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Nature誌が日本の条件及び期限付き承認制度を痛烈に批判、総合機構チーフが国際会議で早期承認の各制度を擁護

2019-04-25

(キーワード: 再生医療等製品ステミラック、条件・期限付き早期承認制度、Nature誌が日本の承認を批判、患者アクセス促進と有効性安全性確保の相克)

 脊髄損傷治療に再生医療等製品「ステミラック注」(ヒト自己骨髄由来間葉系幹細胞)が、2018年12月28日、日本が世界で初めて条件・期限付きで承認した。これに対し、科学雑誌Natureが日本の承認を批判する論説(※1)を掲載している。Nature誌の日本の再生医療等製品承認の批判は、今回がはじめてでなく、2015年に再生医療等製品の条件・期限付き早期承認制度の第1号である「ハートシート」(心不全治療、ヒト自己骨格筋由来細胞シート)が承認された際も批判を展開している。なお、「ハートシート」は条件・期限付き承認の期限までに有効性・安全性を検証する見込みがたたず、2018年12月厚生労働省が期限付きの期間を延長している。

 Nature誌の論説とこれに対する日本の規制当局の対応を伝えるPink Sheet誌の報道記事の要旨を紹介する。
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Nature誌論説 2019年1月31日号 <日本は幹細胞治療の早まった販売を止めるべきだ> (※1)

 脊髄損傷治療は最も困難な医学的探求のひとつで、幹細胞・再生医療の分野で象徴となっている達成目標である。先週カリフォルニアのアステリアス・バイオセラピューティックス社が12か月の第義衫彎音邯海任隆待される結果を発表した。胚芽細胞が、ニューロンをサポートし成長させる中枢神経系の細胞であるオリゴデンドロサイトに換わり、脊髄損傷患者の背部に注射され損傷細胞部位に固着して,22例の患者中21例に動作の改善をもたらしたとしている。

 しかしこの成果は初歩的な段階である。改善が注射した細胞によってもたらされたのか、あるいは患者のからだがもつ再生能力のような他のものが働いているのかは明確でない。企業はさらに調べるために第二相ランダム化比較対照試験に進める承認を求めた。これこそ注意深く段階を踏み、ゆっくりと堅固に前に進める正しい進め方である。

 一方日本では、困った事態が進行している。先月札幌医科大学の研究者たちが間葉系幹細胞の注射で一足飛びに販売承認を得たのである。これは早計であり少なくとも販売承認して患者に用いるのを延期せねばならない。
注射された細胞が幹細胞として機能しニューロンに変換されるかは激しい論争のもとにある。日本での販売承認での有効性の根拠はわずか13人の患者でのデータである。比較群は置かれておらず、そして試験結果はまだ論文として公表されていない。

 日本はもっと改善された透明性のあるシステムを導入すべきだ。可能な場合は比較群を置いた臨床試験で有効性を証明し、データは論文として公表し国際的な医学研究コミュニティがデータを評価できるようにすべきである。日本は米国カリフォルニアでとられた進め方から多くを学ぶことができる。それまでは幹細胞治療の患者への販売提供は早計であり公正なものでない(premature and unfair)。


Pink Sheet誌報道 2019年3月7日号 <日本の医薬品総合機構の長(チーフ)が脊髄治療承認の正当性を主張>

 日本の規制当局は脊髄損傷治療製品を世界ではじめて承認するという最近の決定を受けて国際的な批判にさらされている。米国の専門家は、二重遮蔽の臨床試験が行われないままに承認され、保険収載されることは「倫理上正当化されない」と厳しく批判している。

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長(当時)は販売承認の正当性を主張し、脊髄損傷治療療法での日本の決定を支持している。その理由として患者への配慮を第一にあげている。近藤氏は Bio Asia 国際会議での演説で、今回の決定を強く擁護し、重度に傷害した状態の患者に安全な新たな選択肢を提供することは第一になすべきことと強調した。

 日本の脊髄損傷の患者は年間5万人と推定されている。13人の患者で二重遮蔽のデザインなしに承認したことについて、近藤氏は「日本においては事実上そのような治療の承認基準になっていない。われわれは患者が早くアクセスできる最も効率的な手段を探求している」旨の指摘をした。

 PMDAのさまざまなアプローチやイニシャチブ(先に立って物事をすること)については、近藤氏はとりわけ2015年に導入した先駆け審査指定制度を、患者が新薬に早くアクセスできるうえで「大きな貢献」と語った。また、規制を合理化し開発のコストを減じるために、2018年4月PMDAに専任部門としてレギュラトリーサイエンスセンターを設置することを含め、健全なレギュラトリーサイエンス(規制科学)を遂行するPMDAのイニシャティブを強調した。
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 Nature誌は2015年に再生医療等製品の「条件・期限付き早期承認制度」の第1号製品としてヒト自己骨格筋由来細胞シート「ハートシート」が心不全治療の適応で、わずか7例の臨床試験で承認された際も痛烈に批判している。

 再生医療等製品の「条件・期限付き早期承認制度」(2014年)、医薬品・医療機器・再生医療等製品の「先駆け審査指定制度」(2015年)、医薬品の「条件付き早期承認制度」(2017年)などが創設され、「患者の医薬品等への早期アクセス」と「薬事規制改革等を通じたコスト削減と効率性向上」が大きな流れとなっている。しかし、医薬品等の承認において、有効性・安全性の確保と迅速な供給とは相反する関係にある。迅速な供給を建前に強引な規制緩和を図ることは患者の安全を脅かし、薬害を生むリスクがあり、監視を強める必要がある。

 なお、当会議は、2018年5月29日付「条件付き早期承認制度に関する意見書」(※2)、2019年3月12日付「薬機法改正に関する意見書」(※3)などにおいて、繰り返し医薬品の条件付き早期承認制度に関し反対の意見を表明している。(T)