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WHO必須薬モデルリストの発表はなぜ遅れているのか

2005-06-28

WHO必須薬モデルリストの発表はなぜ遅れているのか
 (キーワード:WHO必須薬モデルリスト、改訂作業、英国ガーディアン紙報道、
  流産薬の収載)

 WHO(世界保健機関)の「必須薬モデルリスト」改訂の専門家委員会が2005年3月7-11日に開催されてから、3か月近くが経過した。通常なら、専門家委員会が開催されて必須薬モデルリスト案を推奨した後は、WHO事務総長の形式的な了解を経て48-72時間内に発表されるのが普通なのだが、今回は遅れている。
 英国の医学雑誌ランセット(5月28日、※1)や英国ガーディアン紙(2005年4月21日付)の記事(※2)を総合すると、その理由としては次のような背景があることがわかった。

   WHO統計によると、いま世界中では毎年1900万人の女性が危険な妊娠
   中絶手術をうけており(うち1850万人が発展途上国)、その結果毎年
   68000人が死亡しているとみられている。WHO専門委員会は、すべての
   有害作用はすでに検討済みであるとして、ミフェプリストンとミソプ
   ロストールという2つの薬を組み合わせて用いることによって妊娠中絶
   を妊娠9週以前に行えば多くの場合は安全であると結論づけている。
   今回のWHO専門委員会では、全員一致でこれらの薬を必須薬リストの中
   に収載することを決定したのだが、保守的なブッシュ政権の米国が堕胎
   を嫌ってこれに強い圧力をかけていることが、発表の遅れの背景にある
   ものとみられている。
   
   5月5日には、専門家委員会の全構成員が連名で、リー・ジョンウック
   理事長に「必須薬モデルリスト」発表の遅れについて懸念を表明した
   書簡を送っている。

                               (T)

[追加情報] WHO必須薬モデルリストは2005年7月約3か月の遅れで公表された。
 ミフェプリストンとそれに36-48時間後に組み合わせて用いられるミソプロ
 ストールの2剤は、「国内法および文化的に受け入れられるところで」用い
 られるとの文言がWHO事務総長によって追加され、モデルリストに収載され
 た。