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イレッサ同様の反応率の新薬「迅速承認」をFDA抗がん剤諮問委員会が否決

2005-06-28

イレッサ同様の反応率の新薬「迅速承認」をFDA抗がん剤諮問委員会が否決
  (キーワード:FDA抗がん剤諮問委員会、イレッサ関連、酷似新薬の「迅速承認」を否  決)

 昨年、イレッサがISEL試験で延命効果が見られなかった直後には、「市場撤去も含め検討」のプレス発表を迅速に行った米国FDA(食品医薬品局)だが、その後の態度は曖昧であり、イレッサの延命(市場残存)を示唆する幹部の発言が相次いだ。2005年3月4日のFDA抗がん剤諮問委員会・イレッサ公聴会では、パブリック・シティズン・ヘルスリサーチ・グループのピーター・ルーリー医師が、FDAを厳しく非難し、サブパートH条項(訳注:延命効果の証明は承認後でよいとする条項)を適用してイレッサを「迅速承認」したにも拘らず、その証明に失敗した後も「承認取り消し」や「市場撤去」を行わないのは、新薬の承認システムを崩すものであると批判した。
 イレッサについては、アストラゼネカ社からISEL試験の詳しい解析結果を受けて、今夏にFDA抗がん剤諮問委員会が再度審議することになっているが、同諮問委員会は5月5日、かつてのイレッサと酷似した状況にある新薬(抗癌剤ザルネストラ)に対して、厳しい評価を下した。この新薬は、イレッサの場合と同様、臨床試験成績で延命効果をみないまま、FDAが迅速承認を行おうとした薬だった。FDCレポート"ピンクシート"誌(2005年5月16日付)はFDA抗がん剤諮問委員会がザルネストラの迅速承認・全面承認をともに否決した経緯を紹介している。

   [イレッサがザルネストラの諮問委員会レビューに陰を投げかける]

   FDA諮問委員会がジョンソン&ジョンソン(J&J)社の社のザルネストラ
   の承認を拒んだことは、イレッサでの失敗が次世代の抗がん剤新薬
   承認申請に重要な影響をもっていることを示唆している。

   J&J社の急性骨髄性白血病治療剤ザルネストラ(チピファルニブ)の承
   認が否決されたことは、イレッサ(ゲフィチニブ)が迅速承認後の確認
   試験で延命効果を証明できなかったために、諮問委員会の迅速承認に
   対する判断がより慎重になったことを示しており、イレッサ失敗のあ
   おりを受けた最初の例と言えよう。

   ザルネストラの承認について議決する際に、抗がん剤諮問委員会メン
   バーは、ザルネストラの新薬承認申請とイレッサの新薬承認申請の共
   通性に注目した。「これは本当にイレッサの場合と全く同じだ。反応
   率が11%ということさえも共通している」と、オーチス・ブローリー委
   員(エモリー大学)が5月5日に開催された諮問委員会で嘆息した。諮問
   委員会は、ザルネストラの迅速承認を賛成4、反対7で否決、完全承認
   も全会一致で否決した。

   諮問委員会の委員は、もしもザルネストラを迅速承認して、その後ザ
   ルネストラが確認試験で延命効果を証明できなかったときに、ザルネ
   ストラもまた市場撤去されないのではないかという懸念をあらわにし
   た。諮問委員会メンバーのブルース・チェソン氏(ジョージタウン大学
   病院)は、この現象を「イレッサの法則(Iressa Principle)」と名づけ、
   FDAがサブパートH(訳注:延命効果の証明は承認後でよいとする条項)に
   よる迅速承認をしようとしていることを「歯止めのない(edentulous)」
   条件付承認と形容した。
                             (T)

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