閉じる

 ノスカール(トログリタゾン)は主に肝臓が問題になりましたが、心臓の毒性も相当ありました。だからノスカールが2000年2月に中止になった時、その代わりになる同じ系統の物質アクトス(塩酸ピオグリタゾン)で最も心配になったのは心臓への影響でした。4月に私たちが検討した結果、動物で心臓に毒性が現れる量でしか血糖値を下げず、ヒトでも臨床試験でむくみや心不全、心筋梗塞などが報告されていました。当然心筋梗塞など他の心臓病が増加すると予測できましたので、中止すべきと判断していたものです。案の定、発売後に心不全を起こした例が5人厚生省に報告されたため、厚生省は10月5日、浮腫が生じたら中止し、心不全患者への使用を禁止する措置をとりました。
 しかし、心筋梗塞や狭心症、心筋症、高血圧性心疾患のある患者には慎重にというだけで、極めて不十分な内容でした。
 しかし、人でも血糖値を下げる量を長期に使用すれば、心臓への悪影響は避けがたいと考えられますので、10月6日、EBMビジランス研究所では使用、販売を緊急に中止し、製造も中止すべきとの要望書をまとめ厚生大臣と武田薬品に提出しました。
 10月8日の薬害オンブズパースン会議ではこれまでの議論と今回の心不全患者の報告、※参考文献等を詳細に検討した結果、アクトスは重大な心毒性があり、発がん性も否定できないこと、さらにこれにより血糖値を下げることで、運動療法、食事療法の追求が充分になされないおそれがあり、糖尿病治療薬としての有効性・必要性について疑問がある、したがって患者が受ける利益と危険性を比較考慮した結果、本薬剤の販売を速やかに中止し、回収すべきであるとの結論に達しました。
 そこで、以下のような内容の要望事項をまとめ、10月10日、厚生大臣および武田薬品工業株式会社に対して提出しました(同日、医薬品・治療研究会およびNPO医薬ビジランスセンターでも同趣旨の要望書を提出した)。

要望の内容
1. 厚生省に対して、武田薬品工業が製造販売するアクトスの販売中止と回収を内容とする緊急命令を発動するよう求めます。
2. 武田薬品工業に対し、貴社が製造販売するアクトスの販売中止と回収を求めます。

 厚生省も武田薬品工業でも、先に出した安全対策で様子をみるとの返事であり、中止する姿勢は全く見られません。この物質はいずれは必ず中止になるはずの物質ですから、早急な中止の措置が必要です。
 糖尿病の患者の皆さんは決して使用しないように、現在服用している人は、いつ 中止しても何ら問題はないので中止されることをお勧めします。

※参考文献
1) 浜六郎「遅すぎたトログリタゾン(ノスカール)の回収──ピオグリタゾン(アクトスはさらに危険と考えるべき──」TIP誌2000年4月号
2) 浜六郎「ピオグリタゾン(アクトス)は中止を!!心不全より危険な心筋梗塞も起こす」TIP誌2000年10月号

閉じる