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米国でCOX-2阻害剤が用いられた患者はどういう患者だったのか

2005-03-31

米国でCOX-2阻害剤が用いられた患者はどういう患者だったのか
  (キーワード: 消炎鎮痛剤、選択的COX-2阻害剤、非選択的NSAIDs(非ステロイド性抗  炎症剤)、使用対象患者の傾向)

 消炎鎮痛剤(COX-2阻害剤)バイオックス(ロフェコキシブ、日本未発売)は、全米で8万8千人-13万9千人が心臓発作を起こし、そのうち30-40%が死亡するという最大規模の薬害を引き起こしたと推定されています(※1)。

 この有害副作用は、セレブレックス(セレコキシブ、日本未発売)、モービック(メロキシカム)など他のCOX-2阻害剤にも共通した性質であるとみられていますが、これらのCOX-2阻害剤はどのような患者に使われていたのでしょうか。

 シカゴ大学のカロラン・ダイ、スタンフォード大学のランダル・スタッフォードたちは、地域診療所および病院の外来診療データをもとに米国全土におけるCOX-2阻害剤と非ステロイド抗炎症剤の処方状況を分析した論文を、アーカイブ・オブ・インターナルメディスン(内科学紀要)誌(165,171-177,2004)に発表しました。この論文は、シカゴ大学のサイトで読むことができます(※2)。以下はその大筋です。

    COX-2阻害剤は、通常の非ステロイド抗炎症剤よりも高価だが、効果
    の点では両薬剤間に差はない。COX-2阻害剤に有用性があると言える
    のは、通常の非ステロイド抗炎症剤を使うと消化管出血や潰瘍などを
    来たす危険性の多い患者の場合だけである。

    1999年-2002年に外来を受診しCOX-2阻害剤または通常の非ステロイド
    抗炎症剤を処方された患者の総受診数は全米で2億2180万と推定され
    たが、それらを非ステロイド抗炎症剤による消化管出血や潰瘍などの
    危険性から分類すると、危険性が非常に低い31%、危険性が低い42%、
    中等度の危険性25%、危険性が高い2%であった。

    これらの受診のうち、COX-2阻害剤を処方された患者の割合は、1999
    年の35%から2001-2002年の61%に増加した。非ステロイド抗炎症剤の
    有害副作用の危険性が非常に低い患者のうち、COX-2阻害剤を処方さ
    れた患者の割合は、1999年の19%から2002年の35%に増加した。

    大部分の患者は、安価な通常の非ステロイド抗炎症剤でも問題なく治
    療できるにかかわらずCOX-2阻害剤の使用が増えているのは、製薬会
    社の医師・患者への売り込みが激しかったことを反映しており、とり
    わけ多額の広告費が注入された患者・市民向けの医療用医薬品の直接
    広告(DTC)の影響が大きいと思われた。
                            (T)