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欧州の医療技術評価(HTA): 英国NICEは抗がん剤に厳しく臨み、ドイツ・フランスも財布のひもを締める

2012-06-07

(キーワード:HTA、NICE、IQWiG、HAS、費用対効果、保険償還)

 経済環境の悪化と医療費支出抑制のもとで、欧州の医療技術評価(HTA)を行う政府機関は、いずれも新薬の医療技術評価に厳しく臨んでいる。英独仏のこれらの機関が2011年11月に行った保険償還についての決定は、画期的な延命効果を示さなければ、抗がん剤は公的資金の注入にはあまりにも高価すぎるとの判断で、財布のひもを締めている。以下はピンクシート誌(2011年12月12日号)の要約である
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 英国NICE(国営医療技術評価機構)は大腸癌治療剤であるアービタックス、アバスチン、ベクティビックスの3剤について、保険償還しない判断を下した。それぞれの薬の延命効果だけでなく、費用対効果比率から算出した「生活の質を調整した生存年」(QALY)がNICEの規定した3万ユーロの3倍以上(ベクティビックスはそれ以上)だったことによる。

 そして、費用対効果に関しては、エーザイの転移性乳がん治療剤ハラヴェンに対しても、2.7か月の延命効果は不十分であり、データの頑健性にも疑問があるとして、エーザイの値引きの申し出も退けた。

 また、乳癌治療剤のフェソロデックスは、英国ではすでに後発品が発売されているアロマターゼ阻害剤(アリミデックス、フェマーラ)との延命効果の比較で優位ではないとされた。フェソロデックスのQALYは3万5千ユーロと許容限度のわずかに上だったが、NICEはアストラゼネカのネットワークが行ったメタ解析は選択された試験のパラメーターが不均一なため信頼できないとしている。

 これに対して、ロシュのリツキシマブについては、Stag靴ら犬累彬性リンパ腫に対して様々な化学療法との併用が認められた。この薬のQALYは意外にも3万ユーロを下回っており、会社に対してそれほど大きな利益をもたらしてはいない。ロシュは新しい適応の承認を確実に得る戦略をとっているのである。下肢関節置換術に伴う血栓症の予防薬として、アピキサバンはエノキサパリンより効果があり安価であるとして承認された。2010年12万人が下肢関節置換術を行った英国において、アピキサバンは費用対効果の優れた薬と認められるかもしれない。

 ドイツのIQWiG(保健衛生制度における質と経済性に関する研究所)はコレステロール低下剤エゼチミブはプラセボに勝るものではないとし保険償還リストからはずした。この決定はヨーロッパでリピトールの後発が発売される2012年をむかえる前に行われた。(※1)

 フランスのHASはサノフィの抗不整脈剤ムルタークを保険償還リストからはずすとアナウンスした。有害事象の問題もあるが、この決定はフランスの透明度委員会が同じサノフィのアミオダロンに比較し有効性が低いと評価していたので驚くべきものではない。しかし、国内の製薬会社の薬を保険償還から外すということは、フランス政府がとっていた国内製薬会社の保護政策が薬の問題ばかりではなく経済の悪化という背景で終わりをむかえたとみることができる。
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 日本では政府の「新成長戦略」のもと、医療関連産業を成長産業ととらえ、「医療イノベーション5カ年戦略」等で製薬会社の保護政策を継続している。国内第4位のエーザイが開発したハラヴェンはNICEが承認しなかったにもかかわらず、日本では中医協が画期的新薬として薬価に過去最高の40%加算を認めた。このハラヴェンの審議結果報告書を見ると生存曲線が18か月時点で交差し、その後はハラヴェン群の死亡が多い。(※2)ハラヴェンの1クール(3週間)の費用は40万円近くである。武田のベクティビックスも1ヶ月60万円を超える費用がかかる。日本でも費用対効果を医療の評価に導入する検討が開始されているが批判的な意見も多い。日本の政府機関は医薬品の評価が甘ければ製薬会社の保護政策を継続しても真に実力のある製薬会社は育たないことにそろそろ気づいても良いのではないだろうか。          G.M