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脳循環・代謝改善剤

1 脳循環代謝改善剤とは

脳循環・代謝改善剤は、脳梗塞、脳出血という脳血管障害の後遺症である意欲低下、情緒障害を適応症とする薬で、脳循環改善剤は主に血管の拡張作用があり、脳代謝改善剤は代謝を活発にする薬理作用があるとされ、臨床現場では主に老人性痴ほう症に対して広く使用されてきた。
5月19日に事実上の承認取り消しとなった4成分とその製品は、以下のとおり。

一般名(成分名) 商品名
イデベノン アバン(武田薬品工業蝓
塩酸インデロキサジン エレン(山之内製薬蝓
ノイン(シェリング・プラウ蝓
プロペントフィリン ヘキストール(ヘキスト・マリオン・ルセル蝓
アニカセート(東和薬品蝓
ケネジン(大洋薬品工業蝓
プロベース(ダイト蝓
ペンテート(沢井製薬蝓
塩酸ビフェメラン セレポート(エーザイ蝓
アルナート(製造:三菱化学蝓販売:藤沢薬品工業蝓

2 取り上げた端緒

98年5月19日、厚生省が上記4成分の承認を事実上取り消した。再評価で有効性が確認できなかったことが理由だが、脳循環・代謝改善剤については、その承認時の臨床試験に問題があり有効性に疑問があるとの指摘がTIP誌(89年)等で度々なされていた。
非科学的な臨床試験という、わが国の承認審査が抱える問題点を示す典型的な事例であり、これを通じて承認審査の改善を求めるべきとの考えから、検討対象とされた。

3 何が問題か

  1. (1) 厚生省は、承認審査には問題がなかった、すなわち『承認時には有効性があった』と主張するが、それを客観的に証明する資料の開示はなく、むしろ再評価の結果は以前から指摘されていた承認時の臨床試験の不当性を明らかにしたものと考えられる。
  2. (2) 4成分以外の脳循環・代謝改善剤(以下、「他剤」という)についても、同様に承認時の臨床試験に問題があり、有効性に重大な疑問がある。
  3. (3) 4成分の承認以来の売上げ総額は約8750億円にものぼると報じられており、杜撰な臨床試験に基づいて「効かない薬」を販売した側の責任が問う必要がある。

4 基本的な行動指針

  1. (1) 事実上の承認取り消しとなった4成分について
    1. ① 製薬会社は本剤の販売によって得た利益を保持すべきではなく、最終的には患者及び健康保険組合に返還すべき。
    2. ② 厚生省は、本剤の承認審査の妥当性を検証するために必要な資料を公開すべき。
  2. (2) 他剤について
    有効性を確認するため、すみやかに再評価を行なうべき。

5 具体的行動

98年7月29日 再評価の資料の公開、他剤の再評価実施等を求める要望書を厚生省に提出
7月10日 仙台市立病院の平成7〜9年度における4成分の購入額等について、情報公開請求(その後同様の請求を福岡市、東京都、名古屋市においても実施)
8月18日 4成分の製品の回収状況につき薬局アンケート実施(タイアップ東京)
9月 8日 4成分の販売代金の卸会社から仙台市への返還と、他剤の購入の差し止めを求める住民訴訟を提訴(仙台一次訴訟)
12月24日 一斉再評価で提出された資料の開示等を求める要望書を厚生省に提出
99年1月22日 仙台市国民健康保険から支払われた4成分の保険給付について、仙台市長が製薬会社に対する返還請求を怠っている事実が違法であることの確認を求める住民訴訟を提訴(仙台二次訴訟)
3月17日 世田谷区について、上記と同様の住民訴訟を提訴(東京訴訟)
00年1月26日 東京訴訟 却下判決
02年6月 4日 仙台一次訴訟一審判決 請求棄却

6 結果

  1. (1) 住民訴訟
    東京訴訟は門前払い。返還請求の対象となる売買の日付や金額まで住民側で特定しなければならないという、住民側に不可能を強いる判決であった。仙台二次訴訟も取り下げ、仙台一次訴訟に集中した。
    仙台一次訴訟の地裁判決は、「本件各薬品は、再評価の時点で事後的に評価すると、製造承認の当初より有効性があるか疑問の余地があったと言わざるを得ない。」と述べ、原告側が主張した承認時臨床試験の不当性を認定した。しかし、医薬品の売買において要求される品質としては、当該売買契約の時点における医学・薬学的評価基準に照らして有効性及び安全性を有することで足りるとした上で、厚生大臣による製造承認がされていることは、特段の事情(試験データの偽造等)がない限り、有効性・安全性を有することを推認させるとし、4成分は要求される品質を満たしていたといえるので、売買契約に錯誤等はないとして請求を棄却した。この判断は、仙台高裁判決でも維持された。
    少なくとも一般患者のレベルでは、薬の買主である患者は、その薬が単に承認を得ているだけでなく、「現実に効く薬であること」を期待しているはずである。判決を一般患者への医薬品の売買に当てはめると、常識に反する結論となると思われる。ともあれ、結果的には、この訴訟を通じて『効かない薬の販売で得た利益をはき出させる』という目的を果たすことはできなかった。
  2. (2) 情報開示に関する厚生省の対応
    仙台訴訟において、原告の申立に基づき、裁判所から厚生省に対し、4成分及び他剤の承認審査及び再評価に用いられた資料の提出を求める文書送付嘱託がなされたが、厚生省は、既に公開されていた資料を送付してきたのみで、有効性に関する重要な資料やデータについては企業の知的財産権保護を理由に提出を拒否した。
  3. (3) 一斉再評価
    厚生省は、99年1月、脳循環・代謝改善剤31成分を一斉に再評価指定するという極めて異例の措置をとった。まず有用性を示す既存資料を提出させ、それに基づいて評価した結果必要と判断される場合には新たな臨床試験を実施する、という二段階方式を採用したが、既存資料を提出したのは僅か11成分で、他は資料を提出せずに承認を取り下げた。11成分の評価の結果も、
    1. ①承認取消が必要とされたもの…1成分
    2. ②申請後に承認が整理(取り下げ)されたもの…1成分
    3. ③脳循環・代謝改善効能が削除されたもの…2成分
    4. ④効能の一部を変更すべきとされたもの…3成分
    5. ⑤新たな臨床試験の実施が必要とされたもの…4成分
    という惨憺たるもの。そして、⑤の4成分のうち、ビンポセチンは、新たな臨床試験で有効性が確認できず、2001年8月に販売中止・承認整理となった。
    このような再評価の結果により、この分野の薬剤の承認時臨床試験の杜撰さ、及び承認審査の甘さがあらためて浮き彫りになったといえる。

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