調査・検討対象

  1. ホーム
  2. 調査・検討対象

独立行政法人医薬品医療機器総合機構法問題

1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法問題とは

特殊法人改革の一環として2001年12月19日、「特殊法人等整理合理化計画」を閣議決定した。そのなかで、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構を廃止し、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、財団法人医療機器センター(の業務の一部)などと統合し、新たな独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA、以下「新法人」という)を設置することとなった(「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」案)。

2 取り上げた経緯

以上の動きを受けて、当会議では、この新法人の問題性を検討し、同法案に対する反対運動を展開することとした。

3 何が問題か

  1. (1) 過去の薬害に対する反省の欠如[審査安全対策部門と研究開発振興部門の統合]
    薬害エイズ事件の教訓から、1997年、旧厚生省は旧薬務局を廃止し、研究開発振興課と経済課は医政局の所管とされ、安全対策を含むその他の部門は医薬安全局の所管とされ、安全対策部門と研究開発振興部門を組織的に分離させて、安全対策の強化充実を図ろうとした。ところが、新法人では、一度分離した審査・安全対策部門と研究開発振興部門を、再び同一の法人のもとで統合している。これは、両部門の分離によって安全対策の強化充実を図ろうとした97年組織再編の趣旨に反するものであり、かつて度重なる薬害の発生を許した旧体制への逆行である。
  2. (2) 製薬企業に対する人的依存
    新法人では、製薬企業からの人的依存を避けられない。製薬企業等の現職役員が新法人の役員となることは禁じられているもの、元役員が新法人の役員となることや、現役社員が新法人の職員となることなどは、法律上禁止されていない。そして、新法人では、職員の身分を公務員でないため(非公務員型)天下りに関する規制が新法人の役職員には全く及ばない。また、退職後の製薬企業への再就職も自由であるし、新法人では大幅な人員の拡充が予定されているため、多数の製薬企業の関係者が新法人に採用されることも予想さされ、製薬企業との人的癒着が深く進行し、審査・安全対策の形骸化を招きかねない。
  3. (3) 製薬企業への経済的依存
    また、新法人においては、安全対策業務についても企業からの拠出金を原資として実施されるなど、経済的にも企業からの独立性が確保されていない。審査業務については、手数料を増額する一方で審査の迅速化を目指すことが強調されている。そのため、審査は拙速となり、安全性の審査が蔑ろにされるおそれがある。
  4. (4) 責任の所在の不明確化
    例えば安全対策業務では、副作用情報の収集も、収集した情報の重要性・緊急性の判断も新法人が行うと説明されている。すなわち、いかなる情報のもとに、いかなる安全対策を行うべきかという実質的判断は全て新法人に委ねられることとなる。このような体制の下で、行政措置を厚生労働大臣の責任において行うとしても、それは法的責任が形式的に厚生労働大臣に帰属するというにすぎず、無責任な判断を誘発しかねない。
  5. (5) 不透明な立案過程と不十分な審議
    新法人の設立は、医薬品の安全確保という重要政策にきわめて重大な変更をもたらすものであるにもかかわらず、その法案の立案過程はほとんど明らかとなっていない。国会においても、衆議院では、厚生行政と全く関係のない他の特殊法人等関連45法案と合わせて一括審議に付され、審議から僅か8日間で採決された。参議院でも、採決に当たって上記問題点を意識した付帯決議がなされたが、法案自体は修正されなかった。

4 基本的な行動指針

薬被連とともに協力関係を保って、TIP(医薬品・治療研究会)、JIP(NPO法人医薬ビジランスセンター)などとともに反対運動を展開することとした。

5 具体的行動とその結果

  1. (1) 学習会[2002年10月26日]
    2002年10月26日、薬被連、TIP、JIPとともに、本法案についての学習会を実施
  2. (2) 緊急要請文[2002年11月14日]
    2002年11月14日、薬被連、TIP、TIPなどとともに厚生労働省等に対して「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案に関する緊急要請文」を提出した。
  3. (3) 国会内集会[2002年11月27日]
    2002年11月27日、薬被連を初めとする薬害被害者と薬害オンブズパースン、TIP、JIP他は、本法案に反対する国会内で集会を開催した。
  4. (4) 参議院参考人質疑[2002年12月2日]
    2002年12月2日、参議院厚生労働委員会において、本法案に関する参考人質疑が行われ、本法案に反対する立場からパースンメンバーの1人である濱六郎も意見を述べた。
  5. (5) リレートーク他
    参考人質疑当日の12月2日から4日まで薬被連をはじめとする薬害被害者などとともに厚生労働省前、参議院、街頭などで、連日のリレートークやビラまきを行い、市民に本法案の問題点を訴えた。
  6. (6) イレッサ問題への取り組み[2002年12月4〜6日]
    本法案の提案理由として、新薬の承認審査の迅速化があった。しかし、その先取りとしてスピード承認をした抗ガン剤イレッサで、発売直後から多くの副作用死が報告された[イレッサに関する報告参照]。パースンメンバーの濱六郎は、参考人質疑の中でイレッサを例にして本法案の問題点を指摘した。
    そして、薬被連、TIP、JIPとともに、12月5日、イレッサでお嬢さんを亡くされた遺族とともに記者会見を行い、12月6日からイレッサ110番を開設した。
    また、国会議員に対して法案成立反対の要請をした。
  7. (7) 国会内集会[2002年12月11日]
  8. (8) 各政党への質問状
  9. (9) 厚生労働大臣との面談[2002年12月26日]
    薬被連と厚生労働大臣との面談が行われた際に、当会議のメンバーも同道した。
  10. (10) 制定過程、法案の中身の問題点を指摘する冊子の作成・頒布
  11. (11) 薬被連の厚生労働省交渉のサポート

6 今後の課題

法案の成立は阻止できなかったが、振興部門の分離、機構職員の就業制限規定の整備、機構の運営評議会への薬害被害者参加などが獲得できたのは大きな成果であった。
しかし、製薬企業側から就業制限の撤廃を求める声が強く、「迅速で有効な医薬品を提供するための検討会」が2007年就業制限規定の一部撤廃を報告書で提案した。2007年段階で、PMDAの承認審査に携わる職員は約200人であるのに対し、安全対策は57名と限定されている。PMDAの全体の人材の確保に加え、その人材配置のバランスも重要な問題である。省庁再編の動きも視野に入れ、PMDAのあり方を問うていきたい。