プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)
1 プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)とは
| 一般名 | タクロリムス水和物 |
|---|---|
| 商品名 | プロトピック軟膏(0.1%)、同軟膏0.03%小児用 |
| 企業名 | 藤沢薬品工業株式会社 |
| 薬効分類 | アトピー性皮膚炎治療剤 |
| 効能・効果 | アトピー性皮膚炎 |
| 用法・用量 | 0.1%: 成人 1日1〜2回、1回あたり5 gまで 0.03%: 小児 1日1〜2回、1回あたり5 gまで |
2 取り上げた経緯
タクロリムス水和物(以下タクロリムス)製剤は、臓器移植時の拒絶反応抑制を目的とした免疫抑制剤として開発され、日本では1993年より注射剤として、1996年からは内服剤として市販されている。このタクロリムスのTNF-α、インターロイキンなどのサイトカイン産生やヒスタミン遊離を抑制する薬理作用から、アトピー性皮膚炎への効果が期待され、軟膏剤として開発されたのが、プロトピック軟膏である。
成人のアトピー性皮膚炎を適応として0.1%軟膏が1999年6月に承認されている。当会議の複数メンバーが、発がん(悪性リンパ腫など)の危険性を伴う免疫抑制剤をアトピー性皮膚炎に適用することへの問題意識を持っていたところ、それまでの成人用だけでなく、さらに小児用製剤の承認が、2003年5月の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において了承されたとの情報を得たことから、当会議での検討対象とすることとした。
その後、小児用製剤は2003年7月17日に承認され、12月から発売となった。
3 何が問題か
- (1) 有効性
- ① 有効性評価の根拠となった、ステロイド剤と効果を比較した臨床試験内容を検討したところ、試験方法や副作用評価方法に問題のある可能性が明らかとなった。
- ② アトピー性皮膚炎治療ではステロイド剤が第一選択薬であり、プロトピック軟膏を使用するとしても、ステロイド剤無効例などに適応を限定する必要がある。「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン2004年版」やプロトピック軟膏の添付文書でも、ステロイド剤で効果が不十分または副作用で使用できない場合に使用する、となっている。しかしステロイド剤無効例を対象とした臨床試験は行われておらず、その有効性は検証されていない。
- (2) 危険性
- ① 承認審査資料の動物実験結果では、発がんや悪性リンパ腫が増加したデータが示されている。
- ② 海外の臨床使用経験から、悪性リンパ腫や皮膚がんの発症例が報告されている。
- ③ 日本を含めて、臨床試験データとしては、2年までの追跡結果しか出ておらず、長期使用での安全性は確認されていない。
- (3) 使用症例の追跡調査体制
当会議は、2003年12月の公開質問書の中で、将来における発癌への影響を調べるための追跡調査体制の必要性を指摘した。藤沢薬品工業は、0.03%軟膏に関しては250例と1000例の特別調査2件を実施予定としているが、0.1%軟膏では通常の安全性情報収集業務のみとし、追跡調査体制が十分とられているとは言えない。 - (4) アトピー性皮膚炎治療におけるプロトピック軟膏の位置づけと患者への情報提供のあり方
アトピー性皮膚炎治療において、第一選択薬としてのステロイド剤による治療が確実に実施されているかは、プロトピック軟膏の適用がステロイド無効例に限定されているか等については、正確な処方調査データがなく不明である。また安全性情報に関して、患者用説明書や添付文書上に、発癌性や光発癌性の危険に対する十分な注意喚起と実質的な対応策の記載がなされているとはいい難く、問題である。 - (5) 情報公開
当会議は2003年12月の公開質問書において、発癌性に関する動物実験データの公開を求めたが、藤沢薬品工業からはデータは公開しないとの回答であった。データの公開なくして科学的議論は成立しない。詳細なデータ分析による安全性の検討のためには、すべてのデータの公開が求められる。
4 基本的な行動方針
今後も情報収集を継続し、長期使用に伴う安全性情報のフォローアップと患者への安全性情報提供が適切に行われているかを監視するとともに、当会議としても安全性情報の分析とその結果の提示を行っていく。
5 具体的な行動とその結果
- ① 2003年12月5日 「プロトピック(タクロリムス水和物)軟膏に関する公開質問書」を厚生労働省、日本皮膚科学会、藤沢薬品工業へ送付した。日本皮膚科学会から2004年1月13日に、藤沢薬品工業からは同年1月16日に回答があり、公開質問書とともにホームページにて公開した。
- ② 2004年2月13日 「タクロリムス軟膏使用中またはこれから使用される患者さんおよび医師、薬剤師の方々へ」と題するQ&Aをまとめ、当会議ホームページに掲載するとともに、前記3者に送付した。このQ&Aは、日本皮膚科学会が出したQ&A形式の患者向け情報に対する当会議の考えを、同じくQ&A形式でまとめたものである。
6 今後の課題
これまでに明らかになっているプロトピックの有効性と安全性に関する問題点をその根拠資料とともにまとめた「プロトピック問題資料集(仮題)」を作成し公開することにより、さらに安全性に関する問題提起を行っていく。また、患者へのより適切な安全性情報提供の方策を検討していく必要がある。
トピックス
- 薬害オンブズパースン会議
- タイアップグループ
- 2004-02-13
- プロトピック(タクロリムス水和物)軟膏Q&A
- 2004-01-16
- プロトピック(タクロリムス水和物)軟膏に関する公開質問書に対する藤沢回答
- 2004-01-13
- プロトピック(タクロリムス水和物)軟膏に関する公開質問書に対する日本皮膚科学会回答
- 2003-12-05
- 「プロトピック(タクロリムス水和物)軟膏に関する公開質問書」提出
- 2003-06-24
- 「プロトピック(タクロリムス水和物)0.03%軟膏に関する緊急要望書」 提出
機関紙
- 2004-09-01
- プロトピック軟膏
- 2004-04-01
- 藤沢薬品と皮膚科学会のプロトピック要望書に対する回答
- 2003-11-01
- プロトピック軟膏0.03%小児用は安全性が確認されていない