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 マイロターグは急性骨髄性白血病の治療薬です。一般名は「ゲムツズマブオゾガマイシン(遺伝子組換え)」で、
ファイザー株式会社が製造販売しています。
 ヒト化抗CD33モノクローナル抗体(ゲムツズマブ)に、細胞傷害性抗がん剤カリケアマイシン誘導体を結合した抗体医薬で、抗がん剤を、運搬役の抗体の力を借りて白血病細胞に送り込もうとするものです。分子標的薬と呼ばれています。
 マイロターグは、2000年5月に米国で迅速承認された後、2010年6月までに、アルゼンチン等9か国でも承認されました。しかし製造販売後の臨床試験で臨床的有用性が示されないとする結果が得られたことから、米国では2010年10月にメーカーが承認を取り下げ、販売を中止しました。これを受けて、他国でも同様の動きがあり、本剤を承認した米国を含む10か国のうち、現在も薬事承認があるのはわが国のみとなっています。
 マイロターグは、承認時の情報及び市販後の全例調査結果からは、その有効性に比して副作用の危険性が極めて高く、有効性と安全性のバランスを失した薬剤であると言わざるを得ません。ところが、厚生労働省は、全例調査の結果を受けて、適正使用のための措置を講ずるよう学会に対する指示等を行ったものの、販売継続を容認しています。
 このようななか、厚生労働省からの指示を受けて、本年8月、日本血液学会及び日本臨床腫瘍学会によるマイロターグ症例登録事業が開始されました。
 しかし、その事業内容の詳細は公開されておらず、明らかではありませんので、当会議は、本年10月、両学会あてに、「急性骨髄性白血病治療薬マイロターグに関する公開質問書」を送付して問い合わせることにしました。この質問書は、症例登録事業では、臨床試験に求められるような厳密な患者選択、副作用チェック体制の整備、及び効果判定を目的とした症例追跡等を行うことを計画しているか否か等を主な内容としています。
 マイロターグについて、一部の患者にとっては一定程度の有効性が期待される可能性があるとして現在の承認を維持するのであれば、高いリスクを冒してもなお利益が期待される患者とは一体どのような患者か、その具体的条件を明らかにしてゆく必要があります。そのためには、臨床試験あるいはそれに準じた研究計画に基づいたデータ収集と分析を行わなければなりません。どのような場合にリスクが高く、どのような場合に有効性が期待できるのか、患者群を特定することこそ、本来の適正使用につながるものと考えます。
 質問書に対する学会からの回答が得られたら、症例登録事業がそのような患者群の特定につながるものか否かを慎重に検討したいと思います。

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