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FDAが禁煙補助剤チャンピックスに枠組み警告の追加と安全性に関する市販後比較臨床試験を指示

2009-10-23

(キーワード:禁煙補助剤、チャンピックス、バレニクリン、市販後臨床試験、FDA)


 2009 年7 月1 日にFDAが禁煙補助薬のバレニクリン(米国商品名チャンティックス、日本の商品名はチャンピックス)とbupropion(Zyban、日本未発売で抗うつ薬の効能も持つ)の製造業者 に対し、添付文書に米国で最も重大な警告である「枠組み警告」を追加するよう要求した。以下はFDA NEWS RELEASE(※1)の一部を要約したものである。
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 枠組み警告では、これらの薬剤の服用時における重篤な精神系有害事象(行動の変化、抑うつ気分、敵意、自殺念慮など)のリスクが強調された。FDA による枠組み警告追加の要求は、これらの薬剤の市販後にFDA のAERS(有害事象報告システム)に提出された報告のレビュー、および臨床試験や文献から得た情報の解析にもとづいている。解析の結果、チャンティックスやZybanの服用時に行動の異常な変化を報告した患者、うつ病が初発または悪化した患者、自殺念慮や希死念慮が現れた患者がいたことが明らかになった。症例の多くでこれらの症状は服用開始後短時間で現れ、服用を中止すると回復したが、一部の患者では、服用中止後も症状が続いていた。また、数症例では服用中止後に症状が現れた。これらの症状の一部はニコチン離脱に対する反応とも考えられたが、これらの薬剤を服用していた患者の一部では、まだ喫煙を続けていた時に上記の有害事象が起きた。枠組み警告に加え、FDA は添付文書の「警告」の項への情報追加と,Medication Guide(患者向け医薬品ガイド)の情報更新も要求している。さらにFDAはFDA再生法(FDAAA)で得た権限に基づき、精神神経系異常が現在ある患者を含む様々な禁煙療法中の患者での重篤な精神神経系副作用の頻度などを明らかにする市販後比較臨床試験を行うよう指示した。
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 薬害オンブズパースン会議は2009年7月6日付で厚生労働省医薬食品局安全対策課へ『「禁煙補助剤「チャンピックス」の安全対策に関する要望書』(※2)を提出した。(ファイザー株式会社にも郵送で提出) 厚労省は8月7日チャンピックスの添付文書の改訂を指示し、重篤な精神系有害事象リスクが日本の添付文書で最も重大な「警告」欄に赤字で記載された。(※3)
 日本の添付文書改訂はFDAの対応を意識したものと考えられるが、警告欄に記載された文章は「禁煙は治療の有無を問わず様々な症状を伴うことが報告されており、基礎疾患として有している精神疾患の悪化を伴うことがある。本剤との因果関係は明らかではないが、抑うつ気分、不安、・・・・・」ではじまり、要望書で指摘している「禁煙によって起こったと思わせるような現在の添付文書の不適切な記載」がよりによって警告欄に記載されている。米国の枠組み警告の記載(※4)とは異なっており、米国と日本でダブルスタンダードの状況にあると言わざるを得ない。 
 尚、FDAは上記の指示と相前後して市販後研究・臨床試験についての企業向けのガイダンス(※5)を発表した。ガイダンスはこれまではFDAが一括して扱っていた「市販後研究」と「市販後臨床試験」を区別して定義しているのが特徴である。これによれば今回チャンティックスで指示された「臨床試験」(Clinical Trials)とは、医薬品または他の介入を被験者に割り付ける前向きの臨床試験を指している。一方「研究」(Studies)とは臨床試験以外のすべての試験を言い、観察的疫学研究・動物試験・試験管内の試験などが含まれる。
 この点については、注目情報「FDA企業に義務付ける市販後大規模安全性評価臨床試験デザインの精査を諮問委員会に依頼」(※6)を参考にされたい。 (G.M)