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● 重篤な肝機能障害による死亡

 ノスカール(トログリタゾン)は、薬害オンブズパースンが発足した翌年である1998年に取り組んだ糖尿病治療薬である。

 この薬は、1997年3月に三共株式会社によって販売が開始され、販売開始後6ヶ月で20万人の患者に使用された。本来は、インシュリン抵抗性が確認される患者にのみ厳密に選択されるべき糖尿病治療薬であったが、第一選択薬のように治療に用いられたのである。
 その結果、110人の重篤な肝障害患者を発生させ、そのうち9人が死亡し、1997年12月に緊急安全性情報が出された。

● 緊急要請書の提出

 これを受け、当会議では、1998年2月に、厚生省(当時)と三共に対し「緊急要請書」を提出して、具体的な副作用情報の公開請求と危険性の周知徹底の方策の実施を求め、さらに同年5月、厚生省および三共に対し「再要請書」を提出して情報の公開を強く求めた。

 実はこの緊急要請書の作成に当たり、当会議内では、既に入手できている情報だけで販売中止を求めることも検討し、それを強く押すメンバーもいたが、より確実を期するために、まずは情報公開を求めるという選択をしたのである。これを受けて、厚生省は、三共に対し、危険性の周知徹底のための指導を行ったが、当会議の求めた情報の公開はなく、厚生省も三共も、月1回の肝機能検査の実施により危険性は回避できるという見解をとり続けた。

● 突然の自主回収

 ところが、1999年3月、英国でノスカールの承認申請が却下され、米国でもノスカールの販売がFDA(米国食品医薬品局)の指導によって中止となった。すると、突然、三共は国内での販売を中止し、製品を自主回収したのである。

 あれほど問題はない、患者にとって必要な医薬品だと言っていたのは何なのだと思うと同時に、当会議内では、やはり当初から中止を求めるべきだったのではないかという意見も出るなどし、考えさせられた。その後、当会議では、企業による自主的販売中止というだけでなく、承認を取り消すべきという要望書を厚生省に提出した。

● 副作用被害救済制度

 ところで、ノスカールについては、副作用である重篤な肝障害のために死亡した被害者に対する医薬品副作用被害救済制度の適用についても支援した。

 この被害者は、副作用被害救済制度の適用を申請したところ、ノスカール投与前に運動療法や食事療法等を実施していないから不適正使用であるという理由で不支給となっていた。そこで、審査請求を経て、行政訴訟まで提起したが、結局、ノスカールが自主回収されるという展開となったのを受け、裁判外の話し合いによって、不支給決定は取り消され、遺族年金が支給されることとなった(2001年)。

 こうして、薬害オンブズパースン会議のノスカールに関する活動は一区切りついたが、それからまもなく、同じ糖尿病薬であるアクトス(ピオグリタゾン)の発がん性等をめぐる問題に取り組むことになるのである。

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