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 2011年3月11日、薬害オンブズパースン会議は、「医療用医薬品の一般消費者向け直接広告(DTC広告)に関する意見書〜行政刷新会議の規制緩和に反対する〜」を、内閣総理大臣、厚生労働大臣、特命担当(行政刷新・消費者)大臣、消費者委員会委員長宛に提出しました。

 日本では、医師の処方箋が必要とされる医療用医薬品の一般消費者に対する広告(DTC=Direct to Consumer広告)につき薬事法上の規制はなく、行政指導によって、事実上規制されています。ここにいう「広告」は、特定医薬品等の商品名が明らかにされていることが要件とされています。

 製薬企業によるDTC広告は営利目的ですので、偏った情報提供となる危険性が高く、このような広告から情報を得た一般消費者の行動が、医薬品の適正使用を阻害するおそれがあります。また、DTC広告の中でも「疾病啓発型広告」は、ある症状を挙げて、「それは実は病気なのです」と病気の認識をもたせ、「お医者さんに相談しましょう」と治療薬を得るための受診につなげる広告ですが、具体的な医薬品名が広告に出てこないため、行政指導による広告規制の対象にはなりません。このような疾病啓発型広告は、2000年頃から多くの製薬企業が行うようになっています。

 このような医療用医薬品のDTC広告は、一般消費者を保護する観点から認めないとするのが世界の潮流です。しかし、行政刷新会議は、こうした世界の潮流に反し、規制・制度改革において、行政指導による広告の制限を撤廃しようとしていました。そこで、当会議は、規制緩和に反対する意見書を提出しました。2011年4月8日の閣議決定では、この広告規制緩和方針の閣議決定は見送られましたが、今後の動きを注視していく必要があります。

 また、意見書では、現在行政指導で行われている広告規制は薬事法の改正により規制すべきであること、広告による情報提供に代わり情報を提供する中立的な情報提供機関を創設すること、DTC広告の実態把握のための研究班を設置することを求めています。

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