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1 はじめに
 昨年五月に四成分が事実上の承認取消となった脳循環・代謝改善剤については、販売代金の返還等を求める住民訴訟を仙台で、自治体が国民健康保険から支払った投薬料の返還を怠っていることの違法確認を求める住民訴訟を仙台と東京で、提訴しました。その訴えの内容は機関紙五号8頁の記事で報告されています。今回その続報をお伝えします。

2 販売代金等返還請求訴訟
 被告卸売会社側は、問題の四成分について、「承認当時は有効だったが、その後の医療環境の変化により有用性が失われた」という主張をしています。これは、承認取消の際に厚生省が発表した言い訳と同じです。しかし、厚生省は、その科学的根拠となる具体的データを全く示していません。裁判所は、厚生省に対して四成分の再評価に用いた資料等の提出を求める手続きを取りましたが、厚生省は臨床試験論文レベルのデータは提出しませんでした。そこで、原告側は、いわゆる「公表要件」により公表が義務付けられていた承認当時の臨床試験論文を詳細に分析して、承認当初から四成分には有効性がなかったことを主張するとともに、以前からこの薬の問題点を指摘していた別府宏圀医師(当会議副代表)の証人尋問を申請する予定です。

3 健康保険訴訟
 東京での訴訟では、被告世田谷区が、「中には薬が効いていた人もいるはずだ」という珍妙な主張をしてきました。しかし、薬の有効性の有無は臨床試験によってはじめて科学的な立証が可能なのであり、その臨床試験の結果有効性が否定されている以上、「この人には効いていた」などという論理が成り立たないことは、明らかなことです。無駄な医療費を支払わされた側である世田谷区が、なぜこのような苦しい理屈をつけてまで「製薬会社には責任はない」と主張しなければならないのか、理解に苦しみます。

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