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米国のRTT(未承認薬を試す権利)法が成立、しかしその影響は限定的か

2018-07-23

(キーワード: 米国RTT連邦法成立、未承認薬アクセス、FDA拡大アクセスプログラム)

 米国のRTT(未承認薬を試す権利)法は、第義蠅鮟えた未承認薬を患者・医師・製薬企業が合意すれば、監督官庁であるFDA(食品医薬品庁)を抜きにして販売してよいとする法律である。患者が自己責任で使用し、事故があっても誰も責任を問われず、訴訟に訴えることもできない規定となっている。患者の安全を脅かすとともに医薬品の販売承認制度を突き崩す可能性があるとして、医薬品監視団体パブリックシティズン他多くの他の消費者団体、患者団体、医師団体などが強く反対していた。しかし2017年8月上院を通過し(※1)下院に送られていた。

 米国下院は2018年5月22日、100を超える患者団体が議会にRTT法反対の書簡を送る中で、法案を250対169の票差で可決した。反対は民主党議員の一部であった。ホワイトハウスに送られた法案に、5月30日トランプ大統領が署名、RTT法案が成立した。

 米国ではRTT法と、従来のFDA拡大アクセスプログラム (他に治療手段がなく臨床試験にも参加できない患者に未承認薬へのアクセスを例外的に可能とするコンパッショネートユースとも呼ばれる制度)が当面共存することになる。

 米国の薬事行政の動きに詳しいインフォーマ社のピンクシート誌が,RTT法成立後の現地の状況とその分析を伝えているのでそのあらましを紹介する。
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 RTT法成立後、FDAは当面患者から質問があれば製薬企業に取り次ぐ対処のみをするよう職員に伝えた(2018年5月30日)。

 大統領との関係で板挟みのFDAのGottlieb長官は、「RTT法実装の取り組みを急ぐため、FDA組織横断のワーキンググループを作りQ&Aやガイダンスの作成を検討しており、それには時間がかかる」と表明した。これに対してRTT法案提案者のRon Johnson 上院議員が、「われわれはFDAに関与するなと撤退を求めているのであり、ガイダンスを作ることなどを求めていない」と怒りをあらわにした(6月13日)。

 法案の提案者たちは、法案が成立すればこれに呼応して動く製薬企業があると語っていたが、いまのところ具体的な動きはない。そうした中で、希少疾患を開発する2つのバイオテクノロジー企業のCEO(最高経営責任者)が「われわれはRTT法のもとで未承認薬を提供することはない」と表明した(6月13日の別の記事)。

 また、多くの製薬企業がRTT法からしり込みしている状況の中で、Woodcock FDA医薬品審査調査センター(CDER)長は、「RTT法のもとで未承認薬を提供するかの判断は製薬企業に任せる」と語った(6月28日)。
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 RTT法が2018年5月30日に成立した後、ランセット誌は6月9日、「RTT法に伴う誤った期待」のタイトルの無署名論説を掲載した。他の医学雑誌などはRTT法成立後の米国の状況などを伝えていないが、米国薬事行政の動きに詳しいピンクシート誌のこれらの報道と分析を読むと今後も楽観はできないが、幸いなことに現在のところ米国におけるRTT法成立の悪影響は限定的のようである。

 医薬品の有効性安全性をしっかりと確認して医薬品を承認する堅実さを崩そうという動きが国際的に強まっており、日本もその例外ではない。 一層の警戒が必要である。  (T)

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