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登録販売者試験不正出願問題

1 登録販売者試験とは

登録販売者とは、平成18年改正薬事法で新設された一般用医薬品を販売するための資格の一つ。扱うことの出来る医薬品は、一般用医薬品のうち第二類医薬品(指定第二類含む)及び第三類医薬品に限定されている。
登録販売者試験は、平成20年から各都道府県で実施され、平成23年度末現在の登録販売者の総数は109,958名に達している。
この登録販売者試験の受験資格として、最低でも1年以上の医薬品販売に関する実務経験が求められている(大学薬学部卒業者を除く)が、要求される実務経験を積んでいないにもかかわらず、内容虚偽の実務経験証明書を提出して受験する不正出願が問題となっている。

2 取り上げた経緯

2011年3月、全国柔整鍼灸協同組合が、既存配置販売業者である株式会社日本配薬と結託し、2010年に実施された各都道府県の登録販売者試験において、虚偽の実務従事時間を記載した「実務経験証明書」を多数の組合員に交付し、組織的に不正出願を行わせたという事件が報じられた。
そこで、当会議は、2012年10月25日、登録販売者試験の受験要件である実務経験を積むべき業種から既存配置販売業を削除すること等を内容とする「登録販売者受験資格に関する要望書」を提出した。
ところが、同要望書提出からわずか9日後の同年11月4日、大手スーパー西友が、業務内容や従事時間を偽った実務経験証明書を発行していた疑いがあることが報道された。
これに対し、厚労省は、同年11月30日、各都道府県に対し、関係事業者の実務経験証明に関する自主点検の実施を依頼したものの、新たな再発防止策は示されなかった。
2014年6月、厚生労働省は、実務経験証明書の提出を受験資格から削除し、合格後に店舗管理者等になるための要件に変更するという改正案を提出し、パブリックコメントを募集した。同改正案は、同年7月31日に公布され、来年2015年4月から施行されることになった。

3 何が問題か

  1. (1) 実務経験に関する証明資料が簡易すぎること
    登録販売者試験受験者の実務経験証明方法については、タイムカード等の提出が義務付けられているが、それだけでは、その時間、実際に薬剤師等の指導のもとで医薬品販売に従事していたかの確認は不可能である。
  2. (2) 受験資格たる実務経験を積むべき業種に既存配置販売業を残したこと
    既存配置販売業の場合、主な業務は外回りであり、かつ、配置員は薬剤師等の資格を有する必要がないため、既存配置販売業において実務経験を得ようとする者は、単独で配置業務を行うことが可能であり、薬剤師等から必要な実践的な資質を習得しないまま受験資格を取得することが可能である。また、既存配置販売業の場合、実務従事時間は自主申告に頼らざるを得ず、不正の温床となってしまう制度的な危険性が存在している。
  3. (3) 登録販売者試験の不正受験に対する制裁が緩やかであること
    登録販売者の場合、医師や薬剤師の国家試験と異なり、不正が行われた場合の受験者及び業者に対する制裁規定は極めて緩やかである。
  4. (4) 薬学部卒業者以外は薬学の体系的教育を受けていないこと
    薬学部卒業者以外の受験者は、体系的な薬学教育を受けていなくても、独学と実務経験だけの「にわか仕込み」で資格が得られてしまう法制度となっており、資質を担保できない。
  5. (5) 2014年省令改正は、実務経験証明書を求める人数を減らすことによって各都道府県の担当者の事務処理上の負担を軽減するものに過ぎず、登録販売者の資質向上や不正受験の再発防止のための抜本的な改正とは到底評価できない。

4 具体的な行動

  1. (1) 2012年10月25日「登録販売者試験受験資格に関する要望書」を提出し、以下の3点を要望した。
    1. ① 実務経験を積むべき業種から既存配置販売業を削除すること
    2. ② 不正受験が行われた場合の制裁として、5年以内の受験資格停止規定を設けること
    3. ③ 虚偽の「実務経験証明書」を作成した業者に対する制裁を設けること
  2. (2) 2012年11月14日「西友の登録販売者試験不正受験問題に関する緊急要望書」を提出し、以下の3点を要望した。
    1. ① 実務経験に関する証明資料として、従事した業務内容や薬剤師の指導内容を記載した月毎の報告書を提出させるよう制度改正をすること
    2. ② 登録販売者試験の不正受験が行われた場合の法的制裁として、①受験者に対する将来5年間の受験資格停止、②医薬品販売業者に対する将来5年間の実務経験証明禁止を内容とする制度改正をすること
    3. ③ 各都道府県に対し、不正に関する実態調査を実施し、平成24年度中にその調査結果を公表するよう指導すること
  3. (3) 2013年4月23日「登録販売者試験受験資格に関する再要望書」を提出し、以下の3点を要望した。
    1. ① 実務経験証明資料として、従事した業務内容や薬剤師の指導内容を記載した月毎の報告書の提出を義務付けること
    2. ② 薬学部卒業者以外の受験者に対し、薬学体系的教育の集合研修の履修を求めること
    3. ③ 資格取得後も、外部研修の履修を法的に義務付け、資格継続の要件とすること
  4. (4) 2014年7月8日、「『薬事法施行規則の一部を改正する省令(案)』に関する意見書(パブリックコメント)」を提出して改正案に反対すると同時に、従前の要望書のとおりの要望事項を改めて求めた。