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禁煙補助剤バレニクリン(チャンピックス)が心臓に害作用

2011-10-20

(キーワード:禁煙補助剤、チャンピックス、バレニクリン、心血管障害)
 チャンピックス(一般名:バレニクリン酒石酸塩)は、現在、経口用の禁煙補助剤として広く使用されており、有名タレントによるテレビCMやたばこ税の値上げをきっかけに需要が急拡大し欠品さわぎを起こしたことは記憶に新しいところである。当会議ではチャンピックスについて、発売当初から精神神経障害等の問題について取り上げてきており、添付文書改訂等の要望書も提出している。(※1、※2、※3)今回取り上げるのはチャンピックスの心血管障害の問題である。以下はBMJニュース(BMJ2011 343 d4428)
の一部を要約したものである。

 新たなメタアナリシスデータが、バレニクリンが心臓問題のリスクを増大させることを示した。ジョンズホプキンス大学のSonal Singhとイーストアングリア大学のYoon Loke
が14試験の結果を結合させ、カナダ医師会誌(CMAJ)に発表した。これに対してチャンピックスの製造会社であるファイザー社は、「非常に少ないイベントにもとづいている」と異を唱えている。また、メタアナリシスでは4908人のバレニクリン服用者で52のイベント、3308人のプラセボ服用者で27のイベントの出現をみたが、これらのデータからオッズ比は1.3であるとされた。しかし、出現サイズが小さい場合に適したPeto法で計算するとオッズ比は1.7(95%信頼区間1.1-2.7)になる。著者たちは、「重大な心血管障害の出現率は1%と低いが、健康な人で発生しているのは重要であり、致命的な病気である。 特に、愛煙家はすでに心血管疾患にかかりやすいのであり、どのようなリスク増加でも避けられるべきである。」と述べている。2006年以来、バレニクリンは年間約800万ドルの売上をファイザー社にもたらしている。しかし、自殺念慮等の報告で2009年にFDAは精神神経障害について警告した。さらに、FDAは先月(2011年6月)、バレニクリンの心血管障害の可能性について告知した。(※4)

 2011年7月、日本でチャンピックスの添付文書の改訂が行われた。重大な副作用の欄に、意識障害(意識消失)に関する記載が追加され、自動車事故の報告もあり、自動車等の運転をさせないように注意するというものである。これは、日本で発売される前から米国で報告されていた問題であり、2009年の当会議の要望書(※2)でも指摘している。今回の心血管障害に関するリスク情報を厚労省(PMDA)がどのように扱うか注目したい。(G.M)