調査・検討対象

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ノスカール

1 ノスカールとは

一般名 トログリタゾン
商品名 ノスカール
企業名 三共株式会社
販売状況 米国の措置を受け、00.3.22 日本でもメーカーにより販売中止・自主回収
適応症 2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)でインスリン抵抗性が推定され、食事療法や運動療法で十分な効果が得られない場合、あるいは経口血糖降下剤(SU剤など)の効果が不十分な場合(注・販売当時の適応症)

2 取り上げた経緯とその後の経過

  1. (1) 取り上げるまでの経緯
    95年9月 ノスカール承認。96年12月薬価収載。
    97年3月 販売開始。
    97年10月 米国で添付書改訂:[肝障害の危険性と定期的検査の必要性]記載
    11月 日本で肝障害8例(死亡1例)報告、添付文書の「使用上の注意」改訂
    12月1日 新たに肝障害5例(死亡2例)報告。緊急安全性情報。
    米FDA が再度警告。英国ではメーカーが自主的販売中止
    12月25日 日本で追加症例報告(重症肝障害患者74人、死亡4人)
    以上を踏まえ、98年1月の会議でメンバーより検討の必要性が指摘された。
  2. (2) その後の主な経過
    1. ① イギリスおよびヨーロッパ
      • 97年5月販売開始(英グラクソウェルカム)、12月メーカーが自主的に販売中止
      • 98年8月、検査の定期化など使用上の注意を厳しくして再申請
      • 99年3月、MCA(イギリス医薬品庁)は申請を却下
      • その後、ヨーロッパ諸国でノスカールを承認した国はない。
      • 00年3月、欧州医薬品庁(EMEA) がロジグリタゾン(商品名Avandia)を承認。
      • 00年、EMEAがピオグリタゾン(商品名Actos)を承認。
    2. ② アメリカ
      • 97年7月 米ワーナー・ランバート、トログリタゾン(商品名Rezulin)販売開始。
      • 97年12月 FDA、Rezulin の黒枠警告(black box warning)を出す。
      • 98年2 年間のランダム化比較試験中、約 600人中1人が死亡。試験継続中止
      • 99年3月, FDA は聴聞会で反対意見があったが、承認継続を多数意見で決定。
      • 99年4月には、他の2種類のグリタゾン剤も承認。
      • 2000年3月21日FDA の勧告を受け入れてメーカーがノスカールを自主回収
    3. ③ 日本
      • 95年9月 厚生省がトログリタゾン(商品名ノスカール、三共)を承認。
      • 96年12月 薬価収載。97年3月ノスカールの販売開始。
      • 97年12月 三共、厚生省の指導に基づき、ノスカールの緊急安全性情報を出す。
      • TIP誌は98.2〜99.4まで危険性を警告し、98.4以降は中止すべきと主張
      • 99年9月ピオグリタゾン(商品名アクトス)が製造承認。同年11月薬価収載
      • 00年3月22日 日本でも三共株式会社が、自主回収を決定
      • TIP誌00.4ノスカール回収の遅さ、アクトスの心毒性等危険性を指摘

3 何が問題か

  1. (1) 危険性
    発売後短期間の間に死亡を含む重篤な肝障害等が多発(3万人に1人の死亡、1800人に1人の重篤な肝障害)、予測困難な肝障害の発生と重篤化。心毒性の危険性あり(ただし、アクトスは心毒性がノスカールよりもさらに強いと考えられる:アクトス参照)。
  2. (2) 有効性
    糖尿病治療において、血糖値のコントロールは、代理(仮)の目標であり、真の目標は、血管障害や神経障害の改善、死亡率の減少である。ノスカールやアクトスで証明されている有効性は、代理の目標だけであり、真の目標は証明されていない。
  3. (3) 危険/益比について
    真の目標での有効性は証明されていないが、高頻度の重篤な害は確実に存在する。動物実験でも血糖値の低下など利益につながる面の活性発現濃度で、ノスカールもアクトスも危険な兆候が認められており、これらの点から、長期の危険/益比は危険の方が益を上回る可能性が強く予想されている(TIP誌98年2月、4月、99年4月)。

4 基本的な行動方針

  1. (1) 臨床試験データや、副作用症例データなどすべてのデータの公開を求め、被害実態や危険性を正確に把握し、販売中止も射程にいれて対処方法を検討する。
  2. (2) 中央薬事審議会での慎重な審議を求める。
  3. (3) 危険性周知徹底のための効果的方策の実施を要求する。

5 具体的行動

  1. (1) 98年2月、厚生省および三共に対し、「トログリタゾン(ノスカール)に関する緊急要望書」を提出(情報公開請求、危険性周知徹底のための方策実施等の申し入れなど)
  2. (2) 98年5月、厚生省および三共に対し、「トログリタゾン(ノスカール)についての再要請書」を提出(情報公開の再要求)
  3. (3) 2000年7月、厚生省および三共に対し、承認取消を求める「トログリタゾン(商品名ノスカール)に関する要望書」を提出

6 結果

  1. (1) 当会議の申し入れ後、厚生省から三共に危険性周知徹底について指導。
    • 厚生省は月1回の肝機能検査実施指導で当面の対策は十分との見解。当会議が求めていた副作用症例のデータの公開は、プライバシー保護などを理由に拒絶し続けた。
    • 三共も同様の対応。MRを通じ危険や肝機能検査を周知徹底しており十分と判断。
      副作用情報公開は厚生省の判断であり、三共独自に開示できる立場にないとした。
    • 販売数量はほぼ半減〔97年(9カ月) で80億→98年70億、99年60億、44%減〕
  2. (2) 00.3.21 アメリカでの自主回収直後(3.22)に日本の三共株式会社も自主回収決定

7 今後の課題と同系統薬剤の問題点の指摘

  1. (1) ノスカールは自主回収であって、製造承認は取り消されていない。また、メーカーは自主回収理由を危険性でなくマスコミ報道の問題としている。問題は危険/益比であり、このため製造承認取り消しが必要。そのための行動が必要である。
  2. (2) 同効薬剤であるピオグリタゾンは、ノスカールに増して危険の可能性が強い。とくに浮腫は対象患者の10%以上。心不全、心筋梗塞など心臓への悪影響が問題である。
  3. (3) イギリスでの販売の再申請が却下された時に厚生省に販売中止を申し入れることを検討していたが、他の重要案件の優先で検討が遅れ、その間に自主回収が決まった。
  4. (4) ノスカールの製造承認取消し、アクトスの製造承認取消しを求める。アクトス中止までは少なくともアクトス添付文書改訂、必要情報の公開を求める要望書を提出する。
  5. (5) ノスカールに限らず、厚生省に集められた副作用症例の開示については常に論争になっている。厚生省が公開を拒絶する理由はプライバシー保護と、報告を寄せた医療機関への配慮である。しかし、これらの問題は、個人や医療機関名の特定につながる部分を伏せるなど開示方法の工夫で解決可能な問題である。この点の克服は当会議全体に共通する今後の重要な課題である。