調査・検討対象

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正露丸等クレオソート製剤

1 正露丸等クレオソート製剤とは

クレオソートが入った止寫薬(下痢止め薬)。医療用医薬品では用いられておらず、一般用医薬品として、次の商品が現在販売されている。
イヅミ強力正露丸(製造和泉薬品工業)、健栄正露丸(製造キョクトウ)、三和クレオ丸(製造三和薬品工業)、三和正露丸(製造三和薬品工業)、真生正露丸(製造大阪医薬品工業)、真聖正露丸(製造渡辺薬品工業)、正露丸(製造大阪医薬品工業)、正露丸(製造キョクトウ)、正露丸(製造大幸薬品)、正露丸(製造日本製薬)、征露丸(製造日本医薬品製造)、征露丸S(製造日本医薬品製造)、セイロガン糖衣A(製造大幸薬品)、正露丸糖衣「キョクトウ」(製造キョクトウ)、天恵正露丸(製造天恵堂製薬)、農協正露丸(製造愛知県厚生農業共同組合連合会)、本方正露丸(製造キョクトウ)、松葉正露丸(製造松本製薬工業)

2 取り上げた経緯

99年4月、タイアップグループに所属する医師からの問題提起を受けて検討開始。

3 何が問題か?

  1. (1) 成分
    クレオソートは、①高濃度で細胞を傷害し、②強い腐食性があり、しかも解毒薬がなく、③劇薬に指定されていて、④ヒトに対する発がん性が否定されていない薬剤である。
    正露丸(大幸薬品)の添付文書には、「皮膚に付着したらせっけん及び湯を使ってよく洗ってください」と書かれている。「絶対に〇〇しないで下さい」という注意も多い。しかし、皮膚に付けてはいけない薬を内服する危険性については何の記載もない。
  2. (2) 安全性
    正露丸の常用量の約4倍の量を服薬して腸管壊死を起こし腸管切除を受けた症例も報告されている。
    薬害オンブズパースン会議が調査を委託した「医薬品・治療研究会」の報告によれば、動物実験の結果からヒトの場合の中毒量を推定すると常用量の約2〜4倍となる。消費者が、薬が効かないと感じ増量して服用することも考えられることから、常用量の約2〜4倍の量は、一般市販薬では決して服用することが希な量ではない。
  3. (3) 有効性
    正露丸の有効性の根拠として大幸薬品が示した臨床試験は、正露丸を投与しないグループとの比較試験ではないため、有効性の根拠とは認められない。
  4. (4) 必要性
    多くの下痢は、腸管内に停滞している有毒物質等を排除しようとする生体の防御反応であるから、下痢止め薬を服用しなくても原因物質が除かれると自然に治癒する。「下痢には正露丸」という大幸薬品のコピーは、「下痢は悪」という意識を消費者に押しつけるものであり、正しい薬剤情報の提供とは考えられない。
    まして、細菌性の急性下痢などには下痢止め薬の服用は禁忌である。
  5. (5) 一般用医薬品の承認及び基準
    現在市販されている一般用医薬品の大部分は、薬効群ごとに「承認基準」が制定されている承認基準適合医薬品である。「胃腸薬の製造(輸入)承認基準」(昭和55年4月22日制定、昭和61年3月28日改正)にはクレオソートのような安全性に問題のある成分も含まれている。そのような「承認基準」であるにも拘わらず、一旦「承認基準」に記載された成分については、製剤としての品質保証を試験する規格試験と安定性に関する加速試験だけで容易に一般用医薬品として承認されている。また、一旦承認された一般用医薬品は、問題点が指摘されてもなかなか承認の見直しが行われない。
    正露丸等クレオソート製剤が今なお一般用医薬品として承認されている背景には、このような一般用医薬品の承認及び再評価システムの問題があると考えられる。

4 基本的な行動指針

  1. (1) 正露丸等クレオソート製剤の問題を通して一般薬の問題を探る。
  2. (2) 正露丸等クレオソート製剤の問題を通して学校の薬剤の問題をクリアーにする。

5 行動と結果

  1. (1) 具体的行動
    1. ① 01年1月12日 養護教諭と学校薬剤師宛にアンケート調査
    2. クレオソート製剤の問題はよく知られていたが、約4分の1弱の学校ではまだ常備されていることが分かった。また、学校常備薬に対する各学校の対応では、教育委員会が薬剤師会の協力を得て学校常備薬ガイドラインを作成している地域もあった。しかしながら、常備薬の選択や管理に学校薬剤師が関わっていないとする回答も多く、薬に関する資料、情報が少ないことが課題であるとする回答もあった。
    3. ② 1月31日 厚生省と大幸薬品株式会社他へ「正露丸等クレオソート製剤の販売中止などを求める要望書」提出
    4. ③ 2月6日 名古屋で正露丸等クレオソート製剤を題材に公開会議開催
    5. ④ 4月13日 日本学校薬剤師会へ「学校常備薬における正露丸等クレオソート製剤の取り扱いと学校常備薬の選択、管理に関する学校薬剤師の関与についての要望書」提出
    6. ⑤ 薬局薬剤師へのアンケート実施
      (ⅰ)薬剤師の78.0%は、特に指名、希望がない場合には、正露丸等を奨めてはいない、(ⅱ)薬剤師の52.2%は、特に正露丸等の指名、希望がある場合にも、他の下痢止め薬を奨めることがある、(ⅲ)薬剤師の87.1%は、自分では正露丸等を使用していないことが分かった。
    7. ⑥ 6月20日 12都道府県405教育委員会へ公開質問要望書を提出
  2. (2) 結果・反応
    マスコミ報道によれば、厚生省は、調査し問題があれば指導するとのことである。
    製薬企業は、当会議に対しては回答なし。
    大幸薬品は「薬害オンブズパースン会議の要望について」という文書を薬局に送り、「正露丸は年間およそ3億回服用分が製造され、多くの消費者のご支持をいただいている」薬であり、「副作用については極々まれにアレルギー症状(軽度の湿疹)等の軽度な症状がみられる以外にはない」とし、「販売中止をする考えは一切ありません。」と表明した。

6 安全性情報165号

厚生労働省は、「医薬品・医療用具等安全性情報165号」(01年3月30日)でクレオソート等配合剤と因果関係は否定されない肝機能障害3例が報告されたことから、使用上の注意の「相談すること」の項にまれに起こることがある重篤な症状(副作用)として肝機能障害を追記し、注意喚起を行った。
薬害オンブズパースン会議は、厚生労働省に対し、報告された具体的な症例についての情報開示を求めた(01年4月13日)が、ほとんどが黒塗りで開示された(01年5月10日)ため審査を申し立て(01年7月13日)、黒塗り部分のほとんどについて開示すべきとの答申(02年4月12日)が出され、開示決定された(02年5月30日)。詳しくは情報公開請求の項参照。