「サリドマイドを考えるシンポジウム」
      主催:日本医薬品情報学会、後援:厚生労働省
    • 2003年2月16日開催「サリドマイド シンポジウム」
      主催:財団法人いしずえ(サリドマイド福祉センター)
      共催:日本骨髄腫患者の会、薬害オンブズパースン会議
    こうした議論の高まりを受け、厚生労働省は現状調査に乗り出し、2003年9月18日には、厚生労働省科学特別研究事業として行われてきた「未承認薬の個人輸入による使用実態及び適正使用のあり方に関する調査研究」の報告書が公表され、不十分な管理体制のもとで、サリドマイドが骨髄腫以外の各種固形がんにも使用されている実態が明らかとなった。上記報告書を受けて、厚生労働省は日本臨床血液学会にガイドライン作成を依頼し、2004年11月に「多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイドライン」が公表されたが、その間実効的な対策は取られず、2003(平成15)年度のサリドマイド個人輸入量は約53万錠とさらに増加を続けた。
  3. (3) このような状況を受けて、当会議は、2004年12月22日、「サリドマイドの輸入・使用実態把握のための体制整備を求める要望書」を厚生労働大臣に提出し、この中で、サリドマイドの輸入実態を継続的に把握し、不適切な管理や使用に関連した問題事例が予測された場合に迅速な対応をとるため、投与患者を直ちに特定できる体制(個別症例把握のシステム)を整えるべきであるとし、輸入した医師等がサリドマイドを処方した患者の氏名・住所等を厚生労働省に報告することを義務づける制度の創設を提言した。
    この提言の趣旨は、サリドマイド使用登録システム(SMUD)として実現した。これは、大学病院医療情報ネットワーク(University hospital Medical Information Network,略称 UMIN)によるインターネットを活用してサリドマイドの使用症例を医師が登録するシステムで、サリドマイドの使用症例を可能な限り全例把握し、重篤な有害事象情報を共有することなどを目的としたものである。
  4. (4) 一方、国内の製薬会社が、国内での製造販売を目指すとしてサリドマイドの「希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)」指定を申請し、厚生労働省は、2005年1月21日、指定を認め、承認審査に入った。そして、審査報告書の公表後、薬事食品審議会の開催までの間の2008年8月、「サリドマイド製剤安全管理基準書」(案)についてのパブリックコメントを募集したうえで、サリドマイド被害者や癌患者団体関係者、専門医などによって構成された「サリドマイド被害の再発防止のための安全管理に関する検討会」を公開で開催し、9月には製造承認そのものについてもパブリックコメントを募集した。
    当会議は、安全管理策については、妊娠する可能性のある女性への投与禁止についての問題点を指摘したうえで、安全管理策を具体的に明記して承認条件を定めることや、第三者評価機関を含め厚生労働省が責任をもつことを求めるパブリックコメントを提出した。また承認については、承認条件とする市販後第形蟷邯海砲弔い討修龍饌療な内容や期限を明確にすることなどを求めるパブリックコメントを提出した。
    サリドマイドは、2008年12月に薬価収載(商品名:サレドカプセル100)された。採用された安全管理手順「TERMS」の一部には、当会議の意見が反映されたが、承認条件についての提案は、受け入れられなかった。
    その後、類似薬レナリドミド製剤(商品名:レブラミドカプセル)が2010年7月に薬価収載された。同剤については、適正管理手順として「RevMate」が定められている。
  5. (5) 両管理手順については、遵守状況等を製造販売業者から独立して評価するため、TERMS第三者委員会及びRevMate第三者評価委員会が設けられ、患者等を対象としたアンケート調査が行われた。また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)においても、TERMSの遵守状況等について調査が行われた。
    調査の結果、両管理手順は患者にとって大きな負担となっていることが明らかとなったため、見直し提案がなされ、2012年3月、見直し案に対するパブリックコメントの募集があった。
    これに対し、当会議は、困難な疾患である多発性骨髄腫と闘病する患者に、さらに加わる管理手順による負担は、可能な限り軽減したいと考えるが、管理手順が定められた上記経過、及び催奇形性がもたらす障害は、患者本人ではなく、生まれてくる子という別人格に生じること等からすると、管理手順の見直しに当たっては、患者負担軽減の必要性を認めながらも、万が一にも胎児暴露があってはならないという安全性を重視した慎重な姿勢で臨まざるを得ないと考え、女性患者の定義、定期調査頻度及び理解度確認テストに関し、管理手順を緩和する方向でなされている見直し案について、現時点では賛成しかねる旨の意見を述べた。
  6. (6) 2014年12月の「サリドマイド及びレナリドミドの安全管理に関する検討会報告書」に基づいて上記両管理手順の改訂案が示され、パブリックコメントの募集があった。
    改定案の内容は、a)初回患者登録時の手順の緩和、b)毎処方時の手順の緩和、c)医療関係者に対する教育の充実・強化の3点だった。当会議は、今回の改訂案についても、安全管理手順の緩和によって生じる危険が、患者の負担軽減を考慮してもなお看過できるものではないとの結論に至り、上記c)医療関係者に対する教育の充実・強化のみ賛成し、その他の改訂については反対する旨の意見書を、2015年7月27日に提出した。

6 今後の対応

TERMS及びRevMateの運用状況や承認条件の実施状況などについての監視を継続していく。