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クレストール特集(1) ランセット誌にアストラゼネカ社の激しい売り込みに対する批判記事掲載

2005-05-24

 世界的な医学総合誌のひとつである英国のランセット誌は2003年10月25日号のエディトリアルにおいて、ロスバスタチンの安全性に疑問を呈し、アストラゼネカ社の激しい売り込みを批判する記事を掲載しています。記事概要は以下のようなものです。

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「スタチン戦争:アストラゼネカ社が(ロスバスタチン; クレストールの)露骨な市場戦略を中止すべき理由」
The Statin wars: why AstraZeneka must retreat[The Lancet 2003; 362(9393): 1341.]

要約(翻訳)

(1) ロスバスタチンは、米国で2003年8月に承認され9月発売となったが、アストラゼネカ社はGalaxy(銀河)プログラムと銘打った臨床試験シリーズ(16の臨床試験)を行い、巧妙な三段論法を展開している。巧妙な三段論法とは、つぎのような三段階の論理展開でロスバスタチンの有効性を論証しようとするものである。「前提1:血液の脂質構成が変化することによってアテローム硬化症が起こる。前提2:アテローム硬化症が起こると冠血管疾患が発症する。ゆえに、ロスバスタチンで脂質構成をもとに戻せば、アテローム硬化症が起こらず、したがって冠血管疾患発症のリスクを減少させることができる。」*1
  *1 訳者注:一見もっともな論理ではありますが、この単純な
  論理には2つの大きな問題があります。一つめは、血液の脂質が
  関係する動脈硬化性疾患は冠血管疾患だけではないということで
  す。つまり、心筋梗塞などの冠血管疾患だけを取り上げてもあま
  り意味がなく、脳梗塞、脳出血など脳血管への影響なども考慮し
  なければなりませんし、最終的には全身への影響を総合的に判断
  する必要があります。二つめは、そもそも、動脈硬化性疾患は、
  アテローム硬化だけで起こるものではなく、血圧や血糖値などさ
  まざまな要因が複雑に絡み合って起こるものだということです。
  つまり、「血液の脂質構成を是正し、アテローム硬化を予防すれ
  ばよい」という単純なものではないということです。

(2) スタチン剤については、まず、安全性は確定していないという問題がある。スタチン剤の一種であるセリバスタチンでは、副作用が原因で市場から撤退したという経緯がある。また、ロスバスタチンの80 mg製剤については、開発時に副作用の問題が発生し製品化されなかった。さらにロスバスタチンでは市販された製剤でも副作用が問題となっているうえ、心不全症例への効果をみる大規模臨床試験結果は疑問視されている。そして、ロスバスタチンよりも先に市場にでているスタチン剤のアトルバスタチン,シンバスタチン,プラバスタチンで、すでに総死亡率低下効果が確認されているという現実がある。これらの状況を踏まえて、スタチン剤およびロスバスタチンの有効性、安全性、必要性について正しい議論をする必要がある。

(3) 医師はロスバスタチンの処方を一時中断すべきである。

(4) アストラゼネカ社は無節操なキャンペーンを中止すべきである。*2
  *2 訳者注:ここでの無節操なキャンペーンとは、(1)にも書か
  れているように、アストラゼネカ社がGalaxy(銀河)プログラムと
  銘打った16の臨床試験結果を発表して、「コレステロール値を下げ
  れば冠血管疾患発症が抑えられる」という効果を強調し、スーパー
  ・スタチンとの振れ込みで世界のスタチン剤市場のシェア獲得を目
  指して激しい売り込みを展開していることを指しています。

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