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MRに対する規制の厳しいフランスの医師は、米国やカナダの医師よりもバランスのとれた医薬品情報を入手できる

2011-02-25

(キーワード;MRに関する規制,販売促進活動費,医師とMRの相互作用、医薬品情報の質)
 
 BMJ電子版2010年12月3日号(BMJ2010;341c6964)は、医薬品販売促進活動の規制と公衆衛生の保護に関する会議で報告された2つの調査の内容を伝えている。

 カナダは自主規制である。米国は規制しているが監視は行き届いていない。フランスの価格統制局がMRのための実務指針に賛成したのは2004年のことである。
 米国、カナダ、フランス3国における家庭医とMRの相互作用についての調査によると、フランスのMRは、医師との面会の10回に6回は薬の有害反応についての情報を提供しているが、米国やカナダでは4回をも下回る。フランスの医師はめったに無料サンプルを提供されることはない(4%)が、カナダでは75%の医師が受け取っている。また昼食などの接待を受けるのもフランスではわずか0.2%だがカナダで23%、米国24%であった。別の研究(医師がMRから受け取る医薬品情報の質に関する調査、3国4機関255人の医師対象のアンケート調査)の中間結果によると、医師が受け取った情報の質は、57%が劣か非常に劣、32%が可、8%が良、2%が優であった。
 この調査を実施した理由は、製薬企業の経費のうち販売促進経費が最も多く、特に近年最も重点的に販売促進活動が行われていた薬剤の多く〜たとえばロシグリタゾン(インスリン抵抗性改善薬)、ロフェコキシブ(COX2阻害性消炎鎮痛薬)、シブトラミン(食欲抑制薬)などいずれも日本未発売(訳註)〜が安全性の理由から市場撤回しているからである。2004年に企業が販売促進活動費は全支出の24%、調査開発費が10%であった。また1996年から2004年までに米国の医師数は38%増加したが、医薬販売員は150%増加し、販売促進の会合は254%増加した。EBMと実際の処方行動はどんどんかけはなれたものになっていると指摘している。
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 製薬企業から贈答や接待、教育・研究に関する資金提供を受けることが、医薬品情報のバイアスを強め医師の過剰な処方行動につながっていることの指摘や提言を、本注目情報でもたびたび紹介してきた(※1〜5)。今回のBMJの記事は、MRの活動に対する制限を設けることで、提供される医薬品情報の偏りを多少でも是正できることを示している。
 リスク情報の過小評価、それによる医薬品の過剰使用が患者に無用の害をもたらすという、薬害産生の構図となっていることを直視する必要がある。販売促進活動に投じてられた多額の費用は、結局は国民医療費の33%を占める薬剤料(2009年6月)となって我々国民の負担として跳ね返る。製薬企業の販売戦略に多くの学会や患者団体、メディアが巧妙に組み込まれている現状を、製薬企業と医師との関係が相互に独立であることを出発点に、真に患者の利益のためを考えた使用に転換すべきであろう。(N)