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企業が患者グループに資金援助する意図は?

2006-01-25

(キーワード: 製薬企業、患者団体への資金援助、その意図)

 世界的に製薬企業の患者への働きかけが強まっている。そうしたことに関連して、最近の医学総合誌から、2つの記事の要旨を紹介する。

1)オーストラリア製薬協が患者グループを援助する意義について会員企業に啓発
(BMJ 331,1359,2005.)

 オーストラリア製薬協がその構成メンバーに、保健慈善基金団体と密接な関係
 をもち、患者グループを援助する意義についての新たなアドバイスを配布した。
 このガイドブックは、NPO(非営利の社会的活動を行う民間団体)を援助すること
 が、政府の定めるNPS(医薬品合理的使用計画)に当該製薬企業の医薬品が組み入
 れられるのを促進するのに役立つ可能性を述べている。オーストラリア消費者
 協会は、これについて、製薬企業は患者グループを、製薬企業の製品のロビー
 活動(議員などへの働きかけ)を行う最前線に使おうとしていると、警戒を表明
 している。

 数年前には、保健慈善基金団体は製薬企業と交渉を持つべきでないと考えられ
 ていた。しかし、現在では多くの保険慈善基金団体が、特定の目的をもったプ
 ロジェクトに対して資金を受け入れるにとどめるか、組織運営の根幹となる部
 分にも資金を受け入れるかのちがいはあるものの、製薬企業からの資金を受け
 入れるようになった。製薬企業から資金を得ていることを公開するかについて
 は、各団体の意見が一致していない。 

2)英国製薬協が実務コードを10年ぶりに改訂実施( Lancet 366, 1828 ,2005)

 2006年1月に、英国製薬協(ABPI)が10年ぶりに改訂した実務コード(※1)が発効
 する。実務コードは英国の製薬企業に対し、処方薬の販売促進において、責任
 をもち、倫理的で、プロフェッショナルであることを求めている。この改訂の
 主な目的は透明性を高めることにある。主に実務コードに違反しているのでな
 いかとの申し立て処理過程での透明性、それに患者団体への財政的な支援など
 を明らかにすることを求めている。患者団体は製薬企業のための医薬品のロビ
 ー活動(議員などへの働きかけ)で大きな力を発揮している。また、新たな実務
 コードは製薬企業が安全性への関与を強めることを求めている。具体的にはす
 べての販促物に副作用の報告システムの記載を求めている。しかし、今回の実
 務コードがOTC医薬品(処方せんがいらない医薬品)を適用対象外としていること
 は、医療用からOTCへのスイッチ(分類替え)が進む状況の下で問題である。
                         (T)

関連資料・リンク等