調査・検討対象

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マイロターグ

1 マイロターグとは

一般名 ゲムツズマブオゾガマイシン(遺伝子組換え)
商品名 マイロターグ注射用5mg 薬価収載 2005年9月
企業名 ファイザー株式会社(旧ワイス株式会社)
適応症 再発又は難治性のCD33陽性の急性骨髄性白血病(AML)
特徴 ヒト化抗CD33モノクローナル抗体(ゲムツズマブ)に、細胞傷害性抗がん剤カリケアマイシン誘導体を結合した抗体医薬である。抗がん剤を運搬役の抗体の力を借りて白血病細胞に送り込もうとするもので、分子標的薬と呼ばれている。わが国では、本剤単独で用いる治療薬として承認され、販売開始から2010年6月までに約3,000名の患者に使用されてきた。

2 取り上げた経緯

マイロターグは、2010年10月の米国での承認取り下げ以降、他国でも同様の動きがあり、本剤を承認した10か国のうち、現在も薬事承認があるのはわが国のみとなっている。
そこで、本剤の有効性・安全性、及びわが国の対応の問題点を検討することとした。

3 何が問題か

  1. (1) 海外における取扱い
    米国では、「細胞傷害性化学療法の適応とならない60歳以上の初回再発CD33抗原陽性のAML患者」に対し、単剤で用いる治療薬として、2000年5月に迅速承認された。
    その後、製造販売後の臨床試験で、未治療のCD33抗原陽性のAML患者を対象として、標準的な寛解導入療法に本剤を併用した群及び地固め療法後に本剤を追加投与した群の試験を実施したが、2009年12月に、臨床的有用性が示されないとする試験結果が公表され、米ファイザー社は本剤の承認を取り下げて、2010年10月に販売を中止した。
    また、欧州では、EMA(欧州医薬品庁)に承認申請が行われたが、臨床的有用性は確立されていないと評価され、承認には至っていない。
  2. (2) 基礎薬理における問題点
    単体で製剤に混入しているカリケアマイシンが全体の約1割にものぼる等、製剤そのものの問題がある。また、CD33抗原を発現していない細胞への非特異的取り込みによる細胞毒性の発現や、白血病細胞以外のCD33抗原を発現している正常細胞に対する作用の発現が認められる。
  3. (3) わが国における承認までの経緯
    1. ア 承認の経緯
      2005年7月、他の再寛解導入療法の適応とならない症例に対しては、臨床試験で完全寛解となった例が確認されており、臨床的位置付けは認められるとして、輸入承認された。ただし、国内での臨床試験の症例数が20例と極めて限られており、国内外の臨床試験において肝機能障害等の重篤な副作用の発生が認められていることから、販売開始後、全症例を登録した全例調査を実施することが承認条件とされた。
    2. イ 臨床試験の結果
      国内義20例(響20例は参考資料)、海外318例(義41例、響277例)
      1. (ア) 有効性
        完全寛解率(海外:義4.8%、響12.6%、国内:義18.2%、響25%)
        奏効率(海外:響26%、国内:義18.2%、響30%)
      2. (イ) 安全性
        臨床試験(第義蝓β茘響蝓338例中306例(90.5%)で被験者が死亡。主な死亡原因は、肺出血、脳内出血、敗血症、肺炎等の副作用及び原疾患の悪化。
        国内試験の対象症例40例のうち、本剤との関連性が否定できない死亡例は2例(治療関連死亡率5%)。
  4. (4) 全例調査
    1. ア 全例調査の結果(期間:2005年9月22日〜2009年12月14日、登録症例:852例)
      1. (ア) 有効性:評価対象症例528例(承認時:国内義20例)
        完全寛解率9.8%(承認時25.0%)、奏効率18.0%(承認時30.0%)
      2. (イ) 安全性:評価対象症例753例(転院のため生存確認不能の101例を除く)
        治療関連死亡率9.8%(承認時5.0%)
        Grade3以上のVOD例33例(承認時0例)、発現率4.38%
    2. イ PMDAの結論
      以上の結果をふまえ、PMDAは、他の再寛解導入療法の適応とならない患者においては、本剤の単独投与時の臨床的有用性は承認時と変わるものではないとした。
  5. (5) 販売継続と症例登録事業の開始
    マイロターグは、承認時の臨床試験では有効性は確認されておらず、他方で、重篤な副作用が多数発生していることからすると、有効性と安全性のバランスを失しており、承認を与えるレベルに達していなかったと考えられる。さらに、全例調査では、完全寛解率及び奏効率ともに承認時より低値となる一方で、重篤な副作用の発現率及び治療関連死亡率がいずれも承認時より高率となっており、有効性と安全性のバランスを欠いていることが改めて確認されたと言わざるをえない。
    ところが、厚生労働省は、全例調査の結果を受けて、適正使用のための措置を講ずるよう学会に対する指示等を行ったものの、販売継続を容認している。
    そして、この指示を受けて、2011年8月、日本血液学会及び日本臨床腫瘍学会によるマイロターグ症例登録事業が開始された。

4 基本的な行動指針

マイロターグについて現在の承認を維持するのであれば、このような高いリスクを冒してもなお利益が期待される患者とは一体どのような患者か、その具体的条件を明らかにすべきである。そのためには、臨床試験あるいはそれに準じた研究計画に基づくデータ収集と分析を行う必要がある。学会による症例登録事業がそのような患者群の特定につながるものとなるようはたらきかけていく。

5 具体的行動

2011年10月、学会に対して症例登録事業の内容を問い合わせる質問書を送付したところ、日本臨床腫瘍学会からは全く返答がなかった。他方、日本血液学会からは、2012年4月に、情報の公表のされ方が不明である等の理由から回答を差し控えるとの連絡があったため、公表方法を明示した上で改めて回答を求めたが、結局、回答は得られていない。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2011-10-27
白血病治療薬「マイロターグ」に関する公開質問書送付