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2型糖尿病薬には深刻な長期合併症を改善するという証拠がない

2010-04-07

(キーワード:2型糖尿病、長期合併症、心血管リスク、Worst Pills Best Pills)

 2型糖尿病の治療薬が次々と承認されている(訳注1)。米国パブリックシチズンは患者・市民にあらためて注意を喚起するためにWorst Pills Best Pillsニュースレター2月号に、その評価を掲載している(訳注2)。以下に紹介する(評価リストは関連資料に示したが(※1)、日本で承認、使用されている薬を参考のために追加してある)。

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 現在FDA(食品医薬品局)で承認されている2型糖尿病薬は、薬理学的分類9項目に属する16品目であるが(訳註1)、これらは血糖値とヘモグロビンA1c値を改善させるという評価で、承認されている。しかし糖尿病の大きな危険性は長期にわたる合併症で、心疾患、脳梗塞、末梢血管障害などであるが、市場にあるいずれの2型糖尿病薬にもこれらのリスクを減らすという証拠はない。
 我々は、FDAは承認の条件として、新薬には長期の合併リスクを減らすという証拠を要求すべきと考える。FDAは企業に対して、これらの薬が、受け入れがたい心臓リスクがないことを示すよう求め始めたが、市場に出る前に試験が完了することを要求してはいないし、これには別の問題が出てくる(訳注3)。

 誤った信じ込み:患者も医師もまったく同じように、血糖値を下げることは2型糖尿病をコントロールしていることを意味すると思っており、回り回って、この病の破壊的とも言える合併症への進展のリスクが減ると考えている。しかし、その証拠はない。

 あなたに出来ることは:新たに2型糖尿病と診断された人は薬で治療を始める前に、食事の改善と運動を増やすことをやってみるべきです。また、すでに2型糖尿病の患者である人にとっても、食事の改善と運動は状態をコントロールする助けとなります。
 
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 この注目情報でもたびたび、2型糖尿病薬の問題を取り上げている(※2)。糖尿病薬を用いて血糖値を下げる強化療法が、標準治療に比べて死亡率が高くなったとして長期大型臨床試験が3年半で中止になったというショッキングな報告は記憶に新しい(NEJM誌2008.6(※3))。ニュースレターでは、食事の改善、減量、運動を推奨しており、“世の中でこれらが積極的に強力に推進されないのは、これで利益を得るのが、あなた一人だけだからかもしれません”と皮肉っている。  (S.T)


訳注1)2型糖尿病はインスリンの量が少ないか、量があってもインスリン抵抗性で組織に糖が取込まれにくい状態。日本人の糖尿病患者の90%は2型と言われている。1型は遺伝的因子と環境因子の相互作用で膵臓β細胞が破壊されて起るとされている

訳注2)Worst Pills & Best Pillsニュースレターは、月一回(on line 版)出される。Worst Pills & Best Pills が評価している薬は、現在売られているトップセールス薬品600品目以上におよび、広い視野で信頼できる情報を提供、このうち204品目は“使用しないこと”を推奨している。有害な薬に対して代替薬の推奨もしている(※4)。

訳注3)FDAは2008年12月企業に向けて、「2型糖尿病薬の心血管リスクの評価に関する指針」を出している(※5)。現状の2型糖尿病薬がかかえる心血管リスクの大きさを懸念して、開発段階で十分に取り組むべき課題であるとして、臨床試験の計画段階で行うべき事項と臨床試験終了後のデータの分析法について具体的に述べている。これについて、 パブリックシチズンは、“この指針によって、ある薬が容認できないようなリスクを持っていると決めるようになるのか”(リスクをもたない薬と決めてしまうのか)等の疑問を呈している。