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製薬企業が患者団体に行った資金援助についての情報公開

2006-02-21

(キーワード: 製薬企業、患者団体への資金援助、情報公開)

 2006年1月の注目情報で、世界的に製薬企業の患者への働きかけが活発になっていることに関連して、オーストラリア、英国での動きを紹介した(※1)。このなかで、英国製薬協が企業実務指針を10年ぶりに改訂し、加盟企業に患者団体への財政的支援を情報開示するよう求めていることなどを記した。今回はこの続報ないし詳報とも言うべき内容で、英国医師会が発行するBMJ誌(332、69、2006.1.14)に掲載された「英国製薬企業は患者グループへの資金援助を情報公開せねばならない」の要旨である。

   英国製薬企業は改定された企業実務指針に従い、患者権利擁護団体に対する
関与について公にせねばならない。1月1日から製薬企業は、資金援助をした
患者団体のすべての名称だけでなく、援助した金額などの詳細を開示する必要
があると指針は定めている。

   企業実務指針の改定は、2005年4月に出版された製薬企業が及ぼす影響に関
する議会レポート(※2)での、企業に対する厳しい批判に対応したものである。
製薬協のスポークスマンは、「指針は製薬企業の患者グループへの関与につい
て透明性を完全に高めるもので、そうした役割を果たす部署も各企業に自主
的に作られつつある」と語った。

これまでこの問題について種々の啓発活動を行ってきたソーシャル・オーディ
ットのチャールス・メダワー氏は、「患者グループとのつながりは今や販売促
進の大きな手段となっており、他企業との患者グループ取り込みの争奪戦も演
じられている。企業がこれらのやり方を大きく変えるよう自主的に取り組むか
どうかは疑わしい」と語った。

しかし、政府の患者・市民担当部局のハリー・ケイトン氏は、指針の改定を歓
迎し、企業だけでなく患者団体も同様の情報公開をするよう求めた。

患者団体協議会の施策を担当するシモン・ウィリアムス氏は、「いくつかのグ
ループは企業からの援助がないとやっていけないが、透明性は非常に重要で、
政府が言っているように、製薬企業からの資金援助や他の資金源についても
情報公開すべきである。われわれは、出版物と年次会計報告で、われわれの
受けた資金を明らかにしている」と語った。

 日本では製薬企業と患者団体の資金援助関係についての情報公開は非常に遅れており、公開を求める世論を高める必要がある。
                             (T)