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● 問題の発端

 正露丸等クレオソート製剤(以下、「正露丸等」という)は、木材を乾燥して得たクレオソート(日本薬局方クレオソート、木クレオソート)を主成分とする止瀉薬(下痢止め)である。日露戦争開戦2年前に兵士が携行できる薬として発売され、『征露丸』という名称がつけられたのが商品名の由来とされる。

 正露丸等は、当時広く用いられていた一般用医薬品であった。医療用医薬品からスイッチされたH2ブロッカーを除けば、当会議が一般用医薬品を取り上げるのは初めてのことだった。

● 安全性・有効性

 当会議が調査を委託した「医薬品・治療研究会」からの報告は、クレオソートには細胞を傷害する性質がある、強い腐食作用がありかつ解毒薬がない、動物実験から推定されるヒトでの中毒量は常用量の2〜4倍で常用量との差が小さい、常用量の4倍を1週間服用して腸管壊死を起こし腸管切除となった症例報告がある、このような危険性の一方で有効性については比較臨床試験が行われておらず科学的証明はない、などというものだった。正露丸(大幸薬品)の添付文書には「皮膚に付着したらせっけん及び湯を使ってよく洗ってください」と書かれているが、そのような物質を内服薬として用いれば腸管への悪影響が予測される、という話もあり、メンバーからは驚きの声が挙がった。

 この調査結果をふまえ、2000年1月、厚生省(当時)に対しては、「胃腸薬の製造(輸入)承認基準」からクレオソートを削除することを求め、製造・販売会社に対しては、正露丸等の販売中止を求める要望書を提出した。

● さまざまな取り組み

 薬局で販売され広く使用されている一般用医薬品であるということもあり、正露丸等に関してはタイアップグループとも連携して様々な活動を試みた。

 小学校及び中学校の養護教諭・学校薬剤師に対するアンケートを行い、32校(回収率約29%)からの回答の結果、正露丸等について問題が指摘されていることを「知っていた」が90.6%を占める一方で、正露丸等を「使っている」という学校が25%あった。

 タイアップグループと共催した「公開会議in名古屋」では、パースン会議での議論を再現する形で正露丸等の問題点を明らかにした。

 さらに、薬局薬剤師へのアンケート調査を実施し、〔剤師の78.0%は特に指名、希望がない場合には正露丸等を奨めてはいない、¬剤師の52.2%は、特に正露丸等の指名、希望がある場合にも、他の下痢止め薬を奨めることがある、L剤師の87.1%は自分では正露丸等を使用していない、という結果だった。

● 副作用報告の情報公開の先例に

 厚生労働省は、2001年3月、正露丸等の服用に伴う肝機能障害の副作用症例が3件報告されたことを理由として添付文書の改訂を行った。当会議は報告された症例の副作用症例票の情報公開請求を行ったが、ほとんどが黒塗りで開示されたため、異議申立を行い、情報公開審査会は、黒塗り部分のほとんどを開示すべきとの答申を行った。これが副作用症例票の情報公開請求に関するリーディングケースとなり、以降の請求では同様の取り扱いがとられるようになった。

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