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EMAのテータ透明性政策が曲折を経てEU最高裁の支持を獲得

2020-06-28

(キーワード)EMA、情報公開、臨床試験データの公開、EU最高裁

 新薬の情報公開に朗報である。欧州医薬品庁(EMA)は2010年の文書情報開示政策で承認後の医薬品の臨床試験データの公開を進めてきた。 しかし、この動きは製薬会社に抵抗され、製薬会社は法的挑戦を開始し、商業上の機密性が危険にさらされていると主張してきた。 2016年10月、データ公開は企業利益を侵害するとする製薬会社の欧州裁判所への提訴に対しEU下級裁判所が公開差し止めの判決をくだすなど、EMAのデータ透明性政策は法的に不安定な状況下に置かれていた(※1)。 このほど、EU最高裁がEMAの文書情報開示政策を支持する判決をくだした。以下にこれを伝えるBMJオンライン( 2020年1月23日)「Europe's drug regulator wins court backing for data transparency policy」の要旨を紹介する。

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 EU最高裁が最終的に EMA が承認し市販された製品の臨床試験データを情報公開する権利を支持した。2010年にEMAはこの情報公開政策を適用した。これに対し米国系の PCT Therapeutics InternationalとMerck Group であるMSD Animal Health innovationの2社が企業秘密を侵すと提訴していた。ダブリンを拠点とする米国のグループの一部であるPCTは、そのデュシェンヌ型筋ジストロフィー薬であるataluren (Translanna)に関する臨床試験の報告は機密情報として保護されるべきであり、他の製薬会社からの要求に応じて公開されるべきではないと主張した。MSDは、ノミやマダニの治療に使用される獣医用医薬品fluralaner(Braecto)に関する薬物動態学レポートの機密性について主張した。

 EMAは商業的な機密情報の量は限られていると主張し、そのために数ページを編集したと主張していた。EU最高裁は、透明性が原則であり、企業のデータが開示されることにより商業的利益を侵害すると主張する企業は、どの情報が合理的で予測可能な害のリスクを伴うかを特定しなければならないと判示し、そのようなリスクは上記2社のケースで確立されていなかったと裁定した。

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 多くの患者・被験者が参加する臨床研究から得られる医療介入の有効性、安全性に関する情報である臨床試験データは、人類共有の財産であり、商業的利益を守るために製薬企業会が独占するのは生命倫理的にも許されない。また、薬害防止の観点からは、第3者による検証が不可欠であり、そのためには、すべての臨床試験の登録とデータの公開が求められる。今回の決定は、すべての臨床試験データの情報公開とまではいかないまでも、EU最高裁がEMA が承認した新薬については、臨床試験データの情報公開を基本的に認めたものであり朗報である。(G.M)