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〜ランダム化がされていない観察研究はRCTの代替とはなりえない〜

2020-10-06

(キーワード)
ランダム化比較試験(RCT) リアルワールドエビデンス ランダム化の重要性


 電子化された患者情報の大規模なデータベースによるランダム化をしていない観察研究が、新しいまたは既存の治療法の有効性と安全性に関する「リアルワールドエビデンス」として、ランダム化比較試験(RCT)の代替として推奨されている。しかし、ランダム化をしていない観察研究で得られたリアルワールドエビデンスには、様々な問題や危険が伴う。当会議は、過去にもリアルワールドエビデンスについてたびたび取り上げてきたが(※2〜5)、今回Richard PetoらがNew England Journal of Medicineに投稿した論文(※1)について、その要旨を紹介する。

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 リアルワールドエビデンスが推進されている。しかし、懸念すべき点がいくつかある。例えば、今まで安全で有効とされてきた適切な治療が、実はそうではないと誤って評価されてしまう危険があることだ。なぜそのようなことが起きるのか。ランダム化は信頼できる治療効果についてのエビデンスを提供する。ランダム化をしていない観察研究は大きな治療効果を検出できる可能性があるものの、治療のメリットがゼロまたは中程度である場合は、潜在的なバイアスの可能性のためその研究は信頼できない。

 ランダム化比較試験(RCT)はどうかというと、患者やその背景などのバランスがとれていてバイアスが少ない。このような理由から、大規模なランダム化比較試験の治療効果は評価できる。ではそこまで信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)がなかなかできないのはなぜか。それは、科学的な必要性からではなく官僚的なプロトコルで過度に複雑化して、労力を費やしコストもかかるからだ。確かに、リアルワールドエビデンスはスピーディーで負担が少ない。しかし、ランダム化をしていなければ有効性や安全性に関するエビデンスの可能性と信頼性を低下させ、これは間違った解決方法だ。

 今後進めていくべきことは、ランダム化を信頼できない非ランダム化に置き換えるのでなく、ランダム化比較試験(RCT)の質と効率化を改善していくことである。その解決案をいくつか提案する。

1 EBMに基づく適切なスタディのガイドラインを作ること(FDAがサポートするThe Clinical Trials Transformation initiativeは、ランダム化比較試験の設定と特定の側面を改善するのに役立つガイドラインを開発することができるだろうと示している)。

2 技術の進歩(スマホなど)を最大限に活用し、より多くのスタディを手頃な価格でできるようにすること。

3 電子カルテのシステムなどにアクセスし適格な多数患者を特定していくこと。

4 広範囲な患者に関連するように強い制限基準を設けない

5 アドヒアランスの向上のため対話型の電子症例報告フォームでデータ収集すること。

6 常に状況を確認できるようにして、フォローアップする。電子健康記録システムとの連携で、長期にわたってフォローアップできるようにすること。

7 技術の進歩(スマホやデジタルセンターなど)を組み込むことで、治療の有効性安全性の評価を強化すること。

 上記を実現すれば、コストがかかりすぎず、そして患者のバイアスが少ない大規模なランダム化比較試験ができるのではないか。これらを早急に行い、より一層、患者のケアと公衆衛生の改善につなげていく必要があるだろう。

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 リアルワールドエビデンスの結果を安易に信頼すべきではないと警告する論文である。ひとつの例として、リアルワールドエビデンスの結果でスタチン系薬剤が大腸がんのリスクを低下させるという結果がでたという。しかし、10000例を超えるがんの発生を含むランダム化試験のメタ分析ではスタチン療法により平均5年のがんの発生または死亡を減少させるという明らかな結果はない。このようなことから、リアルワールドエビデンスは、時に危うい結果となる可能性を秘めているということだ。

 リアルワールドエビデンスは、バイアスが大きくなりやすく、都合のいいようにデータを解釈することもできる。よってリアルワールドエビデンスはランダム化比較試験の代替となりうるものではない。そこを理解しないと間違いを起こしてしまうだろう。

 コストを削減し、長期的に観察し、より安全性を評価していく。そのようなランダム化比較試験ができるように早急にガイドラインを作るべきだと筆者らは提言している。

 電子化の進歩をうまく活用しゴールデンスタンダードとも言っていいランダム化比較試験を今後も続けていくべきだ。