調査・検討対象

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ガチフロ錠(ガチフロキサシン)

1 ガチフロ錠とは何か

一般名 ガチフロキサシン水和物
商品名 ガチフロ錠100mg
承 認 2002年4月承認、6月販売開始
薬 価 1錠 150円20銭
薬効分類 広範囲経口抗菌剤
企業名 製造販売元:キョーリン製薬(株)、販売元:大日本住友製薬(株)
販売実績 約95億円
使用数 約420万人
用 法 1回200mgを1日2回経口投与

2 取り上げた経緯

ガチフロキサシンは、キョーリン製薬により開発されたフルオロキノロン系に属する合成抗菌剤である。細菌あるいはマイコプラズマなどのDNA複製を阻害して増殖を抑制することで抗菌活性を発揮すると考えられている。メーカーの製品説明では「従来のフルオロキノロン系抗菌剤では効果が不十分であった肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌に加えて、クラミジア・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマやペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)等の多剤耐性菌にも強い抗菌力を示すとされたことから、呼吸器感染症にも高い有用性を持つ新世代のフルオロキノロン系抗菌剤」としての有用性が強調されていた。ガチフロキサシンの添付文書では、内科、外科をはじめ皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科、歯科、泌尿器科などほとんどの臨床領域の感染症に適応があり、使用患者数はおよそ500万人と推定されている。しかし、販売開始4ヶ月足らずで添付文書改訂を行い、「慎重投与」の項に「糖尿病患者」を加えたが、その後も高頻度かつ重篤な血糖異常の報告が続き、糖尿病患者以外でも発現したことから2003年3月には、緊急安全情報が出され、添付文書に「警告」が追加された。
米国では、ブリストル.マイヤズ.スクイブ社がキョーリン製薬から開発、販売権を得て1999年承認を受け、テクインの商品名で販売していたが、2006年4月には収益力の低下を理由に自ら販売中止を決定した。収益力の低下の背景には副作用の問題があったと思われる。この決定に先立つ一ヶ月前のニューイングランド医学雑誌誌2006年3月1日号には、本剤が他の抗菌剤に比較して重篤な血糖値不良を引き起すことを警告する臨床研究報告が掲載されており、当会議では、注目情報(2006年3月)で取り上げた。

3 何が問題か

  1. (1) 重篤な危険性がある
    糖尿病患者だけでなく非糖尿病患者に重篤な血糖異常(低血糖とその後におこる二次性高血糖)を引き起こす危険性があり、血糖異常による死亡例も報告されている。その発現率はマクロライド系抗菌剤や他のフルオロキノロン剤に比べて著しく高い。承認後に報告されたPark-Wyllieらの症例対照研究では、マクロライド系抗菌剤に比べて、低血糖は4.3倍、高血糖は16.7倍起こしやすい。米国のパブリックシチズンが政府公表データをもとに分析した報告では、血糖異常の例は他のフルオロキノロン剤に比べて10-50倍も多い。
  2. (2) 血糖異常の危険性を示すデータが承認前からあった
    メーカーの承認申請資料を精査すると、動物実験(前臨床試験)およびヒト臨床試験のいずれにおいてもガチフロキサシンが血糖異常を起こすことを示すデータがある。動物実験では臨床用量相当あるいは常用量の5倍程度にすぎない量の投与で、初期に低血糖のちに二次性の高血糖を起こしており細胞レベルでは膵臓β細胞に形態学的変化を起こしている。これらの変化は、血糖降下薬であるSU剤の長期毒性としても、以前から判明していたことである。ヒト臨床試験でも、健常人で薬剤性のインスリン分泌と二次性高血糖が認められている。また食事療法のみの糖尿病患者の場合、10日間経口投与で、初日にインスリンが上昇し血糖降下、10日後には血糖上昇が認められている。
  3. (3) 安易な審査だった
    薬事食品衛生審議会医薬品第二部会議事録によると、審議会委員は膵臓での毒性について質問したものの、通常用量では影響なしとの事務局の説明をあっさりと認め承認に至ってしまった。
  4. (4) 代替薬がある
    ガチフロキサシンの適応感染症はきわめて広範囲におよんでいるが、適応感染症ごとに有用性(危険性/有効性)を検討した結果、危険性は有効性を大きく上回ると判断した。いずれの適応感染症においてもより安全性の高い医薬品があり、この点からも本剤の有用性は認められない。

4 基本的な行動

  1. (1) 承認を取り消し、使用中の製剤は回収する必要がある
  2. (2) 杜撰な承認を防止するためには、厚生労働省には承認の誤りを早急に検証させる必要がある。

5 具体的な行動とその結果

2006年10月27日に、厚生労働省、キョーリン製薬、および大日本住友製薬に対し「抗菌剤ガチフロキサシンの承認取り消しと回収を求める要望書」として送付した。2007年1月19日付けで、株式会社キョーリンより回答書を受け取ったが、問題にしている血糖異常の危険性を示すデータに言及していないので、再度、2007年5月28日付けで質問書として提出した。また、回答書は、ガチフロキサシンの医薬品としての有用性の根拠として日本呼吸器学会編集の「呼吸器感染症に関するガイドライン」による推奨をあげているため、新たに、日本呼吸器学会に対してもガチフロキサシンの危険性を認識していただくべく、「ガイドライン」におけるガチフロキサシンの扱いについて使用中止の記載を求める要望書を提出した。2007年8月18日付けで、日本呼吸器学会と「呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会」の連名による回答書を受け取ったが、リスクよりべネフィットが大きいとの判断であった。
2006年、2007年の厚生労働省による副作用の症例報告においても血糖異常の報告数が最も多く、今後も監視が必要である。