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グラクソは、パキシルの販売促進のために“ゴーストライティング”プログラムを使用

2009-10-23

(キーワード:グラクソ、パキシル、ゴーストライター)

 Philadelphia Inquirer 紙2009年8月20日(Online版)※1)の記事である。企業内部で「ゴーストライティングプログラム」が作られ※2)、組織的に医学雑誌向けにパキシル販売促進のための学術論文が作成されていたようだ。 外部の業者を雇って自社製品を推奨するような論文の原稿を作らせ、医師には署名だけさせるという方法である。以下に紹介する。
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 Associated Pressが手に入れた裁判記録によると、製薬会社グラクソスミスクライン(GSK)は抗うつ薬パキシルの販売促進のために、企業コンサルタントが大部分を仕上げた医学論文を医師に信頼させるように、巧妙な「ゴーストライティングプログラム」を使用していた。
 グラクソはフィラデルフィアが主な活動場所である。
 企業の内部文書では、セールスパーソンは医師にアプローチして処方薬が良好な結果を示した経験について論文作成(症例報告)の援助を申しでるようにと、指示している。“トピックをどのように展開し”、“どのように論文を仕上げて投稿するのか”に至るまで、グラクソがあらゆる援助をすることが書かれている。
 この記録は、ロスアンジェルスのBraum Hedlund法律事務所によって明らかにされたが、この事務所はパキシルによる傷害や死亡の裁判で数百人の代理人になっている。ロンドンに本社のあるグラクソのスポークスウーマンは、論文の主著者へのいかなる支援をも(論文に)記したと述べ、「プログラムをそのまま利用したわけでわなく、プログラムは数年前に中止した」と述べた。
 パキシルはパテントが切れて安価なジェネリック品と競り合っているが、昨年の売り上げは、8億5千万ドル(約850億円)である。
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 このようなプログラムで論文を作成する医師たちは,、「背信の科学者たち(Betrayers of Truth)」の部類といえないだろうか(訳注1)。 企業のこういった作戦の成功によって作られてきた臨床現場のパキシルについての見解は、実際のエビデンスにもとずいたリスクと便益のバランス評価とは、乖離しているという(訳註)。(ST)


訳注1)「背信の科学者たち(Betrayers of Truth)」は1982年米国で出版され邦訳は1988年(化学同人)。サイエンス誌の科学ジャーナリストとニューヨークタイムスの論説委員の二人が著者。データ捏造や剽窃など、実際にあった科学の不正についてその病理をさぐった名著である。権威ある科学者にかぎって、この事実を特殊なことだとかたずける傾向にある。

訳注2)D.Healy 「妊娠中における抗うつ剤の安全性:とくにパキシルについて」
   正しい治療と薬の情報」Vol,2493-102: Aug/Sep2009