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高価な抗がん剤対策に安価な製品との費用対効果試験の公的実施を

2014-10-22

キーワード;安価な選択薬、中立的機関、試験の費用

NEJM誌2014年4月17日号(http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMp1400104)

 著者はNCI(米国国立がん研究所)の所属である。必ずしもNCIの見解を示すものではないとしているが、高額な抗がん剤の費用対効果に疑問があるとして、より安価な選択薬との有効性比較試験の中立的機関による実施を訴えている。
 以下はその要約である。

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 新しい抗がん剤による1年間の治療費の平均は、今や10万米国ドルを超える。そして、これらの治療の多くのベネフィット―生存期間を週あるいは月単位で改善するというケースもしばしばである―はそれらの値段には見合わないように思える。
 高価な抗がん剤は2つの方法で社会に費用負担をしいる。1つは、高い費用それ自身。これらの薬は処方のつど支払者の負担となる。2つめは、高額であることから中立的な有効性比較試験(等価だが安価な代替薬の確立を探るための)の実施をできなくすることで、市場でのシェアを保護していることだ。  

 去勢抵抗性前立腺がんに対して開発された酢酸アビラテロンは、ステロイドから男性ホルモンであるテストテロンの生成過程で重要な役割をもつ酵素CYP17を阻害するが、その作用機序は、古い薬ケトコナゾールによく似ている。実際、アビラテロンの承認前には、エビデンスやや弱めの臨床試験における奏効率改善を根拠に、ケトコナゾールが適応外で使用されていた。
承認の根拠となった第形蟷邯海妊▲咼薀謄蹈鵑論限鹸間の中央値を10.9か月から14.8か月に延ばしたが、しかし、その時、ケトナゾールはこのスタディの対照薬ではなかった。ケトコナゾールとアビラテロンの生物学的な違いはおそらく小さいが費用の違いは大きい。
 ケトコナゾールは広く利用可能で、ジェネリック薬は月500米国ドルから700米国ドル、アビラテロンの場合は月7000米国ドルを超えケトコナゾールの10倍である。それだけの費用の差に見合う有効性があるのか疑問である。

 アビラテロンのケトコナゾールとの比較臨床試験を実施することが必要である。
 米国で1年間に亡くなる前立腺癌患者32000人のうちの半分が、アビラテロンの代わりにケトコナゾールで治療されたとしたら、年間10億米国ドル以上もの費用が節約できるのだ。アビラテロンのメーカーは自社の市場シェアを減らすことにつながるだろうこのような試験に対して、資金を出すことも他の誰かによるそのような試験にアビラテロンを無料で提供することも同様に望まないだろう。つまり試験実施のためには第三者が両剤を購入する必要が出てくるのだ。
 ではそのコストはどれほどだろうか。驚きの答えは約7千万米国ドルだ。
 著者らは、例にあげたアビラテロンを含む、特に費用対効果に問題のある5つの抗がん剤をあげ、有効性を比較するための臨床試験のデザインを設計し、必要症例数とそのコストを計算している。必要症例数は870~1100症例でその費用は、低い方から2500万米国ドル(テムスロリムス)、2900万米国ドル(レゴラフェニブ)、3500万米国ドル(エベロリムス)、3770万米国ドル(ナブパクリタキセル)、そしてアビラテロンが6900万米国ドルである。
 いくつかの利害関係者(NCIのがん治療評価プログラム、大規模な腫瘍学会等のグループ、支払者のグループなど)が共同すればこれらの費用(2500万~6900万米国ドル)を生み出すことは可能だし、新薬メーカーにとっても、新薬を比較臨床試験に無料提供することはメリットにつながると著者らは主張する。それは中立的機関によって元化合物(対照薬)との直接比較臨床試験により真に有効であるということが示されれば、ベストな治療をしたいと願う腫瘍医達の使用欲求を導くはずだからだ。
 費用面での脅威となっている抗がん剤の比較臨床試験の実現は研究社会への新たな挑戦であるが、我々はこれに向き合わなければならないと締めくくっている。

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 これらの抗がん剤は、この7月4日に製造承認されたばかりのアビラテロンを除き、我が国でも既に使用されている。抗がん剤の高薬価の問題は、当会注目情報でもたびたび取り上げてきた。わが国においては、抗がん剤の「ドラッグラグ」問題が取りざたされて以降、高額抗がん「新薬」が次々と承認され(5年間で30剤)ている。新薬の過剰保護政策をそろそろやめて、費用対効果をしっかり検証する政策をもつべきではないだろうか。             (N)

《我が国での商品名と対象疾患》
・ナブパクリタキセル(商品名アブラキサン;大鵬薬品)転移性膵臓がん
・テムシロリムス(商品名トーリセル;ファイザー)腎細胞がん
・エベロリムス(商品名アフィニトール;ノバルティスファーマ)転移性乳がん
・アビラテロン(商品名ザイティガ;ヤンセンファーマ、2014/7/4製造承認・薬価未収載)転移性前立腺
・レゴラフェニブ(商品名スチバーガ;バイエル薬品)ソラフェニブ転移性結腸直腸がん