閉じる

●心毒性

 アクトス(ピオグリタゾン塩酸塩製剤)は、武田薬品工業が開発した糖尿病薬である。1999年12月から日本で販売された。

 承認前の動物実験で心毒性が示され、臨床試験でも、むくみや心不全、心筋梗塞などが報告され、医薬品・治療研究会はいち早く販売中止等を求めていたが、発売後の2000年10月には5人の心不全の報告があり、当時の厚生省は、浮腫が生じたら中止すること、心不全患者への使用を禁止することなどの措置をとった。

 しかし、この措置では不十分であったので、薬害オンブズパースン会議は同年10月10日、販売中止と回収の緊急命令発動等を求める要望書を厚生省、武田薬品工業に対して提出した。

 また、危険性を広く知らせるため、大学病院に対して当会議の検討結果を伝え、薬事委員会での本薬剤の検討、購入実態を尋ねるアンケートを実施し、2000年12月には、武田薬品工業株式会社からの回答を踏まえた公開反論書を提出した。

●発がん性

 その後、アクトスには、発がん性も問題となった。2011年、米国とフランスの疫学研究によって、アクトスが膀胱がんのリスクを増加させることが報告されたのである。

 この報告に基づき、フランスとドイツは、新規患者投与禁止措置をとり、欧州医薬品庁(EMA)と米国FDAは、新規患者投与禁止とはせず、添付文書改訂により膀胱がん患者への使用を禁じる等の措置をとった。

 これに対し、日本の厚生労働省は、膀胱がん治療中の患者等にはアクトスの使用を避けること等の添付文書改訂を指示するにとどまり、新規患者への投与禁止も、膀胱がん患者への投与を禁忌とすることもしなかった。

 そもそも、糖尿病治療の最終的な目的は、心筋梗塞や脳卒中などを抑制し合併症を減少させることであり、アクトスが有効性の指標としていた血糖値は、代理の指標に過ぎない。アクトスの合併症の減少効果は証明されておらず、アクトスの心毒性や発がん性などのリスクを上回るベネフィットが見いだせない。

 しかし、対応を協議した安全対策調査会においては、武田薬品工業との間に看過できない利益相反関係がある参考人の見解を聞き、有効性の限界を踏まえたリスク・ベネフィットに関する評価は全く行われなかった。

 そこで、薬害オンブズパースン会議は、2011年9月、厚生労働省、武田薬品工業、および後発品の製造販売企業他に対し、改めてアクトスとその後発品の販売中止を求める要望書を提出した。

●他の糖尿病治療薬に関する活動

 同じような機序をもつ一群の薬剤に、糖尿病治療薬であるノスカールがある。これは肝機能障害が問題となり、当会議が公開質問書を送っていたが、アクトスが承認された4ヶ月後の2000年3月に自主回収されている。

 薬害オンブズパースン会議は、ノスカール、アクトスの後、糖尿病治療薬としては、インクレチン関連薬(DPP―4阻害薬)の問題に取り組み、さらに注目情報で糖尿病治療薬の評価をめぐる問題を紹介していくことになる。

閉じる