調査・検討対象

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アクトス

1 アクトスとは

商品名 アクトス (武田薬品工業)
※2011年6月に後発品(ジェネリック)が薬価収載されている。
一般名 塩酸ピオグリタゾン(ピオグリタゾン塩酸塩)
薬効群分類 チアゾリジン誘導体、グリタゾン剤、PPAR作動剤(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体作動剤)などと呼ばれる。
効能・効果 日本の添付文書上、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)のうち、インスリン抵抗性が推定され、食事療法や運動療法のみで十分な効果が得られない場合、あるいは、それに加えて、他の経口血糖降下剤(スルホニルウレア剤など)で効果が不十分な場合、とされている。

※ チアゾリジン誘導体とは
トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロジクリタゾンなど。この他、幾つかの開発中の化合物もあるが、現在、我が国で販売されているのはピオグリタゾン(アクトス)だけ。組織のインスリンの作用を改善するということでインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれる。

2 チアゾリジン誘導体をめぐる経緯(ノスカールの項も参照)

  1. (1) イギリスおよびヨーロッパ
    99.3 MCA(イギリス医薬品庁)はトログリタゾンの再申請を却下
    00.3 欧州医薬品庁(EMEA) がロジグリタゾン(商品名Avandia)を承認。
    00.7 EMEA、欧州武田が申請したピオグリタゾン(商品名Actos)に肯定的見解表明。
  2. (2) 米国、カナダ
    99.4 FDA、アバンディアを承認。
    99.5 米国スミスクライン・ビーチャム、アバンディアの販売を開始。
    FDA、トログリタゾン(レズリン、ノスカールと同じ)の単独使用の中止および使用患者の限定と肝機能検査徹底を指示。
    99.7 FDA、アクトスを承認。 武田アメリカが8月にアクトスの販売開始。
    00.3 米国パブリックシチズン、FDAにレウリン、アバンディア、 アクトスの医薬品情報の内容改訂を求める請願書提出。
    00.3.21 トログリタゾンの販売を自主的に中止。
    00.10 カナダでアバンディアの副作用報告が166例あり、うち3例死亡 (Canadian Adverse Drug Reaction Newsletter 2000;11(3))。
    07.5.21 アバンディアのランダム化比較試験の総合解析結果、心筋梗塞を1.43倍、心血管死を1.64倍増すことを示す論文と、それに関連した論説が医学雑誌に掲載された。
    07.7.25 米FDAがアクトスに心不全の黒枠警告を要請、諮問委員会での心毒性検討も表明。同時に、FDA担当官は、「この6年間に50以上の新たなPPAR作動薬のIND申請(治験開始申請)が受理されたが、承認販売に至ったものはひとつもない」と表明。
    11.6 アクトスの膀胱癌リスクを示す疫学研究の結果を受けて、フランス及びドイツは新規患者への投与を禁止し、米国(FDA)は膀胱癌患者への使用を禁止、膀胱癌の既往症のある患者への慎重投与等を勧告し、8月には、添付文書の改訂を承認した。
  3. (3) 日本
    99.9 厚生省、アクトスを承認。 同年11月薬価収載。12月販売開始。
    00.3.22 三共、米国ワーナー・ランバートに追随して、ノスカールを自主回収。
    00.4 TIP誌が、ノスカール回収の遅いこと、アクトスは臨床用量相当量で動物に心毒性(心肥大、心筋壊死など)と骨毒性(骨量減少)が生じており、臨床試験例でも現に浮腫や心疾患を認めていることから、使用中止と製造承認取消をいち早く主張。
    00.10.5 アクトスの使用により心疾患が悪化した5症例の発表
    00.10.6 武田、厚生省の指導に基づき緊急安全性情報を出す。
    00.10 薬害オンブズパースン会議「ピオグリタゾン(商品名アクトス)について 販売中止と回収の緊急命令発動等を求める要望書」を厚生省、武田薬品工業に対して提出。
    TIP誌が再度アクトスの心毒性、臨床例おとび動物実験での膀胱癌多発から発癌の可能性を指摘。
    05.9 ヨーロッパ糖尿病学会でアクトスの2型糖尿病に対するランダム化比較試験(PROactive)の結果発表。主目標で有意の改善なし。心不全はアクトス群に有意に多く、心不全を含む全イベントはアクトス群に多い傾向。動物実験同様、膀胱癌が臨床試験で多発していた(TIP誌2006年1月)。
    11.6 膀胱癌リスクを示す疫学研究の結果を受けて、薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会での審議がなされるが、膀胱癌治療中の患者等にはアクトス等の使用を避ける(禁忌ではない)、膀胱癌のリスクについて患者に充分な説明を行う、血尿等の兆候について定期的に検査する等の添付文書の改訂は行なったものの、アクトスの使用自体については特段の規制を行なわなかった。
    アクトスの後発品(ジェネリック)が薬価収載される。

3 取り上げた経緯

検討対象としていたノスカールの突然の自主回収を受け、2000年4月、後継薬と目されるアクトスの検討を開始した。

4 何が問題なのか

  1. (1) 危険性
    1. ① 心毒性
      副作用のうち、最も頻度の高い副作用は浮腫である。循環血漿量の増加は、継続的に心臓への容量負荷を及ぼし、心肥大を引き起こす。
    2. ② 発癌性
      ラットへの2年間癌原性試験で、膀胱癌の有意な増加が報告され、ランダム化比較試験(PROactive)においてプラセボ群6人に対しアクトス群14人に膀胱癌を認めた。
      さらに、2011年に発表されたフランスの疫学研究(CNAMTS 試験)において、アクトスの膀胱癌発生リスクは非使用者と比較して、約1.2倍であり(ハザード比1.22 95%信頼区間 1.05-1.43)、総投与量・期間の増加に応じてリスクも増加することが示された。また、米国の疫学研究(KPNC 試験)においても、中間解析でアクトス等の膀胱癌発生リスクは、非使用者と比較して約 1.2倍を示し(ハザード比1.2 95%信頼区間 0.9-1.5)、全体解析では統計学的な差が認められなかったが、治療期間が長い場合にリスクが上昇する傾向が認められた。
      糖尿病薬は長期に服用する薬物であるため、発癌性は重大な問題である。
  2. (2) 有効性
    治療目的とされる合併症の予防がなされたという報告 (エビデンス)はない(長期大規模ランダム化比較試験PROactiveでは主目標で有意差なし)。心不全はアクトス群に有意に多く、心不全を含む全イベントはアクトス群に多い傾向(メーカーは有効性を主張するが心不全を除いた複合エンドポイントでの差のみを主張しているので有効との根拠はない)。
  3. (3) 必要性
    2型糖尿病の治療は、運動療法と食餌療法が第一選択。これを適切にすれば、ほとんどの高血糖状態は改善される。本剤の安易な使用で運動療法や食事療法の実施を阻害する恐れあり、不要有害。

5 基本的な行動方針

販売中止と回収、承認取消を求める。

6 具体的行動

2000年10月10日、厚生省と武田薬品工業に「ピオグリタゾン(商品名アクトス)について販売中止と回収の緊急命令発動等を求める要望書」を提出。
薬害オンブズパースン会議の検討結果を、患者および医師・医療機関に広く提供するため、大学病院に対して薬害オンブズパースン会議の検討結果を伝え、薬事委員会での本薬剤の検討、購入実態を質問した。
同年11月7日、武田薬品工業株式会社より、要望書に対する回答を受領。同年12月4日、武田薬品工業株式会社に対し、公開質問書「ピオグリタゾン(アクトス)は糖尿病治療薬としては不適です」を提出。武田薬品工業株式会社より、公開質問書に対する回答を01年1月15日受領。
さらに、膀胱癌リスクを示す疫学研究の結果をふまえ、2011年9月29日、厚生労働大臣、薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会会長、武田薬品工業他ピオグリタゾン塩酸塩製剤製造販売会社に対して、「糖尿病治療薬ピオグリタゾン塩酸塩製剤(アクトス他)の販売中止と回収を求める再要望書」を提出した。
2011年11月7日、武田薬品工業株式会社より、上記再要望書に対する回答を受領。有効性については、同社が実施した前記PROactive試験において、「7つの異なるアウトカムを含む主要評価項目についてピオグリタゾン群と対照群を比較すると、統計的有意差が認められなかった」という重大な結果を認めたにもかかわらず、有効性ありと結論づけ、危険性については、膀胱がん及び心不全のリスクを不当に軽視するものであった。

7 今後の課題

アクトスその他のピアグリタゾン塩酸塩製剤に関する諸外国における議論に引き続き注目しつつ、販売中止と回収を求めて活動を続けていく必要がある。