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批判に直面して企業がデータの共有を申し出る

2005-02-28

批判に直面して企業がデータの共有を申し出る
 (キーワード: 臨床試験登録と結果の公開、企業の自主努力と法制化)

 臨床試験の登録と結果の情報公開についての最近の動きを伝えるScience誌2005年1月14日号記事の大要です。

     [批判に直面して企業がデータの共有を申し出る]

 製薬企業を代表する世界的な5つの業界団体が、加盟する会員企業に対し、臨床試験に関するより多くの情報を公開するよう促している。しかし中には、そうした提案は、強制的な情報公開の法制化を避けるための手段であるとみなす人もいる。

 抗うつ剤や他の薬剤の臨床試験データを隠したことが曝露されて以来、製薬企業に対する風当たりは強い。アメリカ議会は、昨年、罰則を規定した強制的な臨床試験登録の法制化に失敗したが、これらの法律は再提案されると予測されている。

 そのような法律を推進しようとしているひとりであるヘンリー・ワックスマン下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)は、先週、製薬企業がそうしたことを表明しているが、法制化を推し進める意志は変わらないと語った。

 しかし、ワシントンD.C.に本拠をおく業界団体である米国製薬工業協会 (PhRMA)は、「議会は業界の自主的な努力が実を結ぶのを待って欲しい」と、スポークスパースンのジェフ・トレウィットが語っている。

 過去における自主的な登録は、進行中ないし完了した試験のみであった。英国製薬工業協会(ABPI)の100近くの会員のうち、2003年5月に発足した登録に参加したのは7社にとどまった。2003年に行われた米国のがん臨床試験についての調査研究では、政府のウエブサイト(clinicaltrials.gov)に掲載されたのは、企業がスポンサーの試験の半分以下であった。

 英国のABPIは、世界保健機関(WHO)が7月までに世界規模の試験データベースを構築しようと努力していることに望みをかけている。ABPIは、加盟企業に試験とその結果をそこに投稿するよう勧めるだろう。米国製薬工業協会(PhRMA)の新たな計画は、clinicaltrials.govにすべての疾患についての試験を加えることを推奨している。

 同様の努力をしている他の団体としては、欧州製薬工業連合会(EFPIA)、国際製薬団体連合会(IFPMA)、日本製薬工業協会(JPMA、製薬協)がある。これらの製薬団体は、「医薬品の治療的利益を決定するすべての臨床試験」の情報公開を推奨していると、英国製薬工業協会(ABPI)スポークスパースンのリチャード・レイが語っている。

 JAMAの編集長代理であるドラモンド・レニーのような批判的立場にいる人たちは、楽観していない。レニーは、「市場を支配する力と利己主義が、いつも物事を正しく行おうとする倫理を打負かしてしまう」と語っている。
                               (T)

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