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 医療現場で「患者のための医療を行う」ということが謳われ、それに異議を唱える人は何処にもいないと思います。しかし、人の生死に直結して影響を及ぼす医療現場で、ときとして何が適切なのか判断することはとても難しいことだと、今さらながらシンポジウムに参加して思いました。治療は、有効性や安全性・危険性が検証され、科学的根拠にも基づいて、人道的な扱い中で行われなければならないわけですが、でも、いったい誰がどんなふうに判断するべきなのでしょうか。
 サリドマイドが個人輸入というかたちで再び医療現場で治療に使用されている問題について話し合うために、2月16日の共立薬科大学で開かれたサリドマイドシンポジウムでは、副作用を受けるかもしれない危険を承知で使う患者や医師、重篤な副作用が起きることを危惧する人々、国民の健康と安全を管理する義務のある厚労省など関係者が初めて一堂に会しました。それぞれがそれぞれの立場で「どうあるべきか」を主張し、よって「どうするべきか」を考え、今後はどうあれば適正なのか判断を模索しました。会場で何らかの管理が必要であるという見解は得ましたが、医療現場で治療薬として使われている現状についての是非については結論が出るまでには至りませんでした。
 40年前のサリドマイド薬禍の被害者としても私が理解していることは、もし過去に薬禍を起こした医薬品によって再び薬害が繰り返されるようなことがあったとしたら、それは償うことができないほど愚かです。そして、サリドマイドは既に待ったなしで、薬害防止対策に取り組まなければならないところに来ているということです。       以上

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