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全米で製薬企業による医師への支払いの情報公開を義務化

2010-06-28

(キーワード: 製薬企業、医師への支払い、情報公開、米国連邦法、サンシャイン条項)

 米国において、製薬企業の医師への支払いを「太陽の光のもとで明らかにしよう」という意味で「サンシャイン法」と名付けられた連邦法案が、はじめて超党派議員により議会に提出されたのは2007年のことである(※1)。このときは法律にならなかったが、「サンシャイン法」は2009年ふたたび議会に提出された(※2)。この法案が、2010年3月に議会を通過しオバマ大統領が署名したヘルスケア改革法のサンシャイン条項として成立、実施へと向かうことになり、これまでの医師と製薬企業との関係にも大きな影響をもたらすことが予想されている。
 以下はピンクシート誌2010年4月26日記事の要約である。
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 医師への支払いサンシャイン法として知られる全米の製薬企業による医師や研修病院への支払いについての情報公開義務化が、議会を通過しオバマ大統領が署名したヘルスケア改革法の成立により、そのサンシャイン条項のもとで2013年から実施される。製薬企業や医療機器企業は医師や研修病院に対する10ドル(約1000円)以上の支払いを市民が見ることのできるデータベースに公開せねばならない。これは企業の大小にかかわらず適用される。
 ファイザー社など自社のウェブサイトで一定の公開をしてきた企業もこの法案の成立によりウェブサイトの見直しなど対応が必要となるだろう。これまで販売促進などで法を侵す行為があり、その償いとして企業の法令順守に関する協定(corporate integrity agreement: CIA)を結んで、その中で医師への支払い公開プログラムの一時実施を義務付けられてきたファイザーなどの企業も、まもなくこの条項によって恒常的に実施しなければならないことになる。これまでの企業の医師との関係の見直しも必須となるであろう。
 このサンシャイン条項は上院のコール議員(民主党)とグラスリー議員(共和党)が粘り強く法制化を目指していたものである。グラスリー議員が共和党の強い方針でヘルスケア改革法案に反対票を投じたのは皮肉なことであったが。
 連邦レベルでの医師支払い情報公開法が成立することで、連邦法での規定が各州で定められた同様の法律の規定に優先すること(Pre-Emptionといわれる)を期待した企業にとって大きな打撃だったのは、Pre-Emptionが適用されないと決まったことである。バーモント、マサチューセッツ、ミネソタの各州はすでに独自の医師支払い情報公開法をもっている。
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 米国の連邦法で、2013年には製薬企業や医療機器企業が医師や研修病院に対する10ドル(約1000円)以上のすべての支払いを市民が見ることのできるデータベースに公開せねばならないと定められた意義は、ピンクシート誌がふれているように、これまでの製薬企業と医師との関係に大きな影響をもたらす可能性がある。国際化が進むなかで、日本での今後の対応が注目される。 (T)