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DTCA(医療用医薬品の患者・市民への直接広告)が米国でもたらしたもの

2006-06-13

(キーワード: DTCA、ニュージーランド政府パブリックコメント、米国パブリック・シティズン意見提出)

 世界で医療用医薬品(処方せん薬)の患者・市民への直接広告(DTCA)を認めている2か国の1つであるニュージーランドが、同国の今後の施策について、2006年4月28日を期限としてパブリック・コメントを一般募集した。パブリック・コメントとは、行政機関が政策の立案などを行う際に、関連した資料とともに案を公表して広く意見を求め、提出された意見などを考慮して最終的な意思決定を行うシステムである。薬害オンブズパースン会議も、今後の日本でのあり方にも影響する問題として意見を提出し、同国が今後の施策の選択肢(オプション)としてあげた中から、DTCA(医療用医薬品の患者・市民への直接広告)を禁止し「疾病啓発広告」を規制するオプション3への支持を表明した(※1、日本語訳も掲載)。
 ここでは、世界でDTCAが認められているもうひとつの国である米国から、医薬品監視活動を推進しているパブリック・シティズン(会員数10万名)が、米国での経験を踏まえて提言した意見書(※2)の内容を紹介する。米国型の規制緩和が押し進められようとしている日本にとって、米国の経験を深く知る意義は大きい。以下は副代表のピーター・ルーリー医師名で出された同意見書の要旨である。

よく知られているように、DTCAが容認されているのは米国とニュージーラン
  ドの2か国のみである。米国では、商業的な言論について制限を加えないとい
  う法解釈と、最高裁の現今の判断状況から、DTCAの禁止は極めて困難な状況
  にある。われわれは、ニュージーランドがDTCAの地位について再考察すると
  いうことを聞いて非常に喜んでいる。ニュージーランド保健省は、その第3の
  選択肢としてDTCAの禁止をあげており、ニュージーランドでは法的にDTCA
  の禁止が可能と判断される。私はあなた方が米国でのマイナスの経験に学び、
  3番目の選択肢であるDTCAの禁止をされるよう、強くお勧めしたい。

  何事も、その利益とリスクのバランスを考慮する必要があることは当然だが、
  DTCAの場合、明確に証明された不利益がいまだ証明されていない利益を圧倒
  している。欧州連合はDTCAの容認を考慮したが、採択を拒否した。

  予想されたことだが、製薬企業がDTCAに力をいれる医薬品は、厄介で治癒す
  ることのない病状に対する新しい高価な医薬品ばかりであった。ジェネリック
医薬品(後発医薬品)の利尿剤は心臓発作や脳卒中を予防する最も安価で有効な
ものであるが、ジェネリック医薬品のDTCAなどされたことがない。公衆衛生
上真に必要とするものとDTCAとは無関係である。

  米国では、DTCAが行われて9年が経過するが、その最悪の影響をもたらした
例として、14万人に重篤な心血管イベントをもたらしたCOX-2阻害剤バイオッ
クスがある。2000年にバイオックスは、第1位のDTCA薬であり、この年のペ
プシ・コーラとバドワイザー・ビールをあわせたより大きい1億6千万ドルの
DTC広告費が投じられ、その4倍の売り上げがあった。バイオックスが処方さ
れた患者の殆どがバイオックスを必要としない患者であり、DTCAによる販売
促進の危険性は今や誰の目にも明白になっている。

  改良点のない平凡な新薬がDTCAによりブロックバスター(大ヒット薬)となっ
  た例には、抗アレルギー剤クラリチン、喘息治療剤シングレアがある。

  患者・市民は、DTCAについて多くが勘違いをさせられている。調査では、回
  答者の50%が製薬企業はDTCAの内容について事前に承認を受けねばならない
としており、43%が「完全に安全な」医薬品のみがDTCAを許されていると
考えている。

  DTCAの危険性は、FDA(医薬食品局)自身が行った研究でも明らかになっている。
  FDAが2000年に行った調査では、患者の60%が医薬品のリスクについてDTCA
は不十分な情報しか提供していないと見なしており、44%は医薬品の利益につい
ても不十分な情報しか提供していないと見なしている。58%がDTCAはその医薬
品を実際より良く見せようとしていると信じており、42%は万人に効くように宣
  伝していると見なしている。

  医師は、医学的には必要がないと思いながらも、DTCAを見てその薬を得ようと
  して受診した患者の要求に従っている。抗うつ剤パキシルなどでこの傾向が顕著
  に示されている。

  必要な患者には、試されずみの有効・安全・安価なジェネリック医薬品がある
  のに、DTCAは医療費を押し上げている。患者・市民に対するDTCAと並行し
て、製薬企業はその製品の医師への宣伝も強める場合が多い。結局は、これら
の宣伝費すべてが市民につけが回って来る。

  DTCAはまた、行政による内容の規制が非常に困難なものである。当局が警告
  をした時には、すでにテレビで大量に宣伝された後といったことが常である。

  はっきり言って、真に必要な情報は科学的なエビデンス(根拠)に基づいて行政
  が提供する偏りのない情報である。DTCAは、患者を製薬企業の代理人にして、
  それを必要とするとは考えていない医師に、処方するよう圧力をかける試みに
  他ならない。DTCAの利益は何ら証明されていず、利益が存在するとしても非
常に限定されたものであり、すでに証明されている臨床的、経済的不利益がそ
れを圧倒的に上回る。
                               (T)