注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

高齢者に不適切な薬剤の使用

2005-03-31

高齢者に不適切な薬剤の使用
 (キーワード: 米国高齢者ナーシング・ホーム、高齢者に不適切な薬剤、ベアーズ・ク ライテリア、関連する入院・死亡)

米国医師会が発行する内科学紀要誌の論文です。
「高齢者ナーシング・ホーム入所者での不適切と考えられる薬剤処方に関連する入院と死亡」 Arch Int Med 165,68-73,2005

 1996年の米国高齢者ナーシング・ホーム入所者3372症例について、高齢者に不適当と考えられる薬剤による入院・死亡について分析し、これらを避けられたものとして、高齢者に対する処方改善の大切さを強調しています。

 ここで高齢者に不適当と考えられる薬剤としているのが、「ベアーズ・クライテリア」による薬剤リストです。米国のベアーズらが、65歳以上の高齢者にとって、ある薬剤処方が望ましくない結果をもたらすという観点から、1990年代に、3段階に分けてリストアップしたもので(文献:Arch Int Med 157,1531,1997)、何回か更新され、2003年更新の最新版は、次のサイトに掲載されています(※1)。

 これらの薬剤を処方された患者では、入院のリスクが30%高く(オッズ比1.28、95%信頼区間1.10-1.50、p=0.002)、死亡リスクも21%高いことが判明しました(オッズ比1.21、95%信頼区間1.00-1.46、p=0.048)。

 これらの患者に用いられた薬の中で、処方するべきでないにもかかわらず、日常的に処方されている薬剤5種類をあげると、抗うつ剤アミトリプチリン(トリプタノールなど)、しばしば入眠用に高齢者に不適切に用いられる抗ヒスタミン剤ジフェンヒドラミン(ベナドリルなど)・ヒドロキシジン(アタラックスなど)、尿失禁に用いられるオキシブチニン(ポラキスなど)、鎮痛剤プロポキシフェン(日本では未発売)でした。

 一方、日本でも「メディカル朝日」誌2005年2月号に、次の記事が掲載されました。

   MA(メディカル朝日)レポート
  「不適切な薬剤処方が1割ほどに 老人保健施設調査」

 東京大学医学系研究科の秋下雅弘助教授たちが、2001年1月-2002年12月に同病院老年病科の関連5施設で行った調査で、同じく「ベアーズ・クライテリア」の薬剤リストをもとに、老人保健施設の入所者627症例を対象として、不適切な薬剤処方の有無と入所後の薬剤数の増減とその影響が調査されています。

 このMAレポートは次のように結ばれています。

   この調査に加え、日本老年医学会会員644人と、全国の老人保健施設の
   代表医師2900人を対象としたアンケートでも、Beersのリストへの認知
   は低く、国内でもこれに類した「不適切な薬剤」のリストが強く求めら
   れているという結果が得られた。同学会では秋下助教授をリーダーとし
   たワーキンググループが、高齢者における薬物療法ガイドライン策定の
   作業を続けており、6月の総会で公開予定だ。
                                   (T)

関連資料・リンク等