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美容目的の未承認医薬品問題

1 美容目的の未承認医薬品とは

未承認医薬品とは、薬事法14条に基づく製造販売の承認を得ていない医薬品をいう。ここにいう薬事法上の「製造販売」は、輸入販売を含むものとされている。
未承認医薬品であっても、使用は禁止されていないため、海外で承認・販売されている未承認医薬品が国内で使用されることがあるが、未承認医薬品を業として輸入することは禁止されているため、個人輸入の方法で輸入される。
未承認医薬品の個人輸入が必要とされる例としては、海外で生活していた人が、従前使用していた医薬品を国内で引き続き使用する場合が典型である。しかし、近年では、海外で先行して承認された新薬を個人輸入して使用する例が多くなっており、その背景にはインターネット上の輸入代行業者の存在があるが、その実態は輸入販売にあたる疑いがある。
また、患者自身が輸入する場合だけではなく、医師が患者に使用(処方)する目的で輸入する場合もある。厚生労働省は、医師によるこうした輸入を「医療従事者個人用」の輸入と称し、個人輸入の一類型として許容している。

2 取り上げた経緯

2012(平成24)年2月、医療機関において美容整形の目的で未承認医薬品を使用した患者(女性)から、当会議事務局宛てに、健康被害を受けた旨の訴えがあり、これを契機として、美容医療の分野における未承認医薬品の使用を調査することとなった。

3 何が問題か〜未承認医薬品であり薬事法違反の疑いがあること

日本国内において、医師が患者に未承認医薬品を使用(処方)する場合(医療従事者個人用の場合)には、本来、国が定める厳格な要件(①治療上緊急性が高いこと、②代替の治療方法がないこと、③輸入した医師等が自己の責任のもと、自己の患者の診断又は治療に供することを目的とすること)を満たすことが必要とされている。
美容目的の未承認医薬品を使用するケースでは、治療上の緊急性が高いという要件を満たす事例はそう多くないと考えられるが、2012(平成24)年3月の厚生労働省の発表によれば、平成22年度に医療従事者個人用として輸入された医薬品43,291件のうち、輸入(治療)目的が「美容効果目的」とされたものは14,669件(全体の約3分の1〔33.9%〕)にも及んでいる。この数字から、少なくとも美容目的の未承認医薬品については、国が定める上記3要件が極めて緩やかに運用されている実態がうかがわれる。
しかし、医師が診療に際して医薬品を輸入して患者に有償で譲渡・処方する行為は、厚生労働大臣の許可を得ない状態での、業としての「製造販売」行為(薬事法2条12項)に該当する疑いが強い。
こうした医療従事者個人用輸入の要件が緩やかに運用されている現状は、薬事法が規定する手続きによって有効性と安全性が確認がされていない未承認医薬品が多数日本国内へ流入する事態を招き、「違法に国内に流入することを未然に防ぎ、もって、国民の保健衛生上の危害を防止する」という厳格な要件を設けた薬事法の規制目的を損なう恐れが高いと言わざるを得ない。
かかる現状は、過去に当会議が同じく未承認医薬品であるサリドマイドや未承認医療機器で取り上げてきた問題と根本を同じくしており、薬事法上の問題だけでなく、患者に対する危険性があることも看過できない。

4 基本的行動方針

美容目的の未承認医薬品全般に対する現状の問題点を指摘するとともに、行政及び美容外科を標榜する医師らに対し、実態の把握と安全性確保のための対策を提起する。

5 活動の結果

2012(平成24)年9月11日、厚生労働大臣並びに日本美容医療協会、日本美容外科学会、日本美容外科学会(前者とは同一名称の別団体)、及び日本美容外科医師会の各団体に対し、「美容目的の未承認医薬品(アクアミド等)に関する要望書」を提出し、以下の事項を要望した。

  1. (1) 厚生労働大臣に対する要望
    1. ① 医薬品等輸入監視要領が定める医療従事者個人用の輸入を認める要件を厳格に運用するよう関係機関に周知徹底すること。
    2. ② 日本国内における美容目的の未承認医薬品の使用実態に関して調査し、その結果を公表すること。
    3. ③ 日本国内で使用されている未承認医薬品について、その輸入実態を継続的に把握し、不適切な管理や使用に関連した問題事例が予測された場合に迅速な対応をとるための、使用患者を直ちに特定できる体制(個別症例把握のシステム)を整えること。
    4. ④ 上記に関連した個別症例把握のシステムを通して、使用状況や有害事象等に関する情報を収集・分析し、その結果を公表すること。
    5. ⑤ 未承認医薬品を使用する医療機関(医師)に対し、以下の各事項を患者に対し説明するよう指導すること。
      1. ア 治療に用いる医薬品が未承認医薬品であること
      2. イ 当該未承認医薬品の具体的な効能効果、リスク
      3. ウ 承認医薬品による治療が可能である場合にはその旨
  2. (2) 日本美容医療協会、日本美容外科学会、日本美容外科学会、日本美容外科医師会に対する要望
    1. ① 各会員を通じて、未承認医薬品の使用実態に関する調査を実施し、その結果を公表すること。
    2. ② 各会員に対し、未承認医薬品を用いる場合、前項⑤の各事項について懇切丁寧な説明をするよう各医療機関(医師)に指導すること。

6 今後の課題

未承認医薬品については、本件以外にも様々な問題が存在している。引き続き、その実態の把握に努めるとともに、医師による個人輸入のあり方、輸入代行業の問題点など多様な角度からの検討が必要である。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
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2012-09-11
「美容目的の未承認医薬品に関する要望書」を提出