調査・検討対象

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H2ブロッカー配合胃腸薬

1 H2ブロッカー配合胃腸薬とは

H2ブロッカー(シメチジン、ラニチジン、ファモチジン)が入った胃腸薬である。一般用医薬品として販売されていたのは次の商品である。

  1. (1) シメチジン … フロンティア(製造販売藤沢)、パンシロンH2ベスト(製造藤沢、販売ロート販売)、住友胃 腸薬スコープ(製造住友、販売住友ヘルスケア)、センロックエース(製造住友、販売第一)、ザッツブロック(製造住友、販売武田)アルサメック(製造販売佐藤)
  2. (2) ラニチジン … 三共Z胃腸薬(製造日本グラクソ、販売三共)大正エスブロック(製造日本グラクソ、販売大正)
  3. (3) ファモチジン … ガスター10(製造販売山之内)エフィール(製造山之内、販売中外MSD)

2 取り上げた経緯

97年10月、タイアップグループの薬剤師が「もともと医療現場で慎重に使われてきたH2ブロッカーが、9月にOTC(Over the counter drugs、一般用医薬品)にスイッチされたのはおかしい」と問題を提起した。

3 何が問題か

  1. (1) H2ブロッカー配合胃腸薬の販売継続
    1. ① 有効性
      胃痛、胸やけ、もたれ、むかつきの症状に対して、制酸剤より有効であることが示され ていないし、また頓服での有効性について科学的根拠がない。
    2. ② 安全性
      3つの危険(血液障害など重大な副作用の危険、多い相互作用の危険、癌・潰瘍など重 篤な病気の発見を遅らせる危険)がある。
    3. ③ 使用方法
      医師の管理下でなければ、適正使用が困難である。店頭で詳しい説明を受けても3つの 危険は避けられない。
    4. ④ その他
      • 消費者が薬について正しく理解できる内容の情報提供がなされていない。
      • 事故がおこったとき誰が責任を負うのか、はっきりしない。
      • 服薬すべきでない人の服薬につながりかねない広告も問題である。
  2. (2) 不明確なスイッチOTCの基準
    スイッチOTCの基準については、若干の修正が行われたが、中央薬事審議会一般用医薬品特別部会でも意見が噴出したように充分ではない。
    消費者がOTCを安全に使用するためには、①重大な副作用がないこと、②適応の判断等が容易であること、③使用方法が簡便であることは、少なくとも必要である。
  3. (3) 薬剤師不在問題と薬剤師の役割
    1. ① 薬害オンブズパースン会議とタイアップグループによるチェーンドラッグストアの販売実態調査を契機に、厚生省の指導によるチェーンドラッグストアの立ち入り調査が行われ薬剤師不在・名義貸しの実態が明らかにされた。
    2. ② 薬の専門家として薬剤師には、医療消費者と一緒に薬のコントロールを果たす役割が求められている(薬剤師法25条の2の情報提供義務参照)。H2ブロッカー配合胃腸薬をめぐる問題の中で、改めて薬剤師の役割が注目された。
  4. (4) 市販後調査の問題
    H2ブロッカー配合胃腸薬の市販後調査結果概要(一年次)が報告されたが、次の4つの問題がある。
    1. ① 特別調査、一般調査ともに出荷総量に対する調査例数が極めて少なく、特別調査の集荷数量に対する比率は 0.3〜 0.4%、はがき回収率は0.1〜 0.3%にすぎない。
    2. ② 自覚症状しか収集されていない。
    3. ③ はがきアンケート結果では、非常に多彩な自覚症状が報告されている。特に中枢神経系、消化器系、呼吸器系の症状が多く、医師が関与しないOTCとしては今後も十分な注意が必要である。
    4. ④ 検査値異常が血液障害2件のみであるが、この事例は献血時に偶然発見されたとのことで潜在的にはもっと多いと考えられる。

4 基本的な行動指針

H2ブロッカー配合胃腸薬は、そもそもOTCとして不適切。説明を充実せよ、という考えではない。ただ、製薬企業が適正に服薬指導がなされていると述べるので、実態を調査し、確かな事実に基づいて行動することを基本的な指針とした。

5 行動と結果

  1. (1) 具体的行動
    1. ① 97年11〜12月、98年6〜7月 2回の販売実態調査の実施
    2. ② 98年1月9日、3月16日、5月11日、22日 厚生大臣、日本薬剤師会、製薬企業へ「質問書」を4回提出
    3. ③ 98年7月9日 厚生大臣への「資料の公開請求書」提出
    4. ④ 98年8月28日 厚生大臣、中央薬事審議会一般用医薬品特別部会、日本薬剤師会、製薬企業へ「H2ブロッカー配合胃腸薬(OTC)の製造・販売中止要請書」を提出
    5. ⑤ 98年11月24日 中央薬事審議会一般用医薬品特別部会へ「意見陳述要請書」を提出
    6. ⑥ 99年6月10日 厚生大臣、中央薬事審議会一般用医薬品特別部会、日本薬剤師会、製薬企業へ「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する意見書」を提出
  2. (2) 結果・反応
    中央薬事審議会一般用医薬品特別部会が公開で行われ、その結果市販後1年の時点で調査結果をまとめ特に必要な項目については承認事項、承認条件等の見直しが行われるようになったこと、厚生省の指導で薬剤師の勤務実態が調査されたこと、テレビ、ラジオ広告の自粛されたことなど、評価ができる動きがあった。
    H2ブロッカー配合胃腸薬の問題を検討する中で、薬剤師不在問題がクローズアップし、薬剤師の役割が注目されるようになったことは、重要な成果である。
    しかし、中央薬事審議会一般用医薬品特別部会に対する当会議の意見陳述要請は受け入れられず、相変わらず、H2ブロッカー配合胃腸薬は一般用医薬品として販売が続けられている。

6 今後の方向性

  1. (1) H2ブロッカー配合胃腸薬
    一般用医薬品として消費者が安全に使用する上できわめて問題の多いH2ブロッカー配合胃腸薬の販売はただちに中止すべきである。
  2. (2) スイッチOTC
    OTC適合性の厳格な基準を設け、個々の薬について厳格な基準をあてはめ、具体的に検討すべきである。
  3. (3) 薬剤師の役割
    薬剤師が消費者の身近にいる薬の専門家として役割を果たし責任をもつことのできる情報提供の体制を検討すべきであり、消費者が薬について充分な情報提供とわかりやすい説明を受けられる仕組みを作るべきである。
  4. (4) 市販後調査
    1. ① 一般用医薬品による薬害の実態を把握できる仕組みをつくるべきで、少なくとも一般 用医薬品の市販後調査のやりかたについて、特別調査では臨床検査の実施も義務付ける などの方法も含めて、検討改善する必要がある。
    2. ② 市販後調査の結果安全性に疑問がある場合、あるいは承認条件が守られていない場合 には、販売中止も含め実効的な措置がとられるべきである。

7 その後

  1. (1) 市販後調査後も指定医薬品の解除されず
    H2ブロッカー配合胃腸薬は、2000年12月に3年間の指定医薬品としての市販後調査期間を終了したが、市販後調査結果では、胃癌等重篤な消化器疾患が隠蔽された事例報告等があり、指定医薬品としての取り扱いは解除されなかった。
  2. (2) リスク分類は第1類に
    2004年4月、厚生労働省は、一般用医薬品のリスク分類に基づき、適切な情報提供のあり方、「専門家」による販売形式を定めるとして厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会を設置し、2005年12月に検討会での最終案をまとめた。2006年度国会で薬事法改正案が承認され、その後の準備期間を経て、2009年度よりあらたな医薬品販売制度が本格的にスタートする。
    この改正医薬品販売制度におけるリスク分類では、H2ブロッカーは、第1類に分類され、薬剤師のみが取り扱い、文書による情報提供を義務づけ、直接消費者が手の届かない場所に陳列しなければならないこととなった。
  3. (3) 医薬品販売制度改正へ
    H2ブロッカー配合胃腸薬の取り組みは、その後の医薬品規制緩和問題、医薬品販売制度問題への取り組みにつながる。この時タイアップグループと共に取り組んだチェーンドラッグストア販売実態調査は医薬品販売の実態について社会に大きな問題をなげかけ、医薬品販売制度問題における、リスク分類、登録販売者制度などにつながったといえる。
  4. (4) 今後もスイッチ化の監視強化を
    医療用医薬品のスイッチOTC化は今後も進むであろうが、スイッチされた直後は市販後調査が義務付けられ、薬剤師のみが取り扱う第1類に分類されることになる。H2ブロッカー配合胃腸薬で問題となった薬剤師の関わりが、今後一層問われることになる。スイッチOTC化の動きを監視することと、薬剤師の関わりを登録販売者制度と同時に注視していかなければならない。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
1999-06-10
「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する意見書(1)」提出
1998-12-11
中央薬事審議会一般用医薬品特別部会を傍聴
1998-11-24
中央薬事審議会一般用医薬品特別部会における意見陳述要請書送付
1998-10-02
厚生省中央薬事審議会一般用医薬品特別部会傍聴
1998-09-04
H2ブロッカー 厚生省と面談
1998-08-28
H2ブロッカー 要望書提出
1998-07-24
H2ブロッカー 中外MSD回答
1998-07-16
H2ブロッカー 販売調査結果公表
1998-07-10
H2ブロッカー 山之内製薬回答
1998-07-09
塩酸イダルビシン 質問書提出 、 H2ブロッカー 資料公開請求書を提出
1998-07-03
H2ブロッカー 住友製薬回答
1998-06-29
H2ブロッカー 全国一斉販売調査始まる
1998-06-22
H2ブロッカー 武田製薬回答
1998-06-19
H2ブロッカー 佐藤製薬回答
1998-06-17
H2ブロッカー 三共製薬回答
1998-06-08
H2ブロッカー 日本グラクソ回答
1998-06-02
H2ブロッカー ロート製薬回答
1998-06-01
H2ブロッカー 日本薬剤師会及び藤沢製薬回答
1998-05-25
H2ブロッカー 大正製薬回答
1998-05-22
「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する質問書(4)」提出
1998-05-11
「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する質問書(3)」提出
1998-03-16
「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する質問書(2)」提出
1998-02-19
H2ブロッカー 山之内製薬、三共回答
1998-02-14
H2ブロッカー 中外MSD回答
1998-02-02
H2ブロッカー 日本薬剤師会、ロート製薬、住友製薬、武田製薬、大正製薬、日本グラクソ、第一製薬、藤沢薬品回答
1998-01-09
「H2ブロッカー配合胃腸薬に関する質問書(1)」提出