調査・検討対象

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薬事委員会議事録情報公開請求

1 薬事委員会とは

薬事委員会は、院長、各科部長その他の病院内の医師・薬剤師・医事課職員等で組織され、当該病院において購入・使用する薬剤の採否を決定する権限を有する機関である。

2 取り上げた端緒

各病院が薬を購入するにあたっては、薬事委員会の審議・決定を経なければならないとされており、有効性・安全性に疑問のある薬を医療現場から排除するために薬事委員会が果たすべき役割は大きいというべきであるが、その実態はこれまで外部に明らかにされることはなく、現実には薬事委員会は十分に機能していないという疑問が持たれている。
そこで、2001年4月施行の情報公開法を利用してその実態を調査することがタイアップ仙台より提案された。

3 何が問題か

  1. (1) 薬事委員会の審議内容について、十分な情報公開がなされるか。
  2. (2) 薬事委員会は、薬の有効性・安全性について、十分な検討を行っているか。

4 基本的な行動指針

情報公開法に基づいて薬事委員会議事録の情報公開請求を行う。
調査結果は公表し、国立病院・国立大学付属病院の薬事委員会が、薬の採否を決するにあたり、薬の安全性・有効性についてどのような検討を行っているのか、その実態を明らかにするとともに、好ましい事例、好ましくない事例を広く紹介することによって、薬事委員会の運営の改善を働きかけていく。

5 具体的行動

2000年12月 全国132か所の国立大学付属病院・国立病院に対し、「病院で使用する薬に関するアンケート実施
2001年 4月 アンケート結果を参考に、国立大学12か所及び国立病院18か所に対し、情報公開法に基づく公文書開示請求。対象文書は、

  1. (1) 平成13年1月から3月までの間に開催された薬事委員会の議事録等及び配布資料。
  2. (2) 議事録等のうち、過去に当会議が問題提起してきた3つの薬剤(ベロテック、マイリス、アクトス)に関する議事の記載された部分、及び当該議事の日時と参加者が明らかとなる部分、並びに当該議事に関連する配布資料

6 結果

  1. (1) 開示された範囲
    対象の30病院につき、①出席委員名、②申請者名、③申請理由、④討議内容、⑤発言委員名、の各項目について、その事項が議事録または配付資料中に記録されているかどうか、及び記録されている場合それが開示されたかどうか、をチェックした。
    1. ① 出席委員名
      ほとんどの病院で記載されていたが、2病院は記載がなかった。記載のある病院のうち、10病院が非開示(墨塗り)とした。
    2. ② 申請者名
      不記載5、非開示12。半数以上の病院で申請者名が不明という結果に。
    3. ③ 申請理由
      不記載4。非開示1(大分医科大学附属病院)。
    4. ④ 討議内容
      逐語式で記録されており、議論の内容(委員間のやり取り)がある程度分かるのは4病院のみ。半数以上の病院は採否の結果しか記載しておらず、採否の理由が不明となっている。
    5. ⑤ 発言委員名
      発言者名を記録している病院は6病院のみ、うち4病院が発言者名を開示した。
  2. (2) 非開示事由とその理由
    非開示事由のほとんどは氏名等の個人識別情報で、上記のとおり、医師名をも墨塗りした病院が少なくなかった。医師名を非開示とした病院の多くは、法5条1号を根拠としている。しかし、医師名は同号イの「慣行により公にされている情報」に該当するというべきであり、1号は根拠とならないというべきである。
    また、非開示理由として5号(審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ等のある情報)を挙げた病院も少なくないが、薬の評価は科学的根拠に基づく客観的評価の問題であり、医師名の開示によって「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じるということは考えられない。
    なお、一般に病院は情報公開請求に不慣れであることや、請求が情報公開法施行から間もなかったことから、法の解釈として到底成り立ち得ないような非開示理由を示される例も目立った。
  3. (3) 採否の状況
    前述のとおり議事内容が必ずしも明らかではないが、申請された薬が不採用となるケースは非常に少なく、多くの病院で、ほとんど議論らしい議論のないまま、いわばフリーパスで申請通りの採用がなされていることが窺われた。
    議論がなされている場合でも、その内容はもっぱら薬の「使いやすさ」や経済性の問題であり、申請された薬の有効性・安全性についての検討を行っている病院は、少なくとも今回の情報公開の結果から見る限りでは、ほとんどないといってよい状況であった。
  4. 7 評価
    この情報公開請求では、非開示とされたのはおおむね個人名のみで、墨塗り部分はそれほど多くはなかった。しかし、一般に議事録の内容自体が極めて乏しく、誰が、どのような資料を、どのように吟味検討して薬の採否を決定したのかが読みとれる議事録は、ほとんどなかった。その意味で、薬事委員会の情報公開度はきわめて低いといえる。
    薬事委員会の薬の採否の決定は、科学的合理性が求められ、かつ、多くの患者の生命、身体の安全その他の公共的利益に影響するものであるから、その当否について第三者による検証が必要とされるものである。
    したがって、今後も時宜に応じて調査を行い、薬事委員会の議事録の充実と、その積極的な開示を求める活動を続けることが必要である。