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DTC広告

1 DTC広告とは

DTCとは、Direct to Consumer(顧客直結)の略で、製薬企業が医薬関係者以外の一般人(薬事法67条参照)に直接働きかけるマーケティング活動のことを指す。DTC広告とは、DTCマーケティングの中で、マス媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど)上で一般消費者向けに打つ広告のことである。
DTC広告には次の3つのタイプがある。

  1. リマインダー広告
    病名には言及せず、薬剤名と製薬会社名に言及する広告
  2. 受診推奨広告
    薬剤名には言及せず、病名と製薬会社名に言及し、病気の治療のための受診を推奨する広告
  3. 疾病啓発型広告
    一定の症状を挙げ、それが病気であるということを示すことによって病識を持たせ、それを治療できる医薬品があるということを示す広告

2 取り上げた経緯

日本においては、医療用医薬品の一般消費者に対する広告(DTC広告)は、特定の場合を除き薬事法上規制されておらず、行政指導によって事実上規制され、製薬企業はこれを遵守してきた。ところが、2000年頃からDTC広告、とりわけ疾病啓発型広告が実施されるようになり、近年その数は増加している。
製薬企業によるDTC広告は営利目的であり、偏った情報提供となる危険性が高く、かかる広告から情報を得た一般消費者の行動は、医薬品の適正使用を阻害するおそれがある。そのため、一般消費者保護の観点から、医薬品のDTC広告は認められないとするのが世界の潮流である。
ところが、行政刷新会議は、世界の潮流に反し、規制・制度改革の平成23年度措置として、医薬品等適正広告基準による医療用医薬品等の広告の制限を撤廃しようとしていた。
そこで、当会議は、かかる行政刷新会議の規制緩和に反対すると共に、医薬品のDTC広告の現状及び問題点を指摘し、薬事法の改正等による広告規制の強化を求めるため、問題提起を行うこととした。

3 何が問題か

  1. (1) 疾病啓発型広告の問題点
    疾病啓発型広告は、広告の中に特定の症状を挙げ、一般消費者に病識を持たせることにより、医療機関を受診させて、処方を依頼させるという効果を持つ。一見病気の啓発という形をとりながら、結果的には偏った情報となる危険性が高く、広告で情報を得た一般消費者が医師に対して特定の薬の処方を求めるなど、医薬品の適正使用を阻害するおそれがある。
    実際、アメリカで行われた研究では、DTC広告を見たとして特定の医薬品(抗うつ剤パキシル)につき語った患者の55%に対し、抗うつ剤が処方されたとの結果が報告されており、ニュージーランドにおいても同様の報告がある。
  2. (2) 日本の広告規制の問題点
    日本では、医薬品の広告は、誇大広告を除き、法律上広告規制はなされておらず、医薬品等適正広告基準(昭和55年10月9日薬発第1339号厚生省薬務局長通知)が通知され、DTC広告は、行政指導によって制限されている。
    他方で、行政指導によって禁止される「広告」といえるためには、医薬品広告の3要件を満たす必要があり、疾病啓発型広告のような医薬品の名称を登場させない広告は「商品名の明示」という要件に欠け、広告には該当せず、規制の対象とはならない。
  3. (3) 海外の広告規制の現状
    WHO倫理規定や現行のEU指令では、DTC広告は認められていない。一般消費者保護の観点から、医薬品のDTC広告は認められないとするのが世界の潮流であり、現在DTC広告が認められているのは、米国及びニュージーランドのみである。
    米国では、重大な副作用問題を起こした製品の多くがDTC広告を積極的に実施していたことから、DTC広告の功罪が問われることになり、PhRMA(米国研究製薬工業協会)は、DTC広告に関するガイドライン(自主規制)をまとめ、米国連邦議会においても法規制の必要性について議論されてきたところである。

4 基本的な行動指針

日本においても行政指導ではなく法律(薬事法)上の広告規制を設けると共に、一般消費者への情報提供のため、医薬専門家や患者等で構成される情報提供機関を創設するよう問題提起を行っていく。

5 具体的行動とその結果

  1. (1) 2011年3月11日、内閣総理大臣、厚生労働大臣、特命担当(行政刷新・消費者)大臣、消費者委員会委員長に対し、「医療用医薬品の一般消費者向け直接広告(DTC広告)に関する意見書−行政刷新会議の規制緩和に反対する−」を提出した。
  2. (2) 2011年7月22日閣議決定(規制・制度改革に係る追加方針)においては、医薬品等適正広告基準による医療用医薬品等の広告制限の撤廃は含まれないこととなった。

6 今後の課題

行政刷新会議が検討していた医薬品等適正広告基準による医療用医薬品等の広告規制の撤廃は行われないこととなったが、法律上広告規制を行うこと、その前提としてDTC広告の実態調査を行うことがなお必要である。広告によらない医薬品の正しい情報提供のあり方を含め、必要な広告規制のあり方につき引き続き検討を行い、提言を行っていく必要がある。