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● メーカー期待の新薬

 ガチフロ錠(一般名:ガチフロキサシン)は、杏林製薬が開発したフルオロキノロン系合成抗菌剤であり、日本では02年6月から杏林製薬の製造、杏林製薬及び大日本製薬の販売により販売開始された。杏林製薬が、「呼吸器感染症に高い有用性を持つ新世代のフルオロキノロン系抗菌剤」であり、またその他にも幅広い診療科領域の感染症に対して高い治療効果が認められるとアピールする、期待の新薬であった。

● 重篤な副作用−血糖異常

 ガチフロ錠は、先行して販売された海外での副作用から、承認時より重篤な低血糖・高血糖が「重大な副作用」に記載されていたが、日本での市販後も重篤な低血糖・高血糖の症例が報告され、販売開始からわずか4か月後の02年10月に、「慎重投与」に糖尿病患者を追加する添付文書の改訂がなされた。しかし、その後も重篤な低血糖・高血糖の症例報告が続き、糖尿病患者以外でも発現していたことから、03年3月厚生労働省が緊急安全性情報を発して、糖尿病患者を禁忌に追加し、重篤な血糖異常について警告欄を新設する添付文書改訂がなされた。

 さらに、ニューイングランド医学雑誌06年3月1日号に、マクロライド系の抗菌剤に比べてガチフロ錠は低血糖を4.3倍、高血糖を16.7倍起こしやすいとする症例対照研究の報告が掲載され、米国での販売元であったブリストル・マイヤーズスクイブは、同年6月にガチフロ錠(米国での販売名は「TEQUIN」)の販売を終了した。

● 要望書の提出

 上記の症例対照研究に加え、米国パブリック・シチズンが政府公表データをもとに分析した結果、ガチフロ錠での血糖異常の害反応例は他のフルオロキノロン剤の10〜50倍とされた。ガチフロ錠の有効性と、血糖異常の危険性を比較考量すると、危険性が有効性を大きく上回り、またより安全な代替薬や治療法が存在することから、ガチフロ錠は承認されている全ての適応について有用性を認めることはできないため、当会議は、06年10月、ガチフロ錠の承認取り消し等を求める要望書を厚労省及び販売元に提出した。さらに、要望書に対する杏林製薬側の回答書において、学会の治療ガイドラインに選択薬として記載されていることが有用性の根拠として挙げられていたことから、07年5月には、日本呼吸器学会に対し、ガイドラインにガチフロ錠の使用を中止するよう記載することを求める要望書を提出した。

● 製造販売元による販売中止

 要望書に対する杏林製薬側の回答はガチフロ錠の有用性は明らかというものであり、また学会の回答も使用中止を勧める根拠を見いだすことはできないというものであった。しかしその後、米国食品医薬品局(FDA)が、安全性等の理由からTEQUINをオレンジブック(承認医薬品リスト)から削除(同薬剤の後発品申請を今後受理しないための措置)。 杏林製薬及び大日本住友製薬は、糖尿病患者への投与をなくし、血糖値異常の発現を回避すべく周知徹底させることは難しい等として、08年9月30日をもってガチフロ錠の販売を自主的に中止した。

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