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EU当局は喘息患者をリスクに直面させている。そして日本でも・・

2008-06-20

(キーワード;シンビコート、喘息治療配合剤、治療の混乱、リスクの増大)

プレスクリール・インターナショナル2008年4月号に、「EUが、喘息治療配合剤シンビコート(アストラゼネカ社)を急性発作と維持療法に承認したことで、喘息患者を深刻なリスクに直面させている」と非難する記事が掲載された。シンビコートは、副腎皮質ステロイドであるブデソニド(日本での商品名パルミコート)と長時間作用型の交感神経β2刺激剤であるフォルモテロール(日本での商品名アトック、内服剤のみで吸入剤としては発売されていない)の配合剤である。以下に要旨を紹介する(※1)。
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−承認すべきでない−
ブデソニド+フォルモテロール配合剤を維持療法と急性発作時使用の両方に用いても、維持療法を強化するにすぎず、妥当な治療とは言えない。喘息患者を混乱させるだけである。
喘息の維持療法は低用量のステロイド吸入単独が基本であり、発作時には速効性があって副作用の少ない高用量短時間作用型β2刺激剤を吸入することが基本である。長時間作用型β2刺激吸入剤を追加する明らかな臨床的有用性は証明されていない。
急性発作時使用の根拠となった臨床試験データは、維持療法、急性発作時ともブデソニド+フォルモテロールをのみを使用したグループで喘息コントロールの改善が見られたことだが、維持療法強化なのだから当然だろう。一方、他の群と大きな違いはなかったもの、薬剤使用量の増加で副作用のリスクは高まる。長時間作用型β2刺激剤の蓄積による、心機能障害や、入院、生命を脅かす喘息発作のリスクが増大する危険がある。長時間作用型β2刺激剤(サルメテロール)に関連した喘息悪化が、ステロイド併用時においてさえもおこることが報告されている。さらに吸入ステロイド(ブデソニドを含む)による副腎不全の危険が増大する。
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日本では、同じくステロイド剤と長時間作用型β2刺激剤を配合した吸入剤の「アドエア」が2007年6月に承認された。当会議は、アドエア(セレベントとフルタイドの配合剤。申請時薬品名はセレタイド、過誤防止の観点から名称変更)は、危険な薬剤であり、承認しないよう厚生労働省に要望した(※2)が、当初の適応を大幅に限定した形ではあったが承認された(小児への適応取り下げ、重症度等から慎重かつ適切に選択すべき薬剤との臨床的位置付けを記載)。シンビコートは、日本での第3相試験を終了し、12歳以上の喘息に申請中である。当会議では1997年の発足時にベロテックエロゾル(フェノテロール)危険性について取り上げたが、その教訓(※3)が生かされるべきである。(N)

※1 Prescriere International April 2008